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沈黙の音

ブランデーを注ぐ音

好きなの そのひとは言った

ブランデーは旦那への贈り物

二人の間には共通の話題もなかった


酒を飲むことだけが危険な香り

セックスは嫌なの そのひとは言った

邪な気持ちを抱いていたが安全パイ

沈黙する度胸もなかった

それほど酔うこともなく虚しい会話の日々

ブランデーは減っていくが酔えない夜

犬小屋に娘が閉じ込められていた

それを知ったのは母の葬儀である


そのひととは何もなかった

ブランデーの味も覚えていない

もっと安い酒で一人で飲むジャズ喫茶

しこたま酔っ払っていた日々


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