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透明な氷となって_モラハラを遠くへ

これ以上はムリだから
私は冷たい透明な氷となった


無意識か
意識的か
なんどもなんども放たれる
鋭いトゲのような言葉

心に深く突き刺ささり
私はとうとう
その一撃で氷となった

これ以上ムリ

その鋭利な言葉のトゲが
心に突き刺さる直前に
溶けて粉々になって朽ちるよう
氷となったこの手で
透明に変えてしまえたら
どんなにかいいだろう

冷たい氷の身体となった私には
暖かな血はもう通わない

体温が失われてしまったのだ

ふたたび飛ばされたトゲトゲしくも
鋭い矢

こちらに届く直前に
先端を溶かし
グニャリと丸めてしまえたらいいのに

私の心に刺さらないよう
二度と刺さらないように

冷たさに満ちた
氷色の瞳を手に入れ
青白い光線のような視線を浴びせ
言葉の矢が私に届かぬよう
粉々に崩してみせよう

私は氷となった

さみしさに満ちた氷となった

おだやかな空気に満ちて
花が咲き乱れ柔らかな日差しの春の日も

痛いほどの日差しがジリジリと肌を焼き尽くし
地上のもの全てアツイアツイと騒がしい夏の日も

色彩を帯びた乾燥した小さな落ち葉が
あちこちで噂話を始め
風がいたずらに
舞い散らせていく秋の日も

静かな透き通った濃くて深い紺色の空を見上げ
散りばめられた星たちを
ワーと声を響かせ眺めている
仲の良い親子の会話だけが
唯一の光となる冬の日も

私の内側には
太陽も月も草木も花も
落ち葉も夜も星も
存在していて欲しいのに

放たれた矢によって
先の尖った言葉によって
小さなかすり傷を
何度も何度も
少しづつ負わされていき
次第に暖かさも色合いも血流も奪われ
冷たい冷たい氷となった

唯一、優しさのかたまりとも言える
我が子によって差し伸べられた
小さなやわらかな手を握りしめ

春のもとへ
秋を呼びに
冬は踊り
夏を目指して

なるべくあの鬼のような
恐ろしい目をした「あの人」に
見つからないよう

そーっとそーっと

音を立てないよう
空気のように
存在を空間と同化させ
当たり障りのない状態を保つことにのみ
意識を集中させていく

けれどそれはとてつもなく
虚しくてさみしく
冷たく泣き崩れたくなり

泣き崩れてしまえばいいが
そうすることで
あたたかな涙によって
氷ごと私が溶けてしまうから
泣き崩れることもできない

ただただ息をこらし
分厚くて固く
透明な壁を何層にも何層にも
見つからないよう
そーっとそーっと
置いていくことしかできず

壁は
さらに分厚く強固なものとなり
もっと遠くへ
もっともっと遠くに
「あの人」を追いやることができるよう
分厚くして距離をとり
透明な壁で
どんどんと遠くへ遙か遠くへ
気づかれないように
退けていく

気づかれてはいけません
決して気づかれてはいけないのです

気づかれたら
その瞬間に
透明な分厚い壁は
プシュっと消え去り

また鋭い矢が何本も
突如飛ばされ

私の喉元深く
突き刺さってしまうのですから

気づかれてはいけません

気づかれないように
そーっとそーっと
透明な壁を
もっと分厚く
遠くへ遠くへと
「あの人」を押しやることができるように








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