おうちでミュージカルを楽しむ夜
オンライン配信でエンターテインメントを楽しむことに、すっかり慣れてしまった昨今。これまでミュージシャンの配信ライブを楽しむことが多かった私ですが、昨年映画が公開された『えんとつ町のプペル』がミュージカルで上演されると知り、オンラインの配信チケットを購入しました。
えんとつ町のプペルといえば、にしのあきひろさんの絵本が原作。にしのさんの絵本は、とにかく絵が繊細で、カラーの仕上がりが美しい。そして物語の方はといえば、子供向けというよりは、大人向けの絵本という気がします。
4000メートルの崖にかこまれ、そとの世界を知 らない町がありました。 町はえんとつだらけ。 そこかしこから煙があがり、あたまのうえはモックモク。 朝から晩までモックモク。
えんとつの町に住 むひとは、くろい煙にとじこめられて、あおい空をしりません。 かがやく星をしりません。
えんとつ町は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺。そして、「夢を見る」「夢を語る」「行動する」といった、大人になる過程で皆が折り合いをつけて捨てたモノをまだ持ち続けているという意味で、主人公を《ゴミ人間》にしてみました。【にしのあきひろ】
この配信ミュージカル、実は開演前に『配信画面の写真撮影やスクリーンショットは歓迎します。動画はご遠慮ください』との注意喚起がなされました。写真はokということで、絵本の表紙にもなっている2人のシーンを少しだけ皆さまにご紹介。
絵本の表紙にも描かれているこのシーンは、えんとつ掃除屋のルビッチが、ゴミ人間のプペルと共に煙突の上に登り、夢を語るシーンです。物語のなかでもかなり重要で、個人的にもすごく好きなシーンだったりします。
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私はこの配信ミュージカルを観ようと決めてから、楽しみにしていたことが2つありました。
ひとつめは、舞台セットを含め、実写化されたプペルの世界観を楽しみたいということです。
ミュージカルといえば、舞台セットが途中でガラッと入れ替わったり、回転したりするイメージですよね。しかしこのミュージカルは、舞台セットはほとんど変わりません。というのもこの会場はミュージカル用に造られた舞台ではないので、舞台袖が狭いんだそう。そのため、作り込まれたえんとつ町は、ずっと目の前にある。
そんな環境のなかで、シーンによって違った場所にいるかのように観せてしまうのですから、演出も、演じる役者さんたちも凄いなあ…!と思ってしまいました。
そしてふたつめは、ミュージカルでは物語のどこを切り取って、どう表現していくのかという部分を楽しみたいということでした。
小説が映像化されるときだって、全てのシーンを映像化するわけではないように、絵本が映画に、そしてそれがミュージカルになったときに、原作のどこをどんな風に切り取って繋げていくのか。私はそこに、すごく興味を惹かれたのです。
もちろんストーリーの主軸と流れは決まっていますので、ここは外れないなというシーンは想像が出来たりします。こうきたかあ…!と思わず言葉が漏れてしまったり、素敵な表現に感動して思わず涙が出てしまったり。なかには、これは会場で体感したかったなあという演出なんかもありました。
やっぱり、どれだけ頭でシナリオを想像することはできても、それがリアルに表現されたときの驚きというのは、何者にも変え難いですね。
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えんとつ町のプペルには、「口は災いのもと」を絵に描いたような『スコップ』というキャラクターが登場します。物語のなかでは結構キーパーソンだったりもするのですが、昨年の映画でその声優を務めたのは、オリエンタルラジオの藤森慎吾さんでした。そしてなんと、今回のミュージカルでも、藤森さんがそのままスコップ役で出演…!
そんなスコップは、このミュージカルにおいてもかなりのキーパーソンとなっていました。
配信とはいえ、このミュージカルを観て「テーマパークに来たような気分」を味わえたのは、絶対に彼のおかげ。それは決して、作り込まれた世界観の話だけではなくて。どちらかというと、乗り物に乗ったとき、キャストさんの盛り上げトークのおかげでワクワクしてきちゃうような、あの感覚に近いかもしれません。
ミュージシャンのライブでもそうですが、やっぱり観ている人が「一緒に参加できる」ことって大切だなあと感じていて。もちろん、ただ静かに観ているだけでも楽しいのですが、手拍子をしたりして、会場全体で作り出す雰囲気というのもまた、ライブの醍醐味のような気がしています。
会場のそういった一体感は、やっぱりオンラインでは感じることは難しいのですが、そこを上手にカバーし、盛り上げ、誘導してくれていたのが藤森さん演じる「スコップ」というキャラクターだったなあと感じました。
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そしてこのミュージカル。ありがたいことに、配信アーカイブが3ヶ月も視聴出来るらしいのです…!単純に、期間が長くて驚いてしまいました。配信チケットも 2022年2月28日まで購入できるようなので、気になった方は上記HPでご確認ください。
ちなみに、えんとつ町のプペルの絵本は、こちらのページで無料公開されていますよ!