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慶州ノート4 2023年3月
6:00AM 朝の散歩
早起きなんだよ、どこに行こうが。連れはまだ就寝中だったので、そっと起きて外に出る。昨夜は月が見えなくて残念だったが、月精橋は朝日を浴びていた。逆光状態もまたいいじゃないのと、川っぷちを歩く。ほんとにこのマウルは静かで人の気配がしなくていいな。
え?なに〜〜〜?この立て看板は!
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“赤毛のアン”の “恋人たちの小径” みたいな?(怒)
誰もいない川っぷちで朝の散歩をする私に喧嘩売ってんのか(怒)
人間は独立した一個の人格であり愛し合ってても一つにはならんな(怒)
素晴らしい歴史遺産があるのだから、こういうものに頼らなくてもと思うがどうなんだ?柳に風の如く、軽く受け流せないものがあった(笑)
7:50 大豆スープ屋で朝食
韓屋に戻り、ちゃっちゃと身の回りのものを片付けてチェックアウトする。荷物はリュック一つだからそのまま背負って、8:00オープンの大豆スープ屋に朝ごはんを食べに行く。また行くんかい?行きます。
オープン前に店に到着しそうで、連れが「あまり早く行くと悪くない?」と言うのと同時にもうすでに店は開いていて、客がどしどし入って行くのが見えた。土曜の朝でした。休日は朝から混むのかもしれないよ。
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また「C」を頼んでしまいました。生卵がとろとろの大豆スープ(決して豆乳をイメージしてはいけません。美味しいコングクスの店のあの大豆汁を暖かくしたものとお考えください。)に、まったりした生卵のコクが加わり、クリーミーな大豆ポタージュです。言っておくけど豆臭さは一切ない。慶州に来たら朝食はこれしかないと思う。昼も夜も食べた私が言うのも何だが。
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そして連れは朝から淡々と攻めて行く。
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ここの麺は珍しくラーメンみたいに黄色いねと言いながら、バッチバッチ切ってらっしゃる。
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大豆スープを3種頼んで、食べ比べているアジョシたちに“いいね!”をしたくなる。アジョシたちはその後、スンドゥブ定食も召し上がっていた。“いいね!”が2回だ。
こっちのテーブルは昨日、韓屋のカフェで仏國寺まではタクシーがいいよと教えてくれたご夫婦だった。昨日はありがとう、無事に行けましたと挨拶すると、同じ大豆スープだね!と同志の会話。そうだよ、慶州の朝は大豆スープだよ(しつこいです)。
会計時に昨日のイモニムに “またいらっしゃい” と言われて送られる。また来るさ。必ずまた来るのさ。
9:00AM レンタサイクルで大陵苑
大豆スープ屋に来る途中、レンタサイクル屋を検索していた。いくら人が歩いていないと言っても、ながらスマホはいけません。
慶州の古墳群地域は広いので、トゥクトゥクとかスクーターとか自転車のレンタルショップが結構ある。映画「慶州」のパク・ヘイルも自転車を借りていた。映画の中のパク・ハイルは店に入って「貸してください」と言ってお金を出すだけで簡単に借りていたが、現実はそんなこたないだろ、何かデポジットとか身分証明とか要るだろと思い、大豆スープ屋の斜向かいにある店に行ってみた。
奥にいる兄ちゃんの佇まいがすでにやる気が感じられなくて良い(笑)。
「午前中、2台の自転車を借りたいけどおいくらですか?」と聞くと「2時間で10,000₩。」と返ってきた。うへ、1台が2時間で5,000₩だ、やすっ。でも午前中は3時間くらあるから、延長したいなと言うと「いいよ、もう、その値段で。」だそうです(笑)。やる気がないのは素晴らしいね(笑)。人間、カツカツして暮らしたらいけません。
電話番号をここに書いてと言われたので、e-SIMに割り当てられた電話番号を書くと「あ、韓国の電話番号なんだね!」とあっさり貸してくれた。
表に置いてある自転車のサドルの高さを調節し「またね〜」だって。結構いい人だったよ。まあ、商いだからね。そういうもんだ。
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23基の古墳がある大陵苑の塀沿いに、たらたら自転車を走らす。韓屋スタイルのカフェとかカフェとかカフェとかが乱立していて、店からは朝から
K-POPが聴こえる。
Like an echo in the forest
森にこだまが響くように
하루가 돌아오겠지
その日は戻ってくる
아무 일도 없단 듯이
何もなかったように
Yeah life goes on
そして人生は続いて行く
まじか(笑)。滅亡した新羅の古墳の横で「その日は戻ってくる♪ 人生は続いていく♪ 」とBTSが歌っている。演出なのか?シュールだ、すごいシュールだ、わはは。
前を走る友人に「コーヒー、買っていこうよぅうううう」と声を掛けて、目に入ったカフェでコーヒーをテイクアウトして大陵苑に入る。
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新羅人の墓の前でベンチに座りコーヒーを飲んだ。日差しも気持ちいいので長いこと座っていたが、ああ、この大陵苑は、映画「慶州」で主人公の2人が夜中に古墳に登って警備員に怒られるところなんじゃないかと気付く。多分。ロケ地に疎いです。
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この日の大陵苑では、誰も古墳に登っていなかったので、多分、普通は登っちゃだめだ。でも映画では登っている。撮影許可を取ってのことに違いないが、偉い人の墓の上に登ってもいい許可を下した慶州市?大陵苑?どっちにしても話がわかる人で良かった。
古墳の柔らかい稜線がいくつも連なる慶州の古墳空間は、実在の場所でありながらどこか別の世界に連れて行ってくれる。すごいところを見つけて撮影したもんだ。ちなみに、映画の中のシン・ミナの部屋は近くのゲストハウスらしいので、“窓を開ければ古墳が見えるよ” をやりたい人は是非ゲストハウスへ。
大陵苑を出て、少し町のほうをだらだら目的もなく自転車で漕いでいく。妙な気配を感じたので、自転車で路地に路地に入って行くとこれまた映画「慶州」でシン・ミナがやってる茶屋があった。建物は映画に出たものなんだろうけど、映画ではたくさんの人々がそこで魂を込めて演じたり、撮影場所を演出するので、あのシーンのあの世界は映画の中だけのもであると思う。再現できるものでもないので、そうっとしておこうと思い、そのまま後にした。
午前中、自転車に乗っていたら自転車は古いものだったようで、お尻が痛くなった。安いからな、文句は言わないよ。天気のいい日の慶州はレンタサイクルがおすすめです。ありがとう、ヘイやん。
11:30PM
自転車を返却し、慶州名物“皇南パン”(小さいあん饅頭みたいな)を買って、城東市場まで歩く。用事がある。
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通りは縦横無尽に走っているが、鮮魚店ばかりの通り、雑貨ばかりの通り、おかず通りというように通りごとに専門店が並ぶので、わかりやすいと言えばわかりやすいけど、どの店で買っていいのか困ってしまう。
さて慶州と言えば 城東市場の“ごぼうキンパ” らしい。市場の中のどの辺りにあるのかわからなかったけど、すぐ見つかった。派手だよ(笑)
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大量の牛蒡だ〜と言って覗いていたら、イモニムが「日本人?これのことゴボウっていうんでしょ?ゴ、ボ、ウ。」と言って、すかさずこの牛蒡煮を口に入れてくれた。甘いよぅうう。大学芋ならぬ大学牛蒡だ。口の周りがベタベタ(泣)
「今日はオモニがいなくてごめんなさいね。」とも。いや、別にいいんですけど(苦笑)、断りを入れるくらいにはお母様はキャラ立ちしてるのかなと想像する。1人前をもらう。6,000₩。
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“ごぼうキンパ”と言ってもごぼうが巻かれているわけではなくてキンパの上に乗っかっている。甘い箸休めといった感じなのか。
そして城東市場のもうひとつの名物 “慶州ビュッフェ食堂”に行く。名前がワクワクするね、“慶州ビュッフェ食堂”。
わ〜い!きた〜〜〜!
ほれほれ、看板に“慶州ビュッフェ食堂”って書いてある。おかずがたくさん並んだお店がいくつもあり、気に入ったおかずのある店でお皿をもらい好きなだけ取って、共用のテーブルで食べる仕組みだ。ごはんとチゲかなんかのスープがつく。
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とは言え、悲しいかな、急ぎ旅です!なので、イモニムに「おかずだけ持って帰れますか?電車の中で食べたいんです。」と言ったら「はいはい。好きなのを入れてね。」と弁当ケースをくれた。
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母ちゃんの手伝いなんて少しもしなさそうな息子(っぽい)が立ったまんまごはんをもぐもぐ食べながら「こっち、美味いよ。」とかアドバイスしてくれる。ちょっと店を手伝った気分の息子(笑)。個人商店を切り盛りする韓国のおばちゃんたちの偉大さが目の当たりにできる“慶州ビュッフェ食堂”。本当はここで食べたかった。後ろ髪引かれる思いで市場を後にする。
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バスで新慶州駅まで行く。予約していたKTXの時間よりちょっと早く着いてしまったので、窓口で1本早い電車に変更してもらった。
釜山までの30分の電車の中で城東市場で買い揃えたお昼を広げる。
キンパは本当に感激しちゃったな。ごま油の香りがするごはんそのものが美味しかった。具をここまでシンプルにしたその潔さが良い。今まで食べたキンパの中でベストワンです。
キンパを潔くシンプルにした分、牛蒡は過剰に甘くしたかったのかな。キンパと一緒に食べると意外と悪くなかったぞ。バランスが大事だ。
おかず弁当はどれもこれも丁寧に作られていて、お母さんが作るおかずってこういうものかなと思う。デパ地下で買う大量に作られた惣菜とは全く違う味わいだ。下のほうに隠れていたおばちゃんの息子がススメてくれたお魚の赤い煮付け。お母さんの作るおかずの中でも好物なのかもしれん。美味かったよ!
一泊二日の釜山からの慶州の旅。釜山に来ることがあったらついでにうっかり行けるところだと思う。行けなかったところもたくさんあるのだが、それはそれで良しとします。また次回のお楽しみにするよ。