#ネタバレ 映画「起終点駅 ターミナル」
「起終点駅 ターミナル」
2015年作品
さまざまな愛の形
2015/11/25 7:17 by さくらんぼ (修正あり)
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
私は、ふわふわの食パンは「愛を食べるもの」だと何かに書きました。だから「サンドイッチは愛」であると。「大判焼き」の皮や「ホットケーキ」が唇に触れる感触は「ひと肌の温もり」であり、もっと艶めかしい愛」だと。
そして、「愛のない料理」は「エサ」であり、食っても食っても人は飢えが満たされることは無いのだと。
この映画「起終点駅 ターミナル」には、主人公・弁護士の鷲田完治(佐藤浩市さん)が、自ら料理をして食するシーンが、何回も丁寧に描かれています。彼は新聞の料理記事を切り抜いて、それを参考に作っているのですね。
私もあの料理欄には、昔、一つ思い出があります。
ある日、喫茶店で常識をくつがえすような珍しい料理記事を見つけたのです。どうにも一人だけで感心していることができず、なじみの若い女店員さんが水を入れに来てくれた時に、その記事を見せたのでした。
私としては、せいぜい「看板娘と一言の雑談を楽しんだだけ」のつもりであり「極めて常識的範囲の行為」だったつもりですが、20歳前後の若い店員さんにとっては、おじさんから色目を使われたと、誤解でもしたのでしょう。
とても細やかに気の付く、店員さんとしては模範的な人でしたが、それ以後、私には水を入れに来てくれることは無くなりました。
つい話が脱線しました。
映画の話に戻りますが、あの映画でも「料理は愛」であると語っていたようですね。
映画の前半に、学生時代の恋人・結城冴子(尾野真千子さん)との情念を感じさせるHのシーンが出てきました。これはもちろん「愛」ですね。
それから弁護を受けた椎名敦子(本田翼さん)の「きれいな、お辞儀」も、結城冴子のHと対になるべく「愛」なのでしょう。
それならば、誤解を承知で言うならば、映画全体に出てくる「覚せい剤」も、愛を求める哀しい人が使っている物ではないでしょうか。もちろん覚せい剤は、他の愛とは次元が違うほどの「悪」であることは言うまでもありません。
だから、この映画は「さみしい人たちが、さまざまな形の愛を求める話」でもあったのではないでしょうか…。
覚せい剤でひと時の元気をつける人がいるのなら、新聞記事の料理を作って元気をつける人もいるのです。
実は、映画の途中で、少々私は寝てしまいました。だから情報の欠落があるはずです。原作であらすじを知る方法もありますが、映画の解釈には向かないと考えます。ストーリーが微妙に違う事が多いですから、解釈も違って来るのです。
そうすると、もう一度映画を見直す機会があるまで、解釈はできないことになります。ただでさえ沈黙気味の映画ですし。
ですから、今回のレビューは暫定版と言いますか、「こんなところが気になりましたよ」程度の、雑談だと思ってください。最後まで読んで下さった方、ごめんなさい。
追記 ( 映画「鉄道員(ぽっぽや)」 )
2017/11/7 13:42 by さくらんぼ
TV放送していたので、録画して少しづつ観ています。
追記Ⅱ ( 似た者通し )
2018/2/27 22:28 by さくらんぼ
弁護士は公務員ではありませんが、平均的な公務員以上に、人生の裏通りを覗く仕事でしょう。しかし、覗いてはいても、やはり彼らは表通りに居るはずです。
でも、この映画の主人公・鷲田は、恋人に目の前で鉄道自殺されたショックで、出世コースを降り、今は国選弁護のみを請け負う弁護士として、町はずれの小さな家で、細々と暮らしています。
そんな、世捨て人のような彼でも、いや世捨て人だからこそ、押しかけてくるお客さんがいるのですね。人生の裏通りに住む人々にとっては、痛みを知ってくれそうな、鷲田のような人間こそが理想的な先生なのでしょう。
さすがに親子のような年下の敦子(本田翼さん)とは、(押しかけられても)一緒になりませんでしたが、元ヤクザの社長(中村獅童さん)の顧問弁護士にならないかという依頼は、後に引き受けたような気がします。どうやら今は堅気ですし、それに、二人は良い友達になれそうですから。
タイトルの映画「起終点駅 ターミナル」は、「終着駅は始発駅になる」みたいな意味のようです。敦子も元ヤクザも、元裁判官だった鷲田に裁かれた人たちです。これは、そんな人たちが再起をしようとするお話だったのですね。
ちなみに、NHK・朝ドラ「ひまわり」は司法試験を受けるヒロインの話です。合格後は、弁護士、検事、裁判官の、長期間にわたる実地研修を受けた後、自分の適性に合った仕事に就くようです。そこで描かれていたのは、弁護士だけでなく検事も、裁く相手の更生を考えているという事です。もちろん裁判官もでしょう。だから、みんな「終着駅は始発駅になる」ことを目指しているようです。
追記Ⅲ ( 男心に、男が惚れて )
2018/2/28 22:34 by さくらんぼ
>でも、この映画の主人公・鷲田は、恋人に目の前で鉄道自殺されたショックで、出世コースを降り、今は国選弁護のみを請け負う弁護士として、町はずれの小さな家で、細々と暮らしています。(追記Ⅱより)
出世コースを降りた理由をもう少し掘り下げると…
恋人が自殺した理由は詳しく語られていませんが、鷲田との恋愛が原因になっているらしことは、映画を観ている者にも分かりますし、鷲田自身も分かっているようです。
鷲田の「世捨て人化」は、人を裁く立場なのに、自分のせいで恋人を死に追いやってしまった事に、「落とし前」を付けたものでしょう。それは、ある意味「出家」みたいなものかもしれません。それが証拠に、髪を染めていませんね。
あの元ヤクザの社長(中村獅童さん)が、こんな事を言いました。頑なに顧問弁護士の誘いを断る鷲田に、「女のために裁判官を辞めても、私の会社には来れないのですか…」と。すると「どうしてそれを(知っているのだ)…」と鷲田。「この仕事をしていると、色んな情報が入ってくるんです」と社長。
どうも社長は、鷲田の身の施し方の中に、男気というか、任侠道に似たものを見たのかもしれませんね。そして惚れた。元々ヤクザの血があるわけですから、ビビッと琴線に触れてしまい、「この先生しかいない」と追っかけになったのでしょう。
追記Ⅳ ( 映画「居酒屋兆治」 )
2018/3/1 9:40 by さくらんぼ
映画「居酒屋兆治」を連想しました。オマージュかどうかは現段階では分かりませんが。
仕事の責任を取って、出世コースから降り、会社を辞めた男。
彼は料理が得意。
過去に恋愛をあきらめた、男と女。
男は別の女と結婚。
男に言い寄る女。
暴力の臭いのする客。
鷲田たちの小さな家にある、これ見よがしに二つ並んだ赤い郵便受けが(中を覗くシーンも多い)、居酒屋の「赤ちょうちん」に見えてきました。
追記Ⅵ ( 「ザンギバーガー」 )
2019/11/10 22:13 by さくらんぼ
チェーン店のパン屋さんへ行ったら、「北海道フェア」をやっていて、「ザンギバーガー 」なるものを売っていました。
「ザンギ」と言えば、映画「起終点駅 ターミナル」で、佐藤浩市さんが作ったものを、本田翼さんが、「美味しい、美味しい」と言って食べるシーンがありましたね。
あの時、「唐揚げとザンギは違う。ザンギはザンギよ」みたいなセリフを、本田翼さんが言うシーンがあったのを覚えています。あれ以来、一度食べてみたいと思っていましたので、迷わず買ってみました。
食べた感想は…
醤油ベースの味で、隠し味程度にニンニクが入っており、マヨネーズと共に、美味しくいただけました。ラーメンでいえば、シンプルな醤油ラーメンといったところでしょうか。
ただ、限りなく「唐揚げ」に近いのです。私のような料理の素人には、どう違うのかはわかりませんでした。
さらに、どんな唐揚げでもそうでしょうが、揚げたての熱々をほおばるのと、冷えてかたくなったものをかじるのでは、全然おいしさが違いますし、本場北海道で食べるのとは、また違うのでしょう。そういう意味で、最高ではないかもしれませんが、もう一度食べたくはなりましたよ。
追記Ⅶ 2022.10.31 ( 「ザンギ」談義 )
>映画の前半に、学生時代の恋人・結城冴子(尾野真千子さん)との情念を感じさせるHのシーンが出てきました。これはもちろん「愛」ですね。(本文より)
そのHのシーンは地味なものです。Hというより、二人並んで話をしている方が多い。
しかし、最後の方に、話にひと息ついた結城冴子が、情熱的に鷲田の上半身のキスをしまくるシーンがあります。そこだけ少し引っかかっていました。行為に段差があったからです。でも、あれは(後のザンギのエピソードへと続く伏線)肉欲の記号だったのかもしれないと、今になって思うのです。
この作品、鷲田と椎名敦子が二人でザンギを食すシーンが多いです。
もともと鷲田の好物で得意料理でした。まさに(さみしさゆえの)記号的肉欲なのでしょう。
それを椎名敦子にふるまったら喜ばれたのです。椎名敦子の気持ちも同じだという記号かもしれません。
こちらの二人はHをしたわけではないでしょうが、深層心理的にはザンギで交わっていたのかもしれません。寂しいもの同士が。
椎名敦子との最後の晩餐には、肉屋で、いつもとは違う上肉を買う鷲田。最後のHは、特別に良い思い出にして欲しいという意味でしょうか。
別れの日、椎名敦子を駅まで送った鷲田が、ザンギのレシピを書いた紙を渡します。
喜んだ椎名敦子は鷲田に抱き着き、耳元でささやきます。「うまく作れなかったら(あなたを)食べに来てもいい?」。
それに対して「だめだ!」ときっぱり言う鷲田。
椎名敦子は微笑みながらドアを開け、
一度も振り向かずに去っていきました。
追記Ⅷ 2022.10.31 ( お借りした画像は )
キーワード「唐揚げ」でご縁がありました。私が食べた追記Ⅵの「ザンギバーガー」のザンギは、この写真のようにタレがかかった物でした。写真がザンギなのかは分かりませんが、とても美味しそうでしたので。無加工です。ありがとうございました。
追記Ⅸ 2022.10.31 ( 泉谷しげるさんは名優 )
書き忘れましたが、(LPを持っている私にとってはフォークシンガーでもある)泉谷しげるさんは、とても良い俳優さんだと、あらためて思いました。朝ドラ「ひまわり」にも弁護士役で出て来ますし、この映画には先輩裁判官として出て来ます。
鷲田と先輩裁判官が居酒屋で別れの酒宴をするときの、泉谷さんのお芝居が最高です。昭和のオヤジ丸出しで懐かしい。私が若い頃にも、あのような先輩がいて、酒宴でお世話になりました。
ちなみに、あの先輩がビールの追加注文をする様子は必見です。
少々乱暴ぎみですが、昭和のおじさんに言わせれば、ギリギリのセーフでしょう。
増してや「おねさ~ん ビール1本!」ぐらいの大声は、昭和おじさんにとっての、酒場での丁寧語です。
裁かずに大目に見てやってください。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)