歩き出す君へ
即答だった。
「ねえ、一人で学校行ってみる?」
「うん」
特別支援級に入った長男はひとまずGWまで付き添いが必須と言われ、入学してからまだ一週間ほどだが毎日せっせと送迎している。
正直、一年は覚悟していた。卒園間際ですら気分がのらないとバスに乗るのをギャン泣きで抵抗する日があった子だ。卒園間際ということはまだひと月ぐらいしか過ぎていないということ。なのにこの変わり身はなんなのか。
朝だってそうだ。
雨で床が濡れている日はさすがに多少抵抗したが、それ以外は「靴を履き替えなさい」と言えばさっさと下駄箱から持ってきた靴に履き替えて、こちらを振り向きもせず教室に向かう。まじで一瞥もしない。
環境だろうか。とりあえず四兄弟全員をそれぞれの場所に預けて身軽になった身で帰宅のバスの窓からぼーっと外を見れば、見事に咲いた桜が風に吹かれて散っていく。今年はいい時期に桜が咲いてくれたと思う。
寂しい。でもおもしろい。
公文に通わせているが、最初のころは10枚の課題を終わらせるのに3時間かかったことがあったのに、今朝など「公文やろう?」などと声をかけてきた。
えらい、すごいよりも、おもしろい。
本人の中で何が起こっているのかわからない。
たぶんこれから、もっとわからなくなるんだろう。
手をつながなくても飛び出さなくなった。
手を離す時間が長くなった。
一緒の時間が減っていく。
なのに、聞いて少ししたとき、長男はこういった。
「帰りはママと一緒?」
「なんでやねん」