#ネタバレ 映画「まあだだよ」
「まあだだよ」
1993年作品
先生の名は
2017/6/26 21:51 by さくらんぼ(修正あり)
( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
これは、もしかしたら、黒澤明監督の昭和天皇への敬愛の気持ちを、ひそかに綴った作品だったのかもしれません。映画界の天皇から、昭和天皇への手紙です。
直接では恐れ多いと思われたのでしょう。いかにも日本人的ですが、それがかえって、のびのびと自由な作風を生みました。
★★★★★
追記 ( 先生の名は )
2017/6/27 8:29 by さくらんぼ
封切りに映画館で観ましたが、あの当時は、どうしても映画「七人の侍」などと比べてしまい、「監督も枯れたな…」という印象しか持てませんでした。
どなたかの評論では「黒澤監督がご自分の晩年の夢・理想像を描いている」みたいな話もありました。当時、まだ若かった私は「そういうものなのかな…」と。
そんな中、先日TVで再観したわけです。私もおじさんになり、多少はお年寄りの気持ちも分かるようになったつもりですが、①それにしても黒澤監督は「晩年になっても、あんなに先生、先生と祭り上げられたいのか」と疑問がわいたのです。②もしかしたら、あの主人公は黒澤監督ご自身ではなく、どなたか敬愛する別の人を描いているのではないのかと。
③そんな中あらためて主人公を見ると、昭和天皇に姿と声が似ている事に気がついたのです。チラシに全身象が写っていますが、ますます似ています。もし昭和天皇ならば、もっと記号があるはず。
④映画が始まってすぐ、生徒から「先生は金無垢だ!」みたいなセリフがありました。金色からは「菊花紋章」を連想させます。
⑤30分ぐらいすると先生が浴衣姿でくつろぐシーンがあります。その浴衣に注目。そこには「大輪の菊」がたくさん付いていたのです。つまり先生は「菊花紋章」の付いた浴衣を着ていたことになります。水戸黄門の印籠の御威光を知っている日本人ならこの意味は分かりますね。
さがせば、まだ有るかもしれません。
ちなみに映画「この世界の片隅に」には、ヒロインが毛布をかぶってかっ歩するシーンがありました。あの毛布に書いてある花は、韓国の花である「むくげ」のようでした。ですから、さりげないシーンは重要なのです。
追記Ⅱ ( 「まあだだよ」とは「君が代」のことか )
2017/6/27 8:42 by さくらんぼ
「 … 昭和二一年の晩春、門下生たちの画策で第一回『摩阿陀会』が開かれた。元気な先生はなかなか死なない、そこを洒落で死ぬのは『まあだかい?』というわけだ。吉例となっていくビールを飲み乾して先生は『まあだだよ!』と答える。宴会は盛り上がり、混乱の極致である。… 」
( 「キネマ旬報データベースより」より抜粋 )
「 君が代は
千代に八千代に
さざれ石の
いわおとなりて
こけのむすまで 」
( 「君が代」 ウィキペディアより抜粋 )
追記Ⅲ ( 昭和天皇は生物学者 )
2017/6/27 21:41 by さくらんぼ
先生の家が空襲で焼けてしまったので、元生徒たちが建ててくれることになりました。希望を聞くと「庭に池が欲しい」との事。「小さな池なら…」と答えると、「小さな池では魚が自由に泳げない。魚の背骨が曲がってしまう」と譲りません。元生徒たちは「さすが先生」と、大きな池を作る事になりました。
ご承知のとおり、昭和天皇は生物学者でもあり、「ハゼの研究」でも有名でしたね。
追記Ⅳ ( 「今、降臨された」 )
2017/6/27 22:00 by さくらんぼ
映画の冒頭、先生が教室に登場した時、教壇に立つ先生の周囲には、少々神秘的に煙(「気」)のようなものが漂っていました。
あの演出は「今、降臨された」と言っているように感じました。
この場では流れませんが、クラシックの挿入曲名はヴィヴァルディの「調和の霊感」です。意味深な曲名ですね。
後にこれは生徒が隠れてタバコを吸っていた痕跡だと分かり、先生は「私もタバコが好きだ」と脱線話になるのですが。
追記Ⅴ ( 孤独 )
2017/6/30 6:15 by さくらんぼ
>どなたかの評論では「黒澤監督がご自分の晩年の夢・理想像を描いている」みたいな話もありました。当時、まだ若かった私は「そういうものなのかな…」と。
>そんな中、先日TVで再観したわけです。私もおじさんになり、多少はお年寄りの気持ちも分かるようになったつもりですが、①それにしても黒澤監督は「晩年になっても、あんなに先生、先生と祭り上げられたいのか」と疑問がわいたのです。(追記より)
映画の終わりに、先生の子ども時代の回想シーンが出てきます。鬼ごっこをしていました。先生は藁に隠れようとしましたが、ふと見上げた夕焼け空のなんと美しいことか。しかし鬼ごっこ最中なので、誰かと感動を分かち合うことが出来ません。さみしい、さみしい、ラストです。
実は、私が幼稚園の時に好んで書いた夕焼け空の絵も、少し似ているのです(映画「あかね空」のレビュー参照)。今にして思えば、無意識にあの色に温もりと慰めを求めていたのでしょう。
この映画の主題は「孤独」かもしれません。
孤独にも色々ありますが、黒澤天皇の「天才ゆえの孤独」です。だから祭り上げられても宴会を受け入れるのです。だからノラが居なくなってアタフタするのです。両者はコインの裏表。
生徒たちはアタフタする先生を指して、「先生は教養もあり、感受性も優れているので、僕たちとは違う世界を感じているに違いない。だから助けなければ」みたいに評していました。まさにそれ。
だから天皇つながりで、昭和天皇の孤独も想像された。そして全力でお慰めする映画を撮ったのでしょう。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)