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#ネタバレ 映画「武士の家計簿」

「武士の家計簿」
2010年作品
役不足はいつか正される
2011/1/2 21:21 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

直行は帳簿を審査し、米俵事件の不正を見抜きましたが、それを告発しようとしても上役に止められてしまいました。

そればかりか、うるさい奴だ、と思った上役は、直行を左遷しようとします。正義感と能力があっても、権限の無い下級の役人では戦えないのです。

でも、不正は別ルートから明るみに出てしまいます。殿様の耳にも届き、上役たちは処分され、さらに直行には、能力に相応しい権限が与えられていない、とばかり、異例の抜擢、昇進が与えられました。

役不足はいつか正されるのでした。

この映画のエピソードの多くは、その者(物)が適正なポジションについているか、という主題に基づいて作られているように思いました。

自分は社会で正当に評価されていない、などと不満がでるのは人の常ですが、世間様は案外正当に評価しているものなのですね。

追記 
2011/1/2 21:27 by さくらんぼ

淡々と進む物語ですが、映像にたるみ感は無く、そればかりか軽い緊張感さえあふれ、大変良い感じでした。

オレがオレがとシャシャリ出て、出世を目指すのではなく、与えられた職務を淡々とこなすうちに周りが評価してくれる、という、いかにも日本的な美学にかなう生き方を描いた映画でした。好きな物語です。

★★★★

追記Ⅱ ( 龍馬 ) 
2011/1/5 22:45 by さくらんぼ

>オレがオレがとシャシャリ出て、出世を目指すのではなく、与えられた職務を淡々とこなすうちに周りが評価してくれる、という、いかにも日本的な美学にかなう生き方を描いた映画でした。

後半で「黒船が来たから俺もじっとしてはいられない」みたいな話をして家を出て行った直吉でしたが、現地で仰せつかった役目は、そろばん、でした。鉄砲を撃つ者は沢山いるが、そろばん侍は少ないからです。稀有な能力を買われて出世した訳です。

これも主題に基づいたエピソードですが、もしかしたら、この映画は、さわがれ過ぎた龍馬へのアンチテーゼでもあったのかもしれません。

龍馬にあこがれるのは分かりますが、龍馬みたいな人ばかりいては、船頭多くして船なんとやら、になりかねません。そして龍馬以外の、その他大勢の無名の人たちの支えがあってこそ、龍馬も安心して船頭役ができるのですから。

追記Ⅲ ( 役場という要 )
2011/12/30 10:20 by さくらんぼ

TVで自衛隊の3.11での活躍をほめたたえる報道が後を絶ちません。警察、消防の方々の活躍も同様に報道されています。彼らについては私も頭が下がる思いです。現場の方々は本当に大変です。

では被災地の役場事務職員はどうでしょうか。彼らも自衛隊員に負けず不眠不休で働いています。家を流され家族を失っている人もいます。

しかも彼らは、救出作戦など素直に感謝されやすい自衛隊の仕事とは違い、被災者などからの苦情などを受け付ける窓口仕事などに従事しているのです。苦情があっても、さまざまな制約から願いを100%は受入れられないでしょう。その時の彼らの心中の苦しさを察します。

さらに休日もままならぬため精神的ストレスで体調をこわす人も出ていたらしいです。彼らには、防災行政無線に従事し、津波から逃げ遅れて殉職、でもしないかぎりスポットライトが当たらないのでしょう。

とかくインパクトのある自衛官などの仕事ばかりが報道されますが、映画「武士の家計簿」の精神を理解するならば、地味な役場の、無名事務職員たちの、被災地での働きぶりも公平に想像してあげたいと思います。

追記Ⅳ ( 新聞から )
2012/2/3 9:49 by さくらんぼ

『 東北の被災地で働く公務員の、心と体が心配だ。

自治体の職員は、経験したことのない復興や原発事故対応に携わる。警察官や消防署員は、いまなお行方不明者の捜索にあたる。学校の先生は、くじけそうな子はいないかと目を配る。医師や看護師は、住民の健康を見守る。

社説では、復旧・復興の制度作りに目がいきがちで、それを現場で担う生身の人間のことはなかなか取り上げられない。だが、彼らの多くも、家族や同僚を亡くし、家も失った被災者だ。

「3.11」のその時から、自分たちのことは後回しにして、被災住民のために働いてきた。その張りつめた心が、被災1年や年度末という節目で、ぽっきりと折れてしまわないか。そんな懸念が関係者の間で広がりつつある。

被災者と直接向き合う自治体職員は、不満やイライラのはけ口になりやすい。仮設住宅の抽選の場で、罹災証明書の発行の窓口で、「お前ら何やってんだ」と罵声を浴びた。

仮設で暮らす職員たちの多くは、いつの間にか「苦情窓口」なってしまい、ようやく休めるようになった日曜日でも気が休まらない。

想像を絶する数の遺体を清め、検死した警察官も、時がたつほどショックが重くのしかかってくるのだという。

専門家によると、心の傷は時を経ても消えない。心の奥にしまっておこうとすればするほど、外に出ようとする圧力が強くなる。

それでも、彼らは公に奉仕する仕事に就いた使命感で乗り切ろうとする。

40人近い同僚を失った宮城県南三陸町の職員の言葉が、心に残る。

「ここで逃げたら、職員として人生が終わってしまう。病院で診断書を書いてもらえば仕事は休めるけど、それはできない」

全国の自治体からの応援やボランティアも被災地を支えている。だが、復興への長い道のりを最後まで歩くのは、地元で働く人たちだ。

この人たちの心のケアは、自治体任せでいいのだろうか。

宮城県岩沼市や南三陸町、岩手県釜石市など、大学などと連携して職員のメンタルヘルスの維持に努めるところもでてきた。だが、小さな自治体の努力には限界がある。

「復興庁の支所が地元にできるなら、職員をケアする窓口もつくって」。南三陸町の副町長の訴えはもっともだ。

彼らを、孤立させてはいけない。

(政治社説担当) 』

( 朝日新聞 2012.2.2朝刊 国分高史氏の社説余滴「被災地の公務員 心のケアを」より転記 )

素晴らしい社説の余滴を見つけましたのでご紹介しました。復興・復旧の要になる自治体職員ですから、本当に孤立させてはいけないと思います。それは、とりもなおさず被災住民のためにもなることですから。

追記Ⅴ ( 名古屋市の特筆すべき支援スタイル )
2012/2/6 10:57 by さくらんぼ

『 名古屋市、陸前高田の再起支援

大規模派遣で行政丸ごと

震災と津波は、陸前高田市役所も直撃し、行政組織そのものが壊滅的なダメージを受けた。再起への道は険しいが、名古屋市が行政機能回復を丸ごと支援する。

陸前高田市は庁舎が破壊され、行政資料のほとんどが流失した。職員295人のうち68人が死亡・行方不明。菊池満夫企画部長は「行政サービスなんて何もできない。半年程度で行政が正常化するのは無理。どれくらいかかるのか想像もつかない」と話す。今の行政機能は市給食センターと、8畳ほどのプレハブ16棟に集約されている。

名古屋市は、壊滅した役所の再建には「市の機能をそのまま移せば効果的」との発想から、水道などの現業部門にとどまらず、都市計画や総務、戸籍などの中枢部門にも専門性の高い職員を長期にわたり送り込む。1年程度の長期派遣も視野に入れており、発案した河村たかし市長は延べの派遣人数が「数千人になるかも」と意気込みを示した。

まず5月上旬から、保健指導や介護保険、児童福祉など現地のニーズが高い分野の職員を派遣する。先行して7人が現地入りしており、必要な人数や派遣期間の細部を詰めている。』

(中日新聞2011年4月12日より転記)

名古屋市が、のべ数千人規模で職員派遣をすれば、被災地の自治体職員のフォローができるでしょう。被災者も助かるはずです。そして、それが職員の心身ケアのサポートの、助力にもなれば幸いです。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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