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ダイバーシティ推進に感じるうさん臭さ

戦略コンサルタントのアップルです。

最近ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)という言葉をよく耳にするようになりました。このD&I。こと上場企業などの大企業においては、「当然大事なことだし、推進すべきだよね」という「暗黙の前提」になりつつあるように思うのですが、(性格がひねくれているためか)個人的にはかねてより「うさん臭さ」を感じています。

なぜうさん臭さを感じるのか?
3つのポイントをお話したいと思います。

①そもそもダイバーシティの価値が不明瞭

ダイバーシティを進めることが何が良いのか?という「価値」が明確に認識されていない会社が多いように感じます。価値、すなわち目的が不明瞭なまま金科玉条のように信奉するのは、リスクがあるのではないでしょうか?

・ダイバーシティを推進することによって採用の門戸を広げる→これまでとれなかったような優秀な人財を採用できるようにする
・多様性の中からの創発、ひいてはイノベーションを促進する

大きくはこの2つを目的に行われるものだと思いますが、自社はどちらが主眼なのかを明確にしながら推進すべきだと思います。目的が曖昧なダイバーシティ施策は、社員たちから白けた目で見られることにもつながるでしょう。

②ダイバーシティの切り口がデモグラフィックに偏りすぎ

ダイバーシティという文脈でまず出てくるのは「女性社員の割合や管理職割合を増やす」、「外国人を積極的に採用・登用しその割合を増やす」といったデモグラフィックのポートフォリオを変えることです。話としてわかりやすいのでデモグラフィックの切り口に偏るのはわかるのですが、実際の組織の生産性や創発性は非デモグラフィックのダイバーシティ、すなわち思考特性、スキル、経験の多様性によって規定されるように思います。そろそろデモグラフィック一辺倒の考え方から脱却が求められるのではないでしょうか。最近では、デモグラフィック・ダイバーシティに対するアンチテーゼとして「コグニティブダイバーシティ(認知多様性)」という概念も出てきているようです。

③ダイバーシティの副作用を理解しているか?

ダイバーシティが進むことはマネジメントが難しくなることを含意します。マネジメントの対象が金太郎飴のように画一的であればマネジメントは楽です。同じやり方を全員に適用できるからです。一方でダイバーシティが進むと、一人ひとりの性質や個性がバラバラになるので、マネジメントは複雑になり、大変になります。マネジメントが複雑化することは、ダイバーシティの副作用の一つと言ってよいでしょう。

では、世の経営者たちが「マネジメントが大変になる」という覚悟をもってダイバーシティの推進をしているかといえば、あまりそうでもないように感じます。ダイバーシティ推進はいいことばかりではなく、いろんなところに歪みをもたらすことを理解した上で推進すべきでしょう。

余談ですが、最近とある会社の元社長の方とお話した際、「マネジメントは多様性がない方が楽だからね。世の中ダイバーシティと言われているけど、むしろ多様性をなくす方向に向かっていくのが自然だよね」ということをぽろっとおっしゃっていて、なるほどなと思いました。この発言は、その社長が退任して経営陣が刷新されて以降、事業モデルや人財の多様性がなくなっていく姿を半ば揶揄する中での発言でした。

多様性礼賛の時代においても、ふと気を緩めると経営は多様性をなくす方向に向かいがちです。多様性を増やしていくことは、この重力に抗い、マネジメントを高度化していくこととセットです。経営者は常にこのことを心得ておくべきと思います。

今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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