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短編集『夏秋』の秋パートです。
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2022年1月の記事一覧

ハロウィンと娘

ハロウィンと娘

 娘が何やら企んでいるらしい。秋の季節が深まり、そして浮つく世間。夜は長くなり、冷たい風は首筋を撫でるようになった。

 そう、今日はハロウィン。

 子供が、子供らしく、それも男女問わず、好き放題できるそんな季節。
 私の実家が多くの布を取り扱っているという理由もあるのだろう。年を経るごとに、娘のハロウィンへの気持ちは強くなっていく。
 そうは言っても、結局は仮装して騒ぎたいだけなのだろうけれど

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1Kと超越

1Kと超越

 東京に来て、半年が経とうとしている。春と共に上京したので、もう季節は秋だった。
 秋めいた井の頭公園を歩く。ところどころでカップルの姿が見える。私には関係ない、と自分に言い聞かせて、ただ歩く。
 東京に来て知ったことだが、想像以上に東京には紅葉スポットがある。この井の頭公園もそうだが、明治神宮外苑、新宿御苑、六義園。都心から離れたって、高尾山、奥多摩、秋川渓谷。
 私は行き詰った気持ちを整理する

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秋風とあの子

秋風とあの子

 学生時代を思い出す。幾度となくこうして終電を逃して歩いたものだ。

 姉はよくタクシーで帰ってきていたらしいが、当時は考えられなかった。社会人になるとそんなに懐というものは潤うのだろうか、なんて考えていた。

 潤った。それはもう潤いに潤った。使おうと思えば割と使えるくらいの収入は得ている。

 使う時間が無いだけだ。

 今日だってタクシーで帰ろうと思ったら帰れた。むしろそんなに痛くはない。

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紅い告げ口

紅い告げ口

 今、俺は我慢をしている。正直、もう限界が近い。現在は会議中だが、最後に御口洗いに入ったのは会議の始まる前だから、もう三時間ほど経つ。離席するのも憚られるが、生理現象を理性で抑えるのにも限界がある。いっそ音に成らないようにしてしまおうか。

「この会議さっきから堂々巡りですよね」

 水を打ったように、会議室が静まり返った。
 瞬、俺の口から漏れてしまったのかと焦ったが、会議室の面々の視線は俺とは

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盲目と彩り

盲目と彩り

 さやかの家に向かう途中、ひとりの不思議なオジサンを見つけた。
 そのオジサンは、さやかの家の近くの公園のベンチの横に立っていた。
 色鮮やかに、黄色に、紅色に輝くまわりの風景に溶け込まない不気味さを湛えていた。
 輪郭がぼやけているような、そんな感じがする。美しく輝く風景画に、一点だけ黒い墨を零してしまった。そんなようなたたずまいで私の視界を捉えていた。
 今日は久々にさやかに会おうと思って、こ

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銀杏と四人目

銀杏と四人目

「…………えて、先に行け!」
 教室のドアの前に立つと、中から声が聞こえてきた。思わず立ち止まる。こんな朝早くから誰かいるなんてことは私の高校生活において、あり得ないことだった。
 その経験則をもって、この秋晴れに身を任せて、鼻歌交じりに、家で楽しむための銀杏を拾いながら登校したのに。
 誰かいるなんて話は聞いていない。
 それでも中の様子が気になって、音を立てないように、ドアをそろりと開ける。

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鍵とダンス

鍵とダンス

「ママ……私、やっぱり秋が嫌い」
 ママは驚いていた。ママはママでも母ではない。働いているお店のママ。店長だし、なんなら、一児の父。 

 母は、秋にいなくなった。

「なによ、急に。なに泣いてんのよ」
 店の裏口で、秋風に吹かれて、美味しそうに煙草をふかしていたママがびっくりしている。
 それもそうだ。だって私だってなんで泣いているのか分からないんだから。

 樹々は色づき、空は高く、夕暮れに浮

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