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短編集『夏秋』の秋パートです。
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#文フリ

困難を通じて天へ

困難を通じて天へ

2030年 10月5日
アメリカ コロラド州

ロッキー山脈の麓、アスペンでは、夏が終わり、秋が少しづつ色づいて来ていた。
街の木々も緑が赤と黄に塗りつぶされ、道ゆく人々がは厚着を着始める。
空は青く澄んでおり、雲はどこまでも天高い。
山の上では、既に初雪は降っているだろう。

キャシーは、そんな山々に囲まれた街の一角に、たった一人で住んでいた。
彼女は既に80を超える高年だったが、痴呆になる気配

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盲目と彩り

盲目と彩り

 さやかの家に向かう途中、ひとりの不思議なオジサンを見つけた。
 そのオジサンは、さやかの家の近くの公園のベンチの横に立っていた。
 色鮮やかに、黄色に、紅色に輝くまわりの風景に溶け込まない不気味さを湛えていた。
 輪郭がぼやけているような、そんな感じがする。美しく輝く風景画に、一点だけ黒い墨を零してしまった。そんなようなたたずまいで私の視界を捉えていた。
 今日は久々にさやかに会おうと思って、こ

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銀杏と四人目

銀杏と四人目

「…………えて、先に行け!」
 教室のドアの前に立つと、中から声が聞こえてきた。思わず立ち止まる。こんな朝早くから誰かいるなんてことは私の高校生活において、あり得ないことだった。
 その経験則をもって、この秋晴れに身を任せて、鼻歌交じりに、家で楽しむための銀杏を拾いながら登校したのに。
 誰かいるなんて話は聞いていない。
 それでも中の様子が気になって、音を立てないように、ドアをそろりと開ける。

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鍵とダンス

鍵とダンス

「ママ……私、やっぱり秋が嫌い」
 ママは驚いていた。ママはママでも母ではない。働いているお店のママ。店長だし、なんなら、一児の父。 

 母は、秋にいなくなった。

「なによ、急に。なに泣いてんのよ」
 店の裏口で、秋風に吹かれて、美味しそうに煙草をふかしていたママがびっくりしている。
 それもそうだ。だって私だってなんで泣いているのか分からないんだから。

 樹々は色づき、空は高く、夕暮れに浮

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