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百人一読(海外文学編つづき)

昨日は新潮の100冊を中心にやったのだが、どうも欧米中心でいけない。まあ、いきなりイスラム圏の文学を出せよと言っても出てこないのだが。そんなときにブックガイド的な本として、岡真理『アラブ、祈りとしての文学 【新装版】』を上げる。こういうブックガイドを十冊ぐらい上げてその中から選ぶというのもいいかもしれない。よく十大小説的なものがあるが、そんなもん自分で選べと思う。例えばトマス・マン『魔の山』やメリヴィルの『白鯨』がいいと言っても初心者には読めないだろう。また『失われた時を求めて』や『源氏物語』もよしあしで、暇な時間がある人はいいが、その時間の分他の小説を読んで、定年後に読むというのもある。十代に勧める読書と定年後に勧める本は違うのである。くだくだ言っても始まらないで、またその話題は別の機会にでも。


31岡真理『アラブ、祈りとしての文学 【新装版】』

アラブ文学というかイスラム世界に目を開かされたというか、最近ではパレスチナ問題で欠かせない批評家となっている。ちょっと難解かもしれないが早い時期にこういう本を読んで世界は欧米中心に動いているのではないと知るべきだ。


32  ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』

岡真理『アラブ、祈りとしての文学 』でも詳細に紹介されているパレスチナ問題を扱った小説。いきなり家を奪われ難民となり、トレーラーの荷台に隠れて亡命する。その途上での困難。炎天下のトレーラーの中の室温は灼熱地獄よりも凄いというか、灼熱地獄化していくのはそこが死地となるからであた。それは今のパレスチナを伝える文学である。

33 『アラビアンナイト』

『アラビアンナイト』は全部読む必要はない。物語の集積であって、むしろその語り口が特異なのだった。物語を止めれば王に殺される状況で夜話をかたるのだった。『源氏物語』も夜話といえば夜話かも知れず共通点はあると思う。中上健次のオリュウノオバは年取ったシェヘラザードとも言えるかもしれない。アニメでもいいかな(手塚治虫のほう?)。


34 紫式部『源氏物語』

『源氏物語』も原文を読もうとすると海外文学のような異世界だった。もっとも最近話題になっているのはウェイリー版の翻訳でイギリスのオリエンタリズムのいいテキストなのかもしれない。これも全部読む必要なないと思う。「夕顔」とか「若紫」とか「明石」とか、いきなり「幻」を読んで光源氏も哀れだなと言ってもいいし、「雲隠」は最高だとのたまうのもいい。時間があるのなら「若菜」で『源氏物語』の凄さを知ってほしい。


35 魯迅『藤野先生』

中国も『三国志』とか面白いけどドラマやマンガでいいかも。『キングダム』はどうなんだろう?日本人好みの英雄物語かもしれない。現代小説で莫言とか残雪は文学通好み。やっぱ入門だったら教科書的な魯迅なのか?この話は太宰が本歌取り『惜別』を書いているので読み比べると面白いかも。


36  チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

韓国文学もハンガンとかファン・ジョンウンが好きなのだが韓国フェミニズムのきかっかけのような本でフェミニズムの本でもあるのかな。映画もあるのでとっつきやすいと思う(フェミニズムはなかなか日本の男には難しいかもしれないが)。


37J.M.クッツェー『マイケル・K 』

今読んでいるクッツェー『サマータイム、青年時代、少年時代──辺境からの三つの〈自伝〉』が面白いのでこれを勧めたいのだが文庫本ではなかった。やはり若い時に手に取りやすいのは文庫本だと思うし、文庫本の海外文学もすぐに絶版になるので買えるときに買っておいた方がいい。この岩波文庫もいつ絶版になるかわからない。まあ、岩波に入っているのはたいてい名作だと思ってしまうが。他の文庫で『夷狄を待ちながら』もあるけどこれはカフカの亜流という感じだった。


38 デュラス『愛人 ラマン』

デュラスも読めるうちに読んだほうがいい作家である。これは映画化されたので絶版はないと思ったが電子書籍しかないようだ。これは植民地文学でインドシナのヨーロッパ人を描いているのだが、身体的には金持ちアジア人の男の愛人しての錯綜した関係性を描いている。デュラスの小説では読みやすい入門書タイプだろう。


39 ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』

イギリスの辺境から。ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』が岩波文庫になっていた。これは買いでしょう。私は古本屋で新潮文庫で買って読んだ記憶が。


40 シェイクスピア『ハムレット』

シェイクスピアも『マクベス』の方が好きなのだが、『ハムレット』は日本でも太宰や大岡昇平が小説にしていた。論じられるのも『ハムレット』の方が多いかな。いろいろ関連作品もあるようだし。戯曲なんで芝居や映画を見たほうがいいかも。

また『ドン・キホーテ』が抜けた。


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