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塩分と体重の関係:太るのか、それとも水分が増えるだけなのか?

こんにちは!
腎臓内科医のDr.Bunです。
今回は「塩」についての話です。

しょっぱいもの皆さん好きですよね。
私も好きです。

ダイエット中でもついついしょっぱいものを食べたくなってしまうとき、飲み会でビールを飲むとついつい揚げ物を頼んでしまうとき、ありますよね。

寝る前に体重計に乗ってみたら、1kgも2kgも増えていてびっくりするときありませんか?
翌日に顔がむくんで体が重い気がする、なんてことありませんか?

そんなときに、ちょっと油断したせいで急に太ってしまったと慌てたりしませんか。

ダイエットを意識している方や健康管理を気にしている方にとって、「塩分と体重の関係」は気になるテーマですよね。

ちょっとダイエットについて勉強すると、塩分をとると水分が増えるから体重が増えたりむくんだりする、というのは半ば常識だと思います。
私自身、塩分を摂ると体重が増えるのは水分のせいだと漠然と思っていました。実際のところどうなのでしょうか?

この記事では、「塩分を摂ると太るのか?それとも水分が増えるだけなのか?」について考えていこうと思います。

塩と水はセット

まず大前提として、塩を摂取することは、水を取ることと一緒だという話をします。
塩と水の話は、腎臓内科医がなぜか好んでする話の1つです。
私も手っ取り早く自分の専門性についてアピールしたいときにこの話を良くします。
意外とピンとこない方多いですよね。

ではなぜ、塩=水であると言えるのかという話をしますね。

まず塩はNaCl(塩化ナトリウム)ですね。水はH2Oです。
なぜ食塩が水に溶けるかというとNaClがNa+とCl-に分かれて、水分子と結合するからですね。
これは中学の理科の授業でやったと思います。
懐かしいですね。

まぁこの現象が人間の体の中でもおきるわけですね。

水とはつまり血液です。
塩を摂取すると塩は血液=水分側に移動しようとしますので、血液中のNa濃度が上昇します。
そうすると、浸透圧が上昇します。
体内では、浸透圧を一定に保とうとする働きが生じますので、水は細胞内から細胞外へと移動します。

するとどうなるでしょう。
細胞内の水分は少なくなりますね。
脱水です。

よく、塩気のあるものを食べると喉が渇くのはこのためです。
体が水分を欲するようになるんですね。

ここで一時的に体内の水分量が増加するので、塩分をとると体重が増えます。
飲み会や外食したあとに体重を図ってみてください。
多分増えています。
これは実際に太っているわけではなく、ほとんど水分での体重増加です。

腎臓でのナトリウム調整

腎臓はナトリウムと水の排出を調節する役割を担っています。ナトリウム摂取が増えると、腎臓はナトリウムを排出しようとしますが、同時に一定量の水も一緒に排出されます。これは、ナトリウムと水がセットで排泄されるためです。

では腎臓のはたらきが落ちるとどうなるでしょう。
ナトリウムを排泄するはたらきも落ちますよね。
だから、腎臓病ではナトリウムの排泄能が落ちてむくみやすくなるのです。

でも、これおかしな話じゃないですか?
塩分をとると体重が増えるのは水分の影響である。
であれば、時間がたつともとに戻るので塩分摂取は肥満の原因にはならないのでは?
とも考えられますよね。

塩分の取りすぎは肥満のリスクになるか?



塩分の摂りすぎが、高血圧や心血管疾患、腎臓病のリスクになることはよく知られていますね。

では塩分の取りすぎが肥満のリスクになるか?
これについて考えていきたいと思います。

この研究によると、小児ではナトリウム摂取量はエネルギー摂取量とは無関係に、過肥満と正の相関を示したが、青年では有意な相関には至らなかったと報告されています。

別のメタアナリシスでは高塩分食摂取とBMIが相関することが述べられています。

なぜ、高塩分食が肥満の原因になるのか?
これについては様々な説があります。

1つは、塩分を摂取すると食欲増進ホルモンであるレプチンの分泌が亢進するということです。
また、高塩分食は脂肪細胞において脂肪合成を促進することが言われています。

どうやって塩分摂取量をはかる?

ここまでの話で、高塩分食が肥満の原因になるということはわかったかと思います。

ただ、実際塩分がどれくらい肥満に影響を与えているのか、推測するのは容易ではありません。
高血圧ガイドラインでは塩分摂取量の目標を6g/日未満と設定していますが、ここで1つの目安になるのは尿中ナトリウム濃度による、推定塩分摂取量計算式です。

これは腎臓から排出されるNa濃度とクレアチニン濃度から1日の塩分摂取量を推定する計算式ですね。
こういった方法で我々は、塩分摂取量を推定して実際に患者さんにアドバイスすることができます。
ただ、この方法も病院での検査が必要なので、普段の生活に生かすにはちょっと手間ですね。

料理の塩分濃度を測りたいのであれば、塩分濃度計を使うという方法もあります。

ただ、この方法もちょっと神経質すぎかなという気もしますね。
減塩の意識づけにはいいかもしれませんけどね。

加工食品は要注意


つらつらと書いてみましたが、実際には日常生活で塩分摂取量を計算するのは難しいです。
なぜなら、普段の生活で塩分をそのまま摂取している人はいないですよね。
実際には食物に含まれる塩分を目安にしていますが、厳密に塩分量を計算している人はそう多くないと思います。
また、自炊している人だと調味料の塩分は意識すると思いますが、実際には調味料だけが塩分ではなく、加工食品の塩分も意識する必要があります。

超加工食品(UPF:Ultra-Processed Food)という言葉をご存じでしょうか。

この論文によると超加工食品が肥満のリスクとなることが述べられています。

超加工食品(UPFs)は、食品工業で高度に加工された食品群を指します。通常、以下の特徴を持ちます。

  • 人工的な添加物(保存料、着色料、香料など)が多い

  • 天然の食品とは異なる組成(栄養素が強化または除去されている)

  • 工業的な加工(押出成形、乳化、精製など) によって製造される

  • 高エネルギー密度(糖分、脂肪、塩分が多い)

  • 長期保存が可能(生鮮食品よりも保存性が高い)

代表的な超加工食品としては、インスタントラーメン、加工肉(ソーセージ、ハム、ベーコン)、スナック菓子(ポテトチップス、クラッカー)、冷凍食品などが上げられます。

これらの食品は一般的にかなり高塩分です。
伝統的に塩が保存食として使われてきたこととも関係していますが、防腐・殺菌作用の他にも、風味を引き立てる、抗酸化作用がある、他の調味料に比べて安価であるなどの理由で、加工食品には塩がかなり使われているのです。

また、この論文によると超加工食品の摂取は慢性腎臓病(CKD)とも有意に関連したと報告されています。
やはり、加工食品の取りすぎは腎臓にとっても良くないのです。

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