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基本的な事を当たり前に出来る力

■スポーツで養われるもの

上下関係に厳しく礼儀を重んじる。それは、「運動部」と聞くと共通して抱くイメージのように思います。でもその中には、『その場の先輩と後輩の間でしか成り立たない謎のルール』に焦点を当てて、上下関係が厳しいと漠然と捉えてしまっていることも多いような気がしています。

「先輩の言うことは絶対」というような、ある程度の上下関係は、チームというひとつの組織の中において、それに従い耐える事から学べる何かがあるのかもしれませんが、社会に出てそれが役立つ場面と言えば、「理不尽に耐える」ということ以外、それ程ないように思えます。

一方で、『先生にうるさく言われるからちゃんとしなきゃ!』っていうような、技術面以外で指導される親からのしつけの感覚と近い部分に関しては、自己成長の観点からも学ぶべき事が多く存在しているように感じています。

私は、高校時代に選手として3年間、大学時代はマネージャーとして4年間、剣道という競技に携わってきました。この剣道という競技においては、実は「人間形成」というものが競技の理念として掲げられています。

剣道は剣の理法の修錬による 人間形成の道である

分かりやすく言えば、「剣の道理にかなった法則を学び、精神、技芸を磨き鍛えながら人間形成を目指す。」というような意味ですが、この精神を鍛えるという部分に、「基本的な事を当たり前に出来る人間になる事」が含まれているように私は思うのです。

■基本的なことを当たり前に

・靴をきちんと揃えなさい。
・道場や部室は整理整頓をしなさい。
・人に挨拶する時は立ち止まって挨拶をする。
・人を見送る時は車が見えなくなるまで。
・運転してもらっている時に助手席で眠るのは失礼だ。

こんな教えを筆頭に、私は様々なことを教えてもらいました。「自分の身の周りの事すら丁寧に出来ないで、競技の技術が上達する訳がない。」当時、そんな言葉の真意を正しく汲み取れていたという自信は正直ありませんが、今思い返してみれば、それは全て『普段の生活が競技にも現れる』という事を、私たちに教えたかったのではないかと思うのです。

目の前にゴミが落ちている事にも気が付かない人が、試合中に周りが見えるはずがありません。ゴミに気付いていても拾わない人というのは、いつも自分勝手な試合運びをしてしまっているかもしれません。普段の練習で出来ていない事が試合で急に出来る訳がありませんから、まあいいやと普段から手を抜いていれば、それは結果に現れるように思います。

そして私は、これは決してスポーツに限って当てはまる話ではないと思うのです。

■社会生活でも応用されていること

社会人になって営業の仕事をしていた時には、『玄関を見ればその家の事がなんとなく分かる』と上司に教わりました。靴を見れば家族構成がなんとなく把握出来るというのも理由のひとつですが、家の顔と呼ばれる玄関の状態は、住んでいる人の性格や生活状況なんかを表していると言われていたのです。丁寧な仕事をする人はデスクが綺麗というのにも似ているかもしれません。

そして、自己啓発本なんかを読んでいると、決まって出てくるのはトイレ掃除をしようとか、靴を磨こうなどといった記述です。大金持ちに共通するのはトイレが綺麗な事だとか、ビジネスの世界では、『トイレは店の顔』とも言われることもあるように、そんなところ本業には関係ないだろって思っているようなところが、意外と大切であったりするものなのです。

結局、『普段の自分の意識が、生活や仕事にも現れている』ということだと思うんですよね。そんなことをしていて競技技術が上達する訳ではない、お金持ちになれる訳ではないという意見ももちろんあると思います。実践を残すには、『本業』の部分を努力せずして結果を手に出来る訳では決してありません。

それでも、周りに気を配ること、感謝の気持ちを忘れないこと、人に評価されないようなことでも丁寧にやること。私は、こういったことが当たり前に出来るようになれば、物事に取り組む意識そのものが変わっていくように思うのです。

■これらの意識は何をもたらすか

競技の実力は高いけれど、道場の外では自分勝手な人間だったら。業績が良くても、お金にだらしない経営者だったら。美味しい料理を提供するお店のトイレが汚かったら。一緒に仕事がしてみたいと会社に訪問してみると、玄関口に靴がぐちゃぐちゃに置かれていたら。

そんな場面を見たら、貴方は何を思うでしょうか。

私の会社でも最近、綺麗に靴を揃えることが出来ないアルバイトの子たちに向けて、「靴を揃えましょう」という掲示が張り出されました。結局、個々人が基本的なことを当たり前に出来るようになることは、会社、個人、チームの『信用』を築く事になり、個々の意識が高まることは、組織の質を高めることに繋がるのではないかと私は思います。

人間形成というのは決してゴールがなく、習慣によって成されていくもの。何かを継続したり、習慣化するというのはそれに伴う困難も多いものです。それを継続するだけの精神力、基本的な事を当たり前にしようとする意識を持つこと。私はそんな大切な事を、剣道という競技を通して教わり、学ばせてもらいました。

竹刀を握っていない今でも尚、こうして学ぶことも多い訳ですから、剣道に生涯スポーツとしての魅力があるのもなんだか分かるような気がしています。

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yuca. | 染葉ゆか(Yuca Aiba)
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