アメリカに見捨てられるプランも立てないと
『永続敗戦論 戦後日本の核心』 白井聡(講談社+α文庫– 2016)
米国に対する敗戦を骨の髄まで内面化する対米無限従属と、一方でアジアに対する敗戦否認。
戦後から内在し、今日顕在化してきた現代日本のねじれた姿を「永続敗戦レジーム」と喝破し、各界に衝撃を与えた注目書、待望の文庫化。
加藤典洋『敗戦後論』を論を受けて、日本の敗戦が米軍(GHQ)の従属国となることで天皇制を維持していた。それは連合軍の「無条件降伏」を受け入れたものだが日本統治のために天皇制は維持されてきた。
そのことで日本の主権は占領国によっても変えられなかったとする「主権(天皇制)の維持」が政権に勘違いを起こして「敗戦」を「終戦(天皇の玉音放送によって終わらせたと国民に思わせる)」と言い直す。永続的に敗戦などしていないという勢力が対米従属のまま「神州不敗」神話を信じてしまい、米軍の傘の中で経済発展を遂げてきた。
しかしそれが通用しなくなって来ているのは、冷戦構造の崩壊によって世界勢力の変化。アメリカの衰退は日本を無条件に同盟国とみなさない(軍事費の増大)。アジアで台頭してきた中国を無視できない情勢になっている(中国を巡っての問題が顕著に出てきた)。
安保条約は、中国・ソ連を外してアメリカとの条約にしか過ぎず戦後補償の問題はまだ未解決なのだが、日本政府は解決済みとする。日本の戦後レジームは自国主義にしか過ぎず領土問題なども解決できないでいる。それは対米従属であったアメリカ頼りの外交も通じなくなっているからだ。このまま日本が敗戦を認めずいつまでもアメリカ従属のままでは世界から取り残されアメリカと共に没落していく。
その徴候が日本政治の精神的堕落と腐敗という現実、敗戦を認めない「恥知らず天皇制」を受け入れたまま、アメリカの従属を受け入れるしかないのが現実だ。それは福島原発事故などを見ても明らかのように崩壊している(米軍に対しては緊急事態を通告したが日本国民には知らされなかった)。
領土問題にしても北方領土はロシアの思惑通りになるし(安倍・プーチン会談で4島返還どころか2島返還もままならぬ)、棚上げの尖閣諸島問題を明らかにしたのは中国の強行策を引き出してしまった。竹島問題は、尖閣諸島と逆の立場で日本は領土問題はないとすることで、2つの領土問題はダブルスタンダードとなってしまい、中国とロシアの主張を受け入れざる得なくなっている。
かかる期待は米軍のアジア支配という中に組み込まれることだが、世界からは日本は属国としてしか見られず(アメリカを交渉相手すれば日本は文句を言えない。アメリカは自国の国益だけが問題)、北朝鮮問題も遅れを取った。自主外交が出来ないからますます世界から取り残され、アメリカ従属は続く。このまま、アメリカの従属を続けていてもいつかは見捨てられるだろう。
アメリカの保守勢力に肩入れしたために反米反発が起きたのはイランやビン・ラディンの例があるが、日本ではそこまでの反米はなり得ない(敗戦の記憶がある)のアメリカから捨てられるまでこの状態が続くのだ。結果アメリカの都合のいいようにされていく(現にグローバル化によって日本の関税は引き下げられ、米・牛肉などの輸入品を入れざる得ない)。そのためにますます日本は負債国家(防衛費の増大・経済の立ち遅れ)になっている。
憲法9条が米軍の傘の元で平和・繁栄を続けてきたがそれも限界が来ている。だから憲法を変えろというのではないけど政府はその方向に進んでいく。
関連書籍『国体論 菊と星条旗』白井聡
参考書籍『戦後入門』加藤典洋