周明の物語

まひろが越前で出会った青年、周明。
宋人かと思いきや、対馬生まれで親に捨てられ、宋人の中で生きてきた。
どこか影のある人物に思えたのはその過酷な生い立ちが影響していたのだろう。
自分は何者なのか、というセリフもあった。

松原客館で過ごす日々がどんなものであったのかは分からないが、見知らぬ土地で先行き不透明なままとどめ置かれるのはさぞ辛いものだと思われ、宋人たちの登場シーンが荒れていたところからも彼らの不安や苛立ちを伝えている。

そんなとき、まひろに出会う。
宋人に興味津々で臆せず言葉も覚えようとする。
変わった娘だと思いながらも惹かれないわけでもない気持ちが芽生える。
しかし、時の権力者左大臣と深い仲にあったらしいことを知り、これをなんとか利用しない手はないか、という「邪心」を持ってしまった。

朱仁聡に娘から左大臣を説得させる、成功した暁には要職につかせてほしいと談判する。
何者でもなかった自分が何者かになれるチャンスだったのだろう。

そしてさっそく娘を籠絡しようと手を打つも、あっさり見破られてしまう。
並の姫なら恐らくコロッといくところ、まひろには全く響かないどころか、一蹴されてしまう。
逆上して陶器の欠片を刃物代わりに喉元に押し当てても悲鳴すら上げない。
完敗だった。

もう、まひろに会うことはないだろう。
朱仁聡はまひろにここを出ていったと伝えてくれた。そして、失敗を咎めることもなく、やさしく慰めてくれた。(談判した時、失敗したら消されそうな雰囲気があったのだが)
政治の駆け引きなく、そのまままひろとの関係が深まっていっていたら…と思いたくなる。

越前編、あっという間だった。
もっとふたりを見ていたかったけど、まひろは、このあと宣孝と結婚して子どもをもうけて、いろいろあって、源氏物語を書かなければならないから仕方ないか。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?