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#ネタバレ 映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 」

「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」
2017年作品
人は使命感に寄りそう
2018/4/2 18:23 by さくらんぼ(修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

まったく違う話であることは承知の上ですが、この映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」からは、映画「日本のいちばん長い日」(2015年)を思いだしてしまいました。

国の存亡をかけた戦争の中、国王がいて、政治家、庶民がいて、国の行く末を熱く議論する作品だからです。

二本の映画は良い勝負をしています。

余談ですが、非常時のリーダーは、嫌われもので、忖度が必要な男がふさわしい!?(2022年のウクライナへのロシア侵略では、米国にトランプさん待望論があるようですが)。

映画の前半に、そんなエピソードがあり、思わず、昨今の日本も思いだしてしまいました。

★★★★☆

追記 ( 人は使命感に寄りそう ) 
2018/4/3 9:18 by さくらんぼ

① 前半、チャーチルの元へやってきた新人の若い女性秘書が、彼の注文通りにタイプできなくて(凄腕のタイピストなのですが)、「タイプも満足に打てんのか!」と一喝され、逃げだしてしまうエピソードがあります。

でも、荷物をまとめて彼女が事務所を出たとき、偶然、郵便屋さんが通りかかり、彼女に王宮からチャーチルへ宛てた手紙を渡すのです。困惑した彼女ですが、大事な手紙をほかっておくわけにもいかず、またチャーチルのところへ戻り、話をさえぎってでも、直に渡します。

② また、映画の後半には、(弱気になってドイツとの和平の道を探り始めた)チャーチルが、国王と話すシーンがあります。チャーチルは(和平に否定的な)国王の気持ちを忖度し、国王に言われた通り、名もなき民の声も聴くため、地下鉄に乗るのです。この地下鉄は、「地下」が「名もなき」の、規則正しい「鉄道」が「モラル・民の声」の記号ですね。

そして、再び戦いの炎に点火したチャーチルは、議会へ戻り、名演説で国を率いて勝利へと導くのです。

この①②のエピソードは相似形になっていますね。だから、このあたりが主題だと思います。

追記Ⅱ ( 人は使命感に寄りそう ) 
2018/4/3 9:32 by さくらんぼ

チラシを見ると、横を向いたチャーチルがいます。

これは彼の二面性、「怖さ」「やさしさ」、「強さ」「弱さ」を表すと同時に、「心変わりは人の常」であることも表していると思います。

「心変わりは人の常」からは映画「カサブランカ」を思いだします。現時点ではオマージュとまでは言いませんが、戦争映画ですから、なんらかの共通点はあるのでしょう。

そして、「心変わりは人の常」であっても、最後には、「人は使命感に寄りそう」もの、なのかもしれません。 映画「カサブランカ」の二人もそうでした

追記Ⅲ ( あの映画も観たい ) 
2018/4/3 9:52 by さくらんぼ

映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」で、チャーチルが悩んだ作戦が、映画「ダンケルク」として別にあります。私は観ていませんが、ぜひ観てみたいと思いました。

そして終戦(勝利)の歓喜の中、リアル映画「ローマの休日」と言うべき映画「ロイヤル・ナイト」。こちらは観ましたが、あの勝利の異常とも言える歓喜を理解するためには、このチャーチルの話を知る必要がありました。

そもそも、ヒトラーがユダヤ人たちを迫害したことは知っていても、イギリスをこれほど苦しめ、降伏寸前まで追いつめていたとは…。

追記Ⅳ ( 相似形になる世論 ) 
2018/4/3 11:52 by さくらんぼ

>② … 国王に言われた通り、名もなき民の声も聴くため、地下鉄に乗るのです。… (追記より)

ぐうぜん飛び乗った地下鉄の一両。

そこで庶民の話を聴いただけで、はたして、それが世論と言えるのか、という疑問があると思います。

しかし、選挙の出口調査を思いだすと分かります。(実際の出口調査は何件調査するのか知りませんが)私の経験から言うと、50人もサンプル調査すれば、世論の概ねは分かるのです。これも相似形になりますから。

チャーチルは10人ぐらいの人と話をしました。それ以外の人にも発言の機会は平等にありました。それを持って世論としたのでしょう。あの時代、しかも緊急時なら、上等だと思います。

追記Ⅴ ( 敵を知り己を知れば… ) 
2018/4/3 16:10 by さくらんぼ

>② また、映画の後半には、弱気になってドイツとの和平の道を探り始めたチャーチルが、国王と話すシーンがあります。チャーチルは(和平に否定的な)国王の気持ちを忖度し、国王に言われた通り、名もなき民の声も聴くため、地下鉄に乗るのです。この地下鉄は、「地下」が「名もなき」の、規則正しい「鉄道」が「モラル・民の声」の記号ですね。(追記より)


③ チャーチルの秘書が、ある日、不安そうにしていました。「どうした」と聞くチャーチル。「断片的な情報ばかりで…」と言う秘書。

つまり、秘書をやっていればトップシークレットに触れることも多々あります。そこには悪い話もありますし、ほとんど断片情報で、全体像が見えないから、よけい不安が膨らむのです。そして…彼女の兄も戦場に。

それを知ったチャーチルは、なぜか女人禁制になっている中央指令室みたいな所へ、「私が許可する」と言って彼女を入れ、他の職員もいる作戦ボードの前で、現在の状況を分かりやすく説明したのでした。

②③も相似形になっていますね。

問題の答えが出ない、弱気になる、不安になるのは、もしかたら頭のせいではなく、単に「情報不足」なのかもしれません。栄養不足では力が出ないのと同じです。

もっとデータをインプットすれば、解は見つかるかもしれませんね。

追記Ⅵ ( 「君を見ているんだ」 ) 
2018/4/3 16:20 by さくらんぼ

>つまり、秘書をやっていればトップシークレットに触れることも多々あります。そこには悪い話もありますし、ほとんど断片情報で、全体像が見えないから、よけい不安が膨らむのです。そして…彼女の兄も戦場に。(追記Ⅴより)

そして…兄は、戦死していました。

それを聞いた時、しばらくチャーチルは彼女の側から動きませんでした。不安になった彼女は「どうしたんですか」と。チャーチルは「君を見ているんだ」と言いました。人たらしですね。

ある意味、「Here's looking at you, kid.」。

ご存じ、映画「カサブランカ」。

追記Ⅶ ( 人は使命感に寄りそう ) 
2018/4/5 9:53 by さくらんぼ

>そして…兄は、戦死していました。

>それを聞いた時、しばらくチャーチルは彼女の側から動きませんでした。不安になった彼女は「どうしたんですか」と。チャーチルは「君を見ているんだ」と言いました。(追記Ⅵより)

(  映画「カサブランカ」のネタばれにも、ふれています。)

映画「カサブランカ」は、恋愛映画の体をした、戦意高揚映画だと言われています。主人公たちは、個人的な恋愛感情を我慢して、お国のための選択をするのです。

映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」では、チャーチルと若き女性秘書に焦点が当たっています。幅広い客層が感情移入する対象として、この二人を使っているのでしょうが、それだけではないような気もします。

チャーチルの意向を秘書がタイプし(口実筆記)、文書化します。その文書が政治を動かすわけです。秘書の兄は戦死しました。もしかしたら秘書がタイプした公文書が、兄を死に追いやったのかもしれないのです。兄だけでなく、たくさんの兵士も死んでいきます。それを承知の作戦もありました。

その事に気づき、ショックを受ける秘書。

その哀しみ、痛みを共有しようとするチャーチル。

この映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」も、個人的な感情を封印して、お国のために尽くす男女を描いていました。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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