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ヴァナ・ディールの恋愛未遂


ゆづおさん、私はネトゲでMajiでKoiする5秒前でした。事と次第を以下に述べたいとおもいます


ファイナルファンタジーⅪイレブンは、シリーズ初のオンラインゲームです。ヴァナ・ディールと名付けられた世界にログインして遊びます。

そこには、たくさんの人がいて、レベルを上げたり、アイテムを集めたり、仲間になったり、けんかをしたりしています。

そんな世界で、うっかり恋にフォーリンして、あらためて自分にがっかりしたおはなしです。10年以上むかしむかしの笑い話。


平行世界とリアルの混沌



ログインするキャラクターを選べます。
彼は長身細身のダークエルフでした。

のちに目が覚めた私だけ、途方に暮れます。

当時わたしは1才3才の娘二人のママ、イケメンエルフの中身は若い女性でした。なるほど、紳士で素敵なわけです。そういう自分の姿は、鼻の黒い小さなドワーフの男の子でした。


なにものでもない自由



夜泣きをする幼い子どもたちを寝かせて、夫が帰宅するまでの1時間前後、ひとりの旅を楽しんでいました。

数人で協力して数時間拘束される設計のゲームです。短時間ソロでできることは限られています。

召喚士になりたかったけれど、ソロでは無理なので、とりあえず赤魔導士を選択しました。剣も魔法も使えて、美しい景色を楽しめました。

グラフィックの演出がすばらしくて、雨も降るし、日も落ちます。感傷的な音楽がフィールドごとに設定されています。

音楽を聴きながら、流れ星をみるために星降る丘を歩く私は、優しいお母さんでも、できる妻でもなく、なにものでもありませんでした。


リンクシェル


知らない人にリンクシェルというチャットグループに誘われました。複数で協力して展開させるゲームなので、プレイヤーの交流は盛んでした。入れ替わりで10人ほど常駐しているグループでした。

事情を話すと、レベルを上げたり新しい町に行ったりするのをみんなが手伝ってくれました。幼い娘たちが起きて戦闘中に離席しても、おつ、またね、と放ってくれました。特に度重なる離席に気を悪くせず熱心に協力してくれたのが、エルフの量産型イケメン赤魔導士の彼でした。



恋愛未遂


コレハ、イケナイ。

二人で大草原を黄色いダチョウに乗って駆けました。晴れた海辺を散歩しました。荒野に座り込んで胸にせまる夕焼けを見ていました。平行世界のグラフィックです。わかっています。パソコンの液晶です。

ああ、でも、風を感じる、私は草原を駆けている、男の子の姿で、美しいエルフの青年と!

くらり、ふらり

チャット仲間の協力で召喚士になれました。通称カーくんという、薄青く光るウサギかキツネのような獣がいつも一緒に居てくれます。エルフに深入りする前に、私は別のワールドへ移籍しました。


エルフからメッセージが届きました。どういう仕様か忘れてしまったのですが、ワールドを変えてもメッセージのやり取りができました。

どうしたのと心配してくれました。エルフは遊びに不自由している子育て中のママに親切にしていただけです。私は正直に話しました。

恋をするつもりはないから、もう会わない。

エルフは中身の実名と住所を教えてくれました。年賀状を送るよというので、私も教えました。とても上手な手書きイラストの年賀状が届きました。

接点を失ったおばさんとお姉さんは疎遠になり、やがて私はゲームをやめました。彼女は次のナンバリングの世界に旅立ったようです。年賀状のやりとりは一度きりにしました。

リアルでおなかいっぱいです


予感の段階でワールド移転したので、かすり傷です。まったく、恋とは不可抗力。危なかった。むしろ、彼が女性でよかったです。

なにものでもない自由は快感で、私は別のオンラインゲームで遊んでいます。1試合5分くらい、通話無し、4対4の殴り合い。スプラトゥーンというゲームです。

まあ、でも、大草原を駆けたのは良い思い出です。楽しかったです。

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