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浅井リョウ『正欲』を読んで

一般的な性欲の解消活動であるセックスではなく、変幻自在な「水」を欲の対象に捉える、佳道、八重子、大也たち。

それぞれは、多様性といいながら、水への欲はそこに弾かれるものである社会に落胆し、公言することもなく、生きる意味を日々失っていく。

しかし、SNSや同窓会などをきっかけに、同じ水への欲を共有し合い、生きる活力を見出しはじめる。

そんなある日、清水ヶ丘公園で、水と戯れている際に、隣で催されていた子ども向けのプールイベントに参加している子どもたちが参入する。

後日、写真に水に濡れた子ども写っていることが、警察の目に入り、水愛者たちは、逮捕されてしまう。

社会には理解されない、水への欲をまざまざと見せつけられた作品だった。

作者・浅井リョウさんは、考えるに、「多様性」ということばに内在している、多数派に認められなければ排除されるという欠陥を作品を通じて伝えているように感じる。

蛇足ではあるが、大也が所属するダンスグループ『スペード』というワードは、浅井リョウさんが以前出筆されている本のタイトルにも使用されている。何か象徴しているのかもしれないと、気になる次第である。

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