睡眠が腎臓の健康を守る鍵!質の良い眠りで慢性腎臓病(CKD)を予防しよう
こんにちは!
Dr.Bunです。
こちらの記事もご覧ください。
皆さんは「朝型」ですか、「夜型」ですか?
私は「朝型」で、毎日5時半に起きています。
・・・というのは正確ではなくて、毎日飼い猫に叩き起こされているのが本当のところです。
ネコはよく薄明薄暮性といって、日暮れと明け方に最も活発になると言われています。
うちのネコは朝の5時過ぎから大運動会を始めてごはんを要求します。
時計が読めるわけでもないのに、なぜだか毎日きっちり5時半に枕元に起こしに来るんですよね。
凄いですよね。
というわけで、今日は「睡眠」について書いていこうと思います。
突然ですが、あなたは日頃の睡眠にどれほど意識を向けていますか?
よく、ショートスリーパー、ロングスリーパーなんて言葉を耳にすると思います。
すごく少ない睡眠時間でも大丈夫な人をショートスリーパーと言い、本当にそれで問題なく仕事できているならうらやましい限りです。
実はショートスリーパー遺伝子というのがありまして、これはカリフォルニア大学の研究で、短眠遺伝子として研究されています。
ただ、この短眠遺伝子を実際に持っているのは人口の1%未満と言われていたりします。
つまり、実際に身の回りで「自分、ショートスリーパーなんだよね」などと言っているような人がいたとしたら、それはほとんどの場合”自称”ショートスリーパーであって、真の意味で短眠に耐えられる遺伝子を持っているわけではないということです。
有名な逸話で、ナポレオンは1日3時間しか寝なかったという話がありますが、これも「実は日中寝ていた」とか「睡眠時無呼吸があって寝たくても寝れなかったんだ」とかいう説があったりします。
というわけなので、
我々一般人の大部分は短時間睡眠は健康に悪い、という当たり前の事実をしっかりと認識することが大事です。
睡眠は単なる疲労回復のためだけではなく、体全体、特に腎臓の健康にとって欠かせない役割を果たしています。
ただ、我々が生きる現代社会では、仕事や育児、ストレスなどで睡眠の質が低下している人が少なくありません。
実はこの「睡眠の質」が慢性腎臓病(CKD)と大きく関係しています。
今日はそれについて語りたいと思います。
目次
睡眠と腎臓の関係
慢性腎臓病(CKD)は世界中で増加している重大な健康問題です。
腎機能の見方については過去の記事を是非読んでください。
実際には、世界の成人の約10%がCKDを持っていることがわかっています。このCKDのリスク因子として注目されているのが「睡眠」です。
睡眠時間が適切でない場合、腎臓の健康に悪影響を及ぼすことがわかっています。
たくさんの研究結果から、6時間未満の睡眠はCKDのリスクを約17%高めることが示されています。
短い睡眠時間は、体内のホルモンのバランスを崩し、血圧や血糖値を不安定にすることで、腎臓に負担をかけます。
逆に、9時間以上の長い睡眠もCKDのリスクを14%増加させるデータがあります。長い睡眠は、体内の代謝機能を低下させ、血流の停滞を引き起こす可能性があります。
短時間睡眠があまり良くなさそうなのは肌間隔でわかると思いますが、実は長時間睡眠も良くないというのは驚きですね。
もちろん睡眠時間だけではなく、睡眠の質も重要です。
「睡眠の質」の評価方法はいろいろあるのですが、代表的なものを紹介します。
UKバイオバンクの研究で、睡眠パターンとCKDのリスクにおける生活習慣の影響を調査したものがあります。
この研究では、294,215人のUK Biobank参加者を対象に5つの睡眠パターン(睡眠時間、クロノタイプ、不眠症、いびき、日中の居眠り)を評価し、CKDへのリスクを調査した結果、睡眠パターンが不良の場合にCKDのリスクが増加することがわかりました。
この研究で使われている5つの睡眠パターンを簡単にまとめると表のとおりになります。
$$
\begin{array}{|l|l|l|} \hline
\text{睡眠パターン} & \text{定義} & \text{スコア基準} \\ \hline
\text{睡眠時間} & \text{7時間未満,7-8時間,8時間以上} & \text{} \\ \hline
\text{クロノタイプ} & \text{夜型、やや夜型、やや朝方、朝方} & \text{朝方} \\ \hline
\text{不眠症} & \text{不眠の問題が週3回以上} & \text{不眠症がない} \\ \hline
\text{いびき} & \text{いびきの頻度が高い} & \text{いびきがない} \\ \hline
\text{日中の居眠り} & \text{頻繁な日中の眠気や居眠り} & \text{居眠りがない} \\ \hline
\end{array}
$$
ここでは睡眠時間以外にも、朝型か夜型か、不眠の有無、いびき、日中の眠気などの項目で睡眠の質を評価していますね。
睡眠時間だけでなく睡眠の質も腎臓病の予防のためには重要なようです。
ところってクロノタイプって何でしょう。
聞いたことある方はいますか?
これは俗に言う「朝型」「夜型」というのを科学的に分類しようというのがクロノタイプです。概日リズムなんて言葉をどこかで聞いたことがある方もいると思います。
ミュンヘンクロノタイプ質問票の日本語版というものがありまして、Web上で質問に答えるだけで簡単に自分のクロノタイプ診断ができるサイトもありますので、一度自分がどのタイプなのか調べてみると良いかもしれません。
なぜ睡眠障害が腎臓に悪いのか
睡眠不足や質の低い睡眠は、体内で炎症性サイトカインを過剰に分泌させます。この炎症性サイトカインは腎臓の組織を直接的に損傷し、慢性腎不全へと進行するリスクを高めると言われています。
炎症性サイトカインについては、種類がたくさんありまだ多くのことが未解明ですが、生活習慣と腎臓病の関係を考える上での重要なキーワードですので是非押さえておきましょう。
また、自立神経の乱れと夜間の血圧変動も大きな問題です。
実は血圧は1日の中で一定ではないって知っていましたか?
これを血圧の日内変動といいます。
血圧は交換神経と副交感神経からなる自律神経で調整されています。
本来夜間の睡眠中には副交感神経が優位に働きリラックスした状態になるので、昼間に比べて10~20%程度血圧が下がると言われています。
ところが睡眠不足や睡眠の質の低下があると、副交感神経による血圧の調節がうまくいかなくなり、夜間の血圧が適切に低下しない「ノンディッパー(non-dipper)型高血圧」と呼ばれる状態となります。
この「ノンディッパー(non-dipper)型高血圧」は腎臓への負担を大きくすると言われています。
さらに悪いと夜間の血圧の方が逆に高くなる夜間高血圧がみられるようになり、これを「ライザー(Risers)型高血圧」といい、こうなってくると脳卒中や心臓病のリスクも高まる、かなり高リスクの状態です。
https://www.healthcare.omron.co.jp/zeroevents/bloodpressurelab_basic/contents1/146.html
一番怖いのは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れている可能性です。
いろいろなテレビ番組でもとりあげられているので、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
SASが腎臓病の原因になる原因としては、睡眠障害がおこり、血圧・血糖値の上昇、慢性炎症が起こることも理由ですが、それだけではなく、無呼吸➡体内の低酸素状態が起こることにより、腎臓への血流低下、酸素の供給不足が起こることも原因の1つと言われています。
また、低酸素により、体内では活性酸素(フリーラジカル)が発生し、これも腎臓での慢性炎症の原因になります。
睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックもしてみましょう。
🔲よくいびきをかく
🔲寝ているときに呼吸が止まっていると指摘されたことがある
🔲肥満・高血圧がある
🔲日中の眠気・居眠りがある
🔲朝の頭痛・だるさがある
など
1つでも当てはまる場合は要注意です。
もし睡眠時無呼吸症候群かも・・・と思ったら是非医療機関で精密検査を受けましょう。
睡眠不足解消のための生活習慣の改善
運動は、ストレス軽減や自律神経の調整を促し、睡眠の質を大幅に向上させる効果があります。特に就寝3時間前に行う軽い運動(例えば散歩やヨガ)は、体をリラックスさせる効果があり、寝つきを良くします。
運動習慣を定着させるためには、週3~4回、20~30分程度を目安に取り組むのが理想的です。
とは言え、それがなかなか難しいんですけどね。
また毎日の入浴も大事です。
めんどくさいとついついシャワーですませたくなっちゃいますが、ちゃんと浴槽につかることが大事です。
あとは寝る前ついつい、ベッドに入ってからだらだらとスマホの画面を眺めてはいませんか?私もついつい、寝る前にだらだらとスマホを見てしまうのですが、これはもちろん夜の安眠を妨げます(頭の中ではわかっているんですけどね・・・)。
スマートフォンやPCの使用を就寝1~2時間前には控えることが快適な睡眠のためには効果的です。
次に起床時。
起床時はすぐにカーテンを開け、自然光を浴びましょう。
体内時計をリセットするのに有効です。
特に太陽光に含まれるブルーライトは、メラトニン(眠気を誘発するホルモン)の分泌を抑制し、昼間の活動を活性化させます。これにより、夜にはメラトニンが適切に分泌され、スムーズに入眠できます。雨天や冬季など自然光が弱い場合は、光療法用のランプを使用するのも良い方法です。
また、朝食をとりながら日の光を浴びることで、食事のリズムと体内時計の調整が同時に進むというメリットがあります。
睡眠の質を高めるお勧めグッズ
カーテンを選ぶ際に遮光性を意識していますか?
ついつい、安さ重視で選んでしまいがちですが、実はこれめちゃくちゃ大事です。
遮光性の低いカーテンは光が漏れたりして、睡眠の質を落とします。
一般的には睡眠に影響を与えない明るさは100ルクス以下とされていますので、これを目安に遮光等級が高いカーテンを選ぶようにしましょう。
ただし、遮光カーテンを使用する際には1つ絶対に守らなければならない注意点があります。
それはあまりに遮光性が高すぎると朝日まで遮断してしまい、日中も締め切ってしまうと逆に概日リズムが崩れて睡眠障害の原因になってしまうのです。
なので、朝起きたら必ずカーテンを開けて朝日を浴びるようにしましょう。
また、大きな音での目覚ましのアラームは目覚めが悪くなるため、睡眠の質の低下に影響します。
自然光に近い波長の光目覚まし時計や、自動でカーテンを開けてくれるスイッチボットを導入すると、目覚めの質も改善しますよ。
また、夜間の音刺激も睡眠の質を低下させる大きな要因になります。
イヤープラグ(耳栓)の着用は外部からの音刺激を低減するため、睡眠の質や集中力を高める効果があります。
また、光刺激を遮断するためのアイマスクも効果的です。
これは私も愛用しています。
ただ、寝返りをうつと耳栓なんかは結構とれてしまったりするので、自分にあったやつを選びましょう。
ノイズキャンセリング機能がついてるやつだと、雑音だけシャットダウンして会話は聞こえるようなものもあるので良いです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)への対応
SASは専門医による診断と治療が必要です。いびきをよく書く、日中の眠気や居眠りなどの症状があるようなら一度専門医の受診をお勧めします。
SASと診断された場合の治療として持続的陽圧呼吸療法(CPAP)を行うことがあります。
これはマスクのような機械を夜間装着することにより、夜間の酸素供給を助け無呼吸を予防します。
まとめ
睡眠障害は腎臓病のリスクになる!
睡眠時間だけではなく睡眠の質も重要である
閉塞性無呼吸症候群(SAS)が隠れていないか確認を!
睡眠の質を高めるためには、生活習慣と住環境どちらも大事!
質の高い睡眠は、腎臓の健康を守る最も基本的な要素です。生活習慣を見直し、適切な睡眠を確保することで、慢性腎臓病の予防と進行抑制に大きく貢献できます。
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