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#ネタバレ 映画「滑走路」
「滑走路」
2020年作品
人生には「ちゃぶ台返し」も必要かも
2020/12/1 17:39 by さくらんぼ(修正あり)
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
私のコンディションもあるでしょうが、最近、眠気を感じることが一番少なかった作品だと言っても良いぐらいです。
なにかしら不思議な秩序、緊迫感をはらんだドラマでした。
しかし、同時に、若者の悩みの中に年金生活者が119分間ひたるのは苦しいものです。
例は適当か分かりませんが、フランク中佐の出てこない映画「 セント・オブ・ウーマン/夢の香り」を観ているようで、フランク中佐に代わって、ちゃぶ台をひっくり返したくなるような気持になりました(気持ちだけです。そんな力はありません)。
しかし、あいかわらずヒロイン・水川あさみさんは綺麗で、彼女の幼い頃を演じた木下 渓さんも魅力がありました。
★★★★
追記 ( 人生には「ちゃぶ台返し」も必要かも )
2020/12/1 17:55 by さくらんぼ
> 例は適当か分かりませんが、フランク中佐の出てこない映画「 セント・オブ・ウーマン/夢の香り」を観ているようで、フランク中佐に代わって、ちゃぶ台をひっくり返したくなるような気持になりました(気持ちだけです。そんな力はありません)。
しかし、思い出してみると、クライマックスには水川あさみさんも、夫に気づかれずに「ちゃぶ台返し」をしましたね。夫には「(あなたの子供は生みたくないから)今日、子供をおろしてきた」と冷ややかに言い放ち、即座に離婚して、夫に内緒で出産するのです。
しかし通常、あの子供は夫の戸籍に入るような気もするので、夫の戸籍に入れないためには、(可能か否か)事前に役所と相談する必要があるかもしれませんね。
追記Ⅱ ( 「たたずまいが役そのもの」 )
2020/12/1 21:51 by さくらんぼ
大庭監督が木下渓さんを「たたずまいが役そのもの」と評したそうですが、偉そうなことを言わせていただければ、その気持ちわかるような気がします。
彼女が最初に登場した時、(たぶん)無表情でただ立っているシーンでしたが、それがすでに演技として成立していたのです。
吸い込まれるような感じでした。
追記Ⅲ ( 「踊る大捜査線」 )
2020/12/2 10:24 by さくらんぼ
TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)のヒロインのように、大学を出てすぐケースワーカーにでもなれば、苦しいでしょうが住民の事が比較的分かると思います。
しかし、霞が関のキャリア官僚でなくとも、市役所のキャリア組であれば、現場に出ることはなかなか無いので、(彼らには彼らの苦しみがあるはずですが)皮膚感覚で住民を理解することは難しいのです。
10年間も仕事をすれば、両者の「仕事上の見解」に差が出てきてもおかしくありません。
この映画「滑走路」でも、厚生労働省の官僚・鷹野が、仕事をより実感するために実地調査を行っていました。現実にあるのかは知りませんが、キャリア組にとっては必要な研修の一つだと思います。
追記Ⅳ ( 苦が希望に転じた十字架 )
2020/12/2 16:52 by さくらんぼ
( 映画「 セント・オブ・ウーマン/夢の香り」のネタバレにも触れています。 )
映画「 セント・オブ・ウーマン/夢の香り」では、ピンチにフランク中佐が助けに来てくれました。(「火炎放射器で焼き尽くす」とか、「爆弾を落とす」とか言っていましたが)軍人ですからピンチにならないと来ないのでしょう。
しかし、この映画「滑走路」にそんな救世主は出てきません。
首を絞めて何回も気絶させるような、殺人未遂と言いたくなるような悪質なイジメが出てきても、イジメられる者は、(「さらに状況が悪化するから」と)親にも先生にも言わず、現状維持を選択するのです。
さらに、このイジメの中には、友人同士で殴らせるとか、恋人が書いた絵を切り裂かせるとか、(「踏み絵」のような)唾棄すべき行為もありました。
やりきれませんね。
そんな、こんなの、青春時代の出来事は、生涯にわたってのトラウマになることもあります。
被害者はもちろんの事、加害者であっても、大人になると罪の意識が芽生えるからです。
十字架ですね。
しかし、十字架はトラウマであるかもしれませんが、希望になることもあるのです。
キリスト教の十字架は希望の印でもあるはずです。
この映画「滑走路」は(良し悪しはともかく)トラウマにじっと耐え、希望に転じた(そうせざるを得なかった)者たちのお話だったのかもしれません。
ちなみに、ヒロインである切り絵作家・翠(水川あさみさん)は、なぜ切り絵作家かというと、学生時代に恋人から絵を切り裂かれたトラウマからでしょう。心を癒すために、無意識に自分の傷に触れている(絵を切り裂いている)のかもしれません。
ところで、映画のチラシの中央に飛行機が載っています。
劇中も、イジメられっ子が恋人の翠(木下 渓さん)と一緒に飛行機を眺め、「将来はパイロットになりたい」と言っていました。
あの飛行機は十字架の記号でしょうか。
そして、映画のラストには、大きな川と大きな橋がクロスする地点で抱擁する二人がいました。
きっと、あの川と橋も十字架なのでしょう。
追記Ⅴ ( 人生には「ちゃぶ台返し」も必要かも )
2020/12/2 20:18 by さくらんぼ
そして、「苦が希望に転じた十字架」の話はどこへつながって行くのかと言うと、「コロナ過」なのだと思います。
首を絞めて気絶させるイジメは新型肺炎であり、親や先生、友人や恋人との断絶は、3密回避やソーシャルディスタンスですね。
切り刻んだ絵は分断の記号でしょう。
新型コロナというイジメには、フランク中佐のような救世主はいないようですが、人類はこの苦に必ずや打ち勝ち、(すでに兆しが見えている)新しい世界を構築していくのだと思います。
追記Ⅵ ( 「離婚後300日問題」 )
2020/12/4 9:50 by さくらんぼ
>しかし、思い出してみると、クライマックスには水川あさみさんも、夫に気づかれずに「ちゃぶ台返し」をしましたね。夫には「(あなたの子供は生みたくないから)今日、子供をおろしてきた」と冷ややかに言い放ち、即座に離婚して、夫に内緒で出産するのです。
>しかし通常、あの子供は夫の戸籍に入るような気もするので、夫の戸籍に入れないためには、(可能か否か)事前に役所と相談する必要があるかもしれませんね。(追記より)
もう少し詳しくお話します。これは「離婚後300日問題」かもしれません。
「 離婚後300日問題(りこんごさんびゃくにちもんだい)とは、日本の民法(明治29年法律第89号)772条の規定およびこれに関する戸籍上の扱いのため、離婚届後300日以内に生まれた子が遺伝的関係とは関係なく前夫の子と推定されること(嫡出推定)、また推定されて前夫の子となることを避けるために戸籍上の手続きがなされず、無戸籍者の子供が生じている問題をいう。300日問題、離婚300日問題とも呼ばれる。 」
( Wikipedia「離婚後300日問題」より抜粋 )
この問題についてはいろいろ議論がありますが、たぶん現状では「離婚後300日以内に生まれた子は、婚姻中の夫の子として、夫の戸籍に入る」のだと思います。
離婚前に、すでに夫婦関係が破綻していたとしても(新しい恋人の子だとしても)、黙っていれば夫の戸籍に入ってしまうのだと思います。
しかし、この映画「滑走路」のヒロインは、逆に「真実は夫の子」なのに、夫の戸籍に入れたくない、夫には内緒にしたい、と画策したわけです。いわば法律違反の疑いがあるのです。親子関係を秘密にするのは道義上の問題の可能性もあるでしょうし。
追記Ⅶ 2022.4.14 ( 「離婚後300日問題」② )
この問題、改正があったとか、改正する予定だとか、最近そんな記事を新聞で読んだような気もします。法律は毎年なにかが改正されていますので、ご注意ください。
( 私は専門家ではありませんから、法律の最新情報も知りませんし、法律解釈が違っているかもしれません。このような問題を抱えておられる方は、役所にご相談ください。)
追記Ⅷ 2022.4.14 ( お借りした画像は )
「離婚」というキーワードでご縁がありました。無加工です。ありがとうございました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)