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#16 寄り添うとは

 前回に引き続き、一相談員として感じていることをまとめました。前回は地域のことでしたが、今回は個人の支援についてのポイントです。テーマは「寄り添う」です。


【死にたい】

 相談員をしていると、時折「死にたい」という相談を受けることがあります。
 この言葉には様々な意味が含まれていると思います。私は元々、心に病がある方の支援を長年していたため、「心がつぶれそうで死にたい」といった相談はよく受けていましたが、地域包括支援センター受ける相談の中での「死にたい」という言葉は、「長く生きていても仕方がない」という意味で使われることが多いように感じます。

【どのように返答する?】

 このような相談にどう対応するべきでしょうか? 関係者に話を聞くと、多くの方が「そんな悲しいことを言わないでください」といった返答をしているようです。
 しかし、「死にたい」という相談に対して「そんな悲しいことを言わないでください」と返答することは、相談者に「そのような発言をしてはいけない」「悲しんではいけない」といったプレッシャーを感じさせ、さらなる意欲低下を招く原因となります。

【難しい対応】

 心の病がある方の支援の経験から、先輩方がよくそのような相談を受けており、対応に長けていました。先輩からよくアドバイスを受けましたが、相手の気持ちに「寄り添い」、例えば「死にたいと思うほど辛いのですね」と返答する方が望ましいと教わりました。
 高齢分野での関係者は、前の職場のような経験がある方が少ないようで、どうしても否定的なことをポジティブに変換しようとする気持ちが強いように感じられます。だからこそ、「そんな悲しいことを言わないでください」と返してしまう方が多いように感じられます。

【専門性】

 もちろん、相談者の背景や理由は様々ですので、返答の仕方が一律であるわけではありません。この一律でない対応が支援を難しくしています。
 相手の気持ちを理解し、適切な返答をすること、さらに一度そのような感情に至った利用者に生きる意欲を育むための支援を行うことは、かなりの専門性を必要とします。すぐに解決することは稀であり、支援は長期にわたることが多く、相当な労力を要します。
 なおかつ、私は残念ながら相談いただく方々ほど年を重ねていないため、「長く生きていても仕方がない」という感情をきちんと理解できていないです。「長く生きていることのメリット」を私の中ではきちんと説明できませんし、同じようなことを考えている相談員も多いと思います。それも支援を難しくしている原因のように感じられます。

【寄り添う】

 ただ、「寄り添う」ことが何より重要です。寄り添うことは、時にはただそこにいるだけかもしれませんし、うまく話ができないこともあるかもしれません。しかし、心をつなぐためには非常に重要な支援だと考えます。
 相談者の中には、様々な場所で相談を繰り返した結果、たらい回しにされ「絶望感」を抱えている方もいます。そういった方には「専門性を持った寄り添う力」が必要です。相談に振り回され過ぎないように意識しつつ、自分の気持ちを整えながら必要なタイミングで「寄り添う」必要があります。
 制度や社会資源に関する知識は、勉強や経験によって身につけることができますが、「寄り添う力」を得るのは容易ではありません。相談員の「人柄」や「今までの人生」に「経験」を積み重ねないと、習得することが難しいと思います。私自身、まだ十分にできているわけではありません。

【伴走型支援】

 最近話題となっている「伴走型支援」は制度の狭間などで「絶望感」「死にたい」と感じている方へ支援することが重要ですが、「伴走」のように方向性を導くのではなく、少なくとも最初は本人の心のままに「寄り添う」ができるような仕組みになればうれしいです。

 次回は、「信頼関係」についてまとめたいと思います。

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