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幸福になりたければ幸福になろうとするな【カント_道徳形而上学の基礎づけ】
1. 幸福を求める前に考えるべきこと
「幸福になりたい」と願う人は多いでしょう。しかし、そもそも「幸福とは何か?」と深く考えたことはあるでしょうか。
人によって幸福の定義は異なります。ある人にとっては豊かな経済力が幸福かもしれませんし、別の人にとっては安定した人間関係や自己実現が幸福かもしれません。
では、私たちはただ幸福を求めればよいのでしょうか? 哲学者イマヌエル・カントは、それだけでは十分ではないと考えました。
2. カントが示す「幸福」の本質とは?
カントの哲学において、「幸福」とは単なる快楽や満足ではなく、「徳(道徳的な善)」と「幸福」が一致すること、すなわち最高善 であるとされています。
彼の思想の核には、「すべきこと(義務)」と「したいこと(目的)」を一致させるべきだという考え方があります。私たちは、自分の欲求だけでなく、道徳的に正しいことを行うことによって、真の幸福へと近づくのです。
3. 義務とは何か? そしてなぜ重要なのか?
カントにとって、義務とは「理性が私たちに命じる道徳的法則」に従うことです。
「道徳的に正しい行為とは、結果ではなく動機によって判断される」
※この道徳的に正しい行為とはどういうこと?というのは後に説明します。※
カントは、人間の行為を「格率(Maxime)」という観点から考えます。格率とは、「自分が取る行動の原則」のことであり、これが普遍的な道徳法則になり得るかどうかが重要です。
例えば、「自分が得をするためなら嘘をついてもよい」という格率を持って行動した場合、それが万人に適用されると社会は崩壊してしまいます。したがって、これは道徳的に許されません。カントは、「他人を手段としてではなく、目的として扱うべきである」という「目的の国(Reich der Zwecke)」の概念を提唱し、他者の幸福を考えることが道徳的に正しい行為であると述べています。
4. 義務と幸福の一致──私たちは何を目指すべきか?
カントは、人間の義務を大きく二つに分類しました。
自分の能力を高めること(自己完成の義務)
他者の幸福を促進すること(利他的な義務)
🔹 自分の能力を高めることとは?
カントは、単に欲望のままに生きるのではなく、知性や道徳性を高めることが人間の義務であると考えました。これは、単に学習することにとどまらず、自分の人格を高め、よりよい人間になることを意味します。
🔹 他者の幸福を促進することとは?
カントにとって、幸福は「他人と共に実現されるもの」です。自分だけの幸福を追求するのではなく、他者の幸福にも貢献することが、真に道徳的な生き方につながると考えました。
5. 「幸福に値する」生き方とは?
ここで重要なのが、
「幸福になろうとするのではなく、幸福に値する生き方をすることが大切だ」
というカントの考え方です。
これこそ、表題にあったように、幸福になりたければ、幸福になろうとするなという根拠です。
現代社会では、多くの人が自分の幸福だけを追求し、環境問題や次世代のことを考えずに資源を消費しています。しかし、万人が利己的に幸福を求めた結果、本当に私たちは幸福になれるのでしょうか?
カントは、「幸福に値する人間」こそが真の幸福を得ることができると考えました。つまり、単なる欲望の充足ではなく、道徳的に正しい生き方をすることで、人間は本当の幸福へと近づくのです。
つまり、
自分の「したいこと」(目的)と「すべきこと」(義務)を一致させる生き方こそ人間にとっての最高善だと考えていたのです。
6. 道徳的行為の判断基準──「良心の声」に耳を傾ける
カントは、「道徳的であるかどうかは、結果ではなく動機が大切である」と述べています。では、私たちはどのようにして道徳的な行動を判断すればよいのでしょうか?
カントはその判断基準として、「良心の声」を重視しました。
「良心の声に従って行動することが、道徳的な行為の基準である」
つまり、何か行動を起こすときに、「この行為が道徳的に正しいか?」と自分の内なる声に問いかけ、それに従うことが求められるのです。
良心の声とは、私たちが行動を決定する際に内面的に働く道徳的直観のことです。カントにとって、良心は単なる感情や社会的習慣ではなく、理性がもたらす道徳的法則の表れ です。
つまり、良心の声に従うことは、理性に基づき普遍的な道徳法則を守ることと同義であり、私たちが義務を果たしているかどうかを測る基準となるのです。
7. まとめ──「幸福に値する自分」を目指す
カントの哲学から得られる教訓は、「幸福をただ求めるのではなく、自分が幸福に値する生き方をしているかどうかを問うこと」の重要性です。
幸福は、ただ手に入れるものではなく、徳と一致することで真の意味を持つ。
道徳的な義務を果たし、自分の能力を高め、他者の幸福を促進することが重要。
道徳的な判断基準は「良心の声」に耳を傾けること。
この視点を持つことで、私たちはより充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。
あなたが今考えている「幸福」は、果たして「幸福に値するもの」でしょうか? ぜひ、カントの哲学をヒントに、自らの生き方を見つめ直してみてください。
また、これをみて自分の幸福とは何かよくわからなくなった方。
是非一度1on1しましょう。
あなたにとって最良な時間になるよう全力で臨みます。
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