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青魚淡水
2022年1月28日 19:03
娘が何やら企んでいるらしい。秋の季節が深まり、そして浮つく世間。夜は長くなり、冷たい風は首筋を撫でるようになった。 そう、今日はハロウィン。 子供が、子供らしく、それも男女問わず、好き放題できるそんな季節。 私の実家が多くの布を取り扱っているという理由もあるのだろう。年を経るごとに、娘のハロウィンへの気持ちは強くなっていく。 そうは言っても、結局は仮装して騒ぎたいだけなのだろうけれど
2022年1月27日 22:07
東京に来て、半年が経とうとしている。春と共に上京したので、もう季節は秋だった。 秋めいた井の頭公園を歩く。ところどころでカップルの姿が見える。私には関係ない、と自分に言い聞かせて、ただ歩く。 東京に来て知ったことだが、想像以上に東京には紅葉スポットがある。この井の頭公園もそうだが、明治神宮外苑、新宿御苑、六義園。都心から離れたって、高尾山、奥多摩、秋川渓谷。 私は行き詰った気持ちを整理する
2022年1月25日 14:34
学生時代を思い出す。幾度となくこうして終電を逃して歩いたものだ。 姉はよくタクシーで帰ってきていたらしいが、当時は考えられなかった。社会人になるとそんなに懐というものは潤うのだろうか、なんて考えていた。 潤った。それはもう潤いに潤った。使おうと思えば割と使えるくらいの収入は得ている。 使う時間が無いだけだ。 今日だってタクシーで帰ろうと思ったら帰れた。むしろそんなに痛くはない。
2022年1月23日 13:43
今、俺は我慢をしている。正直、もう限界が近い。現在は会議中だが、最後に御口洗いに入ったのは会議の始まる前だから、もう三時間ほど経つ。離席するのも憚られるが、生理現象を理性で抑えるのにも限界がある。いっそ音に成らないようにしてしまおうか。「この会議さっきから堂々巡りですよね」 水を打ったように、会議室が静まり返った。 瞬、俺の口から漏れてしまったのかと焦ったが、会議室の面々の視線は俺とは
2022年1月21日 19:58
さやかの家に向かう途中、ひとりの不思議なオジサンを見つけた。 そのオジサンは、さやかの家の近くの公園のベンチの横に立っていた。 色鮮やかに、黄色に、紅色に輝くまわりの風景に溶け込まない不気味さを湛えていた。 輪郭がぼやけているような、そんな感じがする。美しく輝く風景画に、一点だけ黒い墨を零してしまった。そんなようなたたずまいで私の視界を捉えていた。 今日は久々にさやかに会おうと思って、こ
2022年1月19日 20:19
「…………えて、先に行け!」 教室のドアの前に立つと、中から声が聞こえてきた。思わず立ち止まる。こんな朝早くから誰かいるなんてことは私の高校生活において、あり得ないことだった。 その経験則をもって、この秋晴れに身を任せて、鼻歌交じりに、家で楽しむための銀杏を拾いながら登校したのに。 誰かいるなんて話は聞いていない。 それでも中の様子が気になって、音を立てないように、ドアをそろりと開ける。
2022年1月18日 18:40
「ママ……私、やっぱり秋が嫌い」 ママは驚いていた。ママはママでも母ではない。働いているお店のママ。店長だし、なんなら、一児の父。 母は、秋にいなくなった。「なによ、急に。なに泣いてんのよ」 店の裏口で、秋風に吹かれて、美味しそうに煙草をふかしていたママがびっくりしている。 それもそうだ。だって私だってなんで泣いているのか分からないんだから。 樹々は色づき、空は高く、夕暮れに浮