「子育てしやすいまち」は本当か見てきました
開設から1年、川口市子ども発達相談センターの今
「子育てしやすいまち」とは行政でよく使われるフレーズですが、言うは易く行うは難し・・・「易く」子育てするためには、親の体力や状況に即した適応力も大切ですが(とくに体力💦)、子供が持つ個性によっては、本当に四苦八苦しながらなんとかその日を乗り越えているというご家庭も多いと思います。いわゆる「手がかからない子」とか「なんだか育てにくい子」などと表現されているものです。
これまで川口市の相談窓口は、子育て相談課や地域保健センター、あるいは障害福祉課など分散してきましたが、「最初にどこに相談して良いのかわからない」「結局たらいまわしにされた」という声も多くありました。
そこで、子育てに関する悩みや相談を受け入れる窓口を一元化しようと、昨年4月川口市子ども発達相談センター」が開設しました。私も開設を楽しみにしていた1人でしたので、すぐにでも現場視察に行きたかったのですが・・・
コロナに振り回された開設初年度
昨年4月といえば、まん延し始めた新型コロナウイルスによる1回目の緊急事態宣言、学校は休校、保育所は登園自粛と何もかもが初めての状況。私が現場に行くことで、職員さんに負担をかけたり、利用者の方の迷惑になってはいけないとの思いから視察は自粛していましたが、開設から1年経過し、これまでの状況や課題を知るため、やっと現場視察に出向いてまいりました。
ここはどこの国??次々やってくる外国人と読めない案内板
子ども発達相談センターは、青木環境センターの緩衝緑地帯(雑木林)だった場所に建てられた建物(青木3丁目分室)の2階に入っています。大通りから1本入ると少しわかりにくいですが、植栽のうえにニョキッと現れるこの存在感ある赤い看板が目印です。建物正面の道路挟んで向かい側には駐車場もあり、台数にも余裕がありそうです。もちろん駐車料金は無料です。
1階には社会福祉協議会や地域包括支援センター、成年後見センターなど福祉関係の事務所が入っているのかと思いきや、企画経営課統計係といった毛色の違う部署も同居しています。
さて、この近くを通っていて感じたのですが、なんだかやたらと外国人が多いのです。特にトルコ系と思しき方が続々と建物内に入っていきます。フェンスには、見慣れない文字の案内版が。
実は、視察時、新型コロナの特例貸付が延長されたところだったのです。この貸付金の受付窓口が社会福祉協議会だったため、少しでも早く手続きしたい方が直接、社会福祉協議会に来ていたのです。
案内板にもあるように、郵送でも何ら問題なく、むしろそちらを推奨しています。しかし、言葉がわからない、係員と一緒に間違いないよう書類記入したいという外国人の方が、大勢来ているようでした。延長決定した直後は、入口から溢れるほどの外国人が来られ、2階の子ども発達相談センターの利用者さんが通れないこともあったことから、この日は、入口に貸付対応専門の職員を配置し、密にならないようてきぱきと捌いていました。同居施設故の、予想外の来庁者です。
子ども発達相談センターに電話したらどうなるのか
「子ども」の名称が示すように、対象年齢は18歳未満までですが、利用者の7割が未就学児とのこと。特に、昨年4月の開設時はコロナで外出自粛を余儀なくされた時期。子どもたちは幼稚園や保育所に行けないばかりでなく、公園で遊ぶことさえ憚られる時期でした。これまでの生活環境が根底から崩れ、親も子も自宅に籠るしかなく、大きなストレスに晒されていました。
こうしたことから、開設後のセンターはSOSを求める電話が鳴りやまず、予想を超える多忙さだったそうです。
相談の流れ
最初に家庭児童相談員が対応し、困っていることや心配ごとなど丁寧にヒアリングします。開設当初は5名体制でしたが、相談件数が増えていることから、今年4月からは2名増員し、7名の家庭児童相談員で対応しています。
ヒアリングののち、希望があれば面談や来所相談となります。プライバシーが守られる環境で相談できるよう、センター内には複数の相談室が設けられています。。。が、相談室の多くには窓がない状況。設計時には、コロナ発生が誰しも予想できず、換気(窓)よりもプライバシーを優先すべきという発想からの設計だったのです。空気清浄機など設置してはおりますが、当初想定していたように、全相談室をフル活用というわけにはいかないようです。
相談室は全部で6つ。うち窓があるのは3室↓
このような事情もあり、現在、初回の電話から面談に至るまでの期間は約1~2か月ほど。保護者が仕事の都合などで、面談曜日や時間帯の指定があったりすると、長い方で3か月待ちの方もいるそうです。
もちろん、面談までの待機期間も保護者とは連絡を取り合い、即時対応が必要な兆候が見られた場合には、保健師が自宅に出向くなど臨機応変に対応しています。
どんな支援プログラムがあるのか
面談時にお子さんの様子を直接確認しながら、その後の支援の方向性を見極めていきます。多くの方は「親子教室」に通うようです。年齢に応じ(2歳児・3歳児・4-5歳児)構成されている親子教室は、グループ単位で行います。プレイルームというお部屋で専門保育士らと親子でさまざまな遊びしながら、臨床心理士が行動観察をし、適切な対応についてアドバイスしていきます。以前は2週間に1回、全7回を1タームとして、2歳児クラスでは最大12組受け入れていましたが、コロナ禍により、こちらも現在規模を縮小し(12組→4組、全7回→全4回)継続しています。
親子教室が終わった後のプレイルーム↓
消毒作業に余念がありません。
プレイルームの遊具も、ただ漫然と置かれているわけではなく、その日来所する子供の年齢や特徴によって、遊具や配置を組み替えるのだそうです。
教室を修了した方は、必要であれば引き続き、電話や面談を通してセンターと連携しながら子育てすることもできます。なお、修了者の3分の1程度は療育を検討する傾向がみられるそうです。
療育へ進むか?施設はどう選ぶか?
親子教室を終えて、療育に進んだ方が良いのか考えたとき、センターの職員は「こうしなさい」という断定的な決めつけはしません。あくまで、保護者が主体性を持って選択できる判断材料を提示するお手伝い、というイメージです。どうするかを決めるのは、最終的には保護者の意向によるところが大きいです。幼稚園や保育所の先生からの助言や(※1)、法定健診で指摘されセンターに来所する方も多いため、どういう入口で来たかによっても療育へ進むか否かの判断は異なるようでした。(※1~市内の幼稚園保育園のうち60-70箇所を年2回、巡回支援しています)
センターの事務所内には、児童発達支援事業所と放課後等デイサービスの市内マップが掲示されていました。地区によって色違いのシールが貼ってあり、自宅から通わせやすい距離にあるかなど、一目で分かるような掲示方法です。各事業所の案内パンフもあり、保護者もここから目ぼしい施設を選び、見学をしたり体験入所をしたりして施設を選びます。私もいくつかの事業所を見学したことがありますが、施設によって考え方や方針はさまざまなので、実際によく現場を見て決定されることをおすすめします。
さて、療育施設を定期的に利用するためには通所給付費を受けるための受給者資格証が必要となるのですが、ここも少しハードルがあると保護者の方から指摘されることがあります。これまで、子ども発達相談センターの職員と一緒に連携しながらやってきたのに、療育の分野になると所轄が「障害福祉課」となるのです。
広く「福祉」ですから、対象は子供だけでなく成人も高齢者も含まれます。これまで子育てというフィールドで相談し、職員と意思疎通をしてきただけに、いきなり所掌部署の色が変わることに戸惑う方もいらっしゃるようです。また「障害福祉課」という名称から、「うちの子は障害を持った子として生きていかなきゃならないんだ」とメンタル面で気落ちするという声も聴きます。当事者から言われなければ、なかなか気づかない指摘でした。
さまざまな専門スタッフが連携
センターでは言語聴覚士も連携支援しています。言葉が遅い、うまく発語できないなど言葉の分野は、親にとって他の子と比較しやすいだけに非常に気になるものです。主に吃音を気にして相談される方が多いそうですが、特に未就学児のうちは言語トレーニングをするには難しい年齢のため、歯磨きしながら大きく口をあけたり、口を動かしながらの遊びを取り入れることでうまく発語を促すそうです。
また、児童発達分野に詳しい小児科の先生を囲んでの座談会がなかなか好評とのこと。センターに通う方を対象とした1か月2回程度のクローズドな座談会なのですが、医者にマンツーマンで聞くほどかなと迷うことでも、グループだったら他の人もいるし、場が持つし、その時の流れで聞きやすいのが良いらしい。そんなに萎縮しなくいいですよ~と言ってあげたいです😢
小児領域における作業療法士の可能性がすごい
作業療法士といえば、高齢者施設でお年寄りのリハビリを支援する人という認識でしたし、子供の分野で作業療法士がいったいどんなことをするのか、とても謎でした。実際に、現在、作業療法士の9割が高齢者施設で働いているとのこと。まさに私が抱いているイメージです。
作業療法士はどんなことをするのか?
一言で表すと「子供の身体感覚に基づいたアドバイスと支援」でしょうか。たとえば、「子供がとにかく落ち着きなく、椅子に座ってきちんとご飯を食べてくれない」というよくある(我が家も💦)事例。臨床心理士だと、感情やメンタル面主体でアドバイスするのだそうですが(できたときには目一杯ほめてあげるといった自発的な動機付けにつながるやり方を、など)、作業療法士目線だと、「一日の活動量が足りていない=運動不足なのでは?ご飯の前に体をたくさん動かしエネルギーを発散させる。そうすると、お腹も空いてるので、きちんと座ってご飯を食べてくれますよ」というアドバイスをするイメージです(自分的に解釈したかなり素人的説明ですが)
あとは、お箸やスプーンをうまく握れない、鉛筆をうまく持って文字が書けない、靴紐を結べないetc・・・など。
鉛筆といえば、先日、こんなニュースを見つけました。
鉛筆の主流がHBから2Bに、背景には小学生の握力低下が
子どもの「筆圧」が低下 原因は「手を使わない生活」
硬筆の授業用に一部メーカーでは「10B」も用意されているというが、2Bが主流となった背景には「筆圧」が関係しているという
足立区立足立小学校・角田成隆校長:
やはり子どもたちの筆圧が弱くなっているので、はっきりとした文字を書けるように以前よりも濃い鉛筆を指定しているように思います。
子どもの学習や生活について研究している、目白大学の谷田貝名誉教授によると、筆圧の弱さには握力低下が影響しているという。
目白大学・谷田貝公昭名誉教授:手を使わない生活にどっぷりつかった結果だと思います。手は立派な感覚器でもある。運動器としての手が磨かれていない。
国の体力運動能力調査によると、11歳男女の握力は1990年で男21.61kg、女19.97kgだったのに対し、2019年は男19.43kg、女19.23kgと男女ともに大きく低下している。
最近の子供たちで、スマホやタブレット機器に触れない子はいないのではないでしょうか。自戒を込めて告白すると、特に昨年のコロナによる休校休園期間中、つい子供にタブレットを与えて動画見せ放題という生活をやってしまいました。言い訳がましいのですが、子供と24時間先が見えない自宅軟禁生活…付きっきりで遊ぶには親も限界でした。そんなものがない時代だったら、おそらく色鉛筆持ってお絵描きしたり、文字の練習をしたんでしょうね。
液晶画面を指先でなぞる動きはしても、確かに「持つ」「掴む」という手全体を使った動きは減っているような気がします。しかも、これからは子供にも1人1台タブレット支給という時代到来ですからね。運動器官としての子供たちの「手」は、これからも退化する一方なのでしょうか。
小児領域の作業療法士は、これまでは障害を持つ子供たちに対してのリハビリ支援がメインでした。しかし、今後は、障害の有無にかかわらず、子供たちの日常生活支援の一環として作業療法士がさらに活躍する日が来るのかもしれません。そういった意味で、作業療法士のこれからの役割に大きな可能性を感じました。
お子さんの様子が気になるときは是非
さまざまな部署が同居する川口市子ども発達相談センター、職員手作りのあたたかい飾りつけに迎えられ2階に上がれば、きっと心が少し軽くなるはずです。なかなか電話がつながりにくい時間帯もあるかもしれませんが、気になるときはまずは電話してみてください。
川口市の子供たちが、それぞれの個性を活かして成長していけるよう、私もできる限りの力を尽くして見守っていきたいものです。
川口市子ども発達相談センター
電話 048-259-9048(平日8:30-17:15)
住所 川口市青木3-17-11(川口市役所青木3丁目分室2階)
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