十一月の賊軍が士になり
昨日は雨予報だったのだが雨は降らずに外に出る。しかし月曜日だと忘れて町田の図書館に行ってしまった。二冊返却して、今日も一冊読み終えたからこれも返却できる。ただ横浜の図書館で十冊上限まで借りているので、そっちを読むのが大変だった。今日は短歌から。昨日のお題。「月曜日」から
朝一はこんなもん。それでネットカフェで読書。ネットカフェ読書が一番読書できる。聴き逃しで「ジャズ・トゥナイト」。ECM特集だった。一曲目がヤン・ガルバレクという選曲。そのあとデレク・ベイリーもかかったりしてかなりディープな世界だった。ECMはちょうどその頃かその後ぐらいにジャズを聴き始めたので思い出深いアルバムもある。やっぱ一曲目はマル・ウォルドロン『フリー・アット・ラスト』を聴きたかった。
それとキース・ジャレットだったら『残氓』。そうだヤン・ガルバレクもキースのヨーロピアン・カルテットだった。『マイ・ソング』がお勧め。
アート・アンサンブル・オブ・シカゴを聴きたかった。
ECMはジャズだけではなくアファナシエフのシューベルトとか現代音楽はあまり聞かないけど先ほど上げたキースやヤン・ガルバレクもジャズを超えたジャンルフリーで演奏していた。ヤン・ガルバレクが入ったものだとテオ・アンゲロプロス監督映画のサウンドトラックを作曲したエレニ・カラインドルの作品集がいい。
ECMだと話は尽きないな。録音がとにかく素晴らしい。映画も公開されていた。
見に行きたくなってしまう。この時間寒すぎるな。一時退散。
トイレが近くて起きる。陽が昇るとだいぶ温かくなる。肩が痛い。昨日は俳句を三句投稿したのだが、句会もあと二日だった。今日中に五句揃えなければいけないな。今日は引きこもりか。
映画は『十一人の賊軍』を見た。戊辰戦争の時代で各藩は解体されて官軍に吸収されようとしている。その中で藩は生き残りをかけてあれこれ策略を練るのだが、政府に反対する徳川寄りの藩はいけいけムードで弱小新発田藩を戦闘に加わらせ先鋒役にしようとするのだが、そこの若殿は徳川寄りの藩を信じていない。そこで老中(阿部サダヲ)が官軍と戦うふりをして、時期を見て官軍に寝返ろうとする。そこの侵入経路である砦を守る武士たちに罪人を使って前線で時間稼ぎするように命じるのだが、武士に女房が襲われその武士を刺殺した男はそんな話を信じていない。ただ罪人の中では大勢が戦を条件に勝ったあとは自由になれるというので賊軍として参加する。
長い説明だが、黒澤明監督『七人の侍』を踏まえていると思う。脚本が『仁義なき戦い』の脚本家だったが没にされた脚本を白石和彌監督がリメイクして、現代に通じる映画にしたようなのだが。
武士が武士らしくなく、罪人が武士のように戦うのはそれぞれの目的があるからだった。ただその部分で罪人が不死身のような強さを発揮するのだが、それは罪人故に社会に反発した優秀な者がいるという設定なのだが、無理すぎる脚本はやはり『仁義なき戦い』の方向へ成りつつあるのか。そこがバイオレンスでスプラッター趣味の白石和彌監督に白羽が立ったわけではないだろうが、ちょっと白石和彌監督のスプラッター趣味も食指ぎみというか、オールスターキャストみたいに言われるが、そこまでオールキャストなのかと思う。それは時代もあるが、NHK大河の方がまだオールキャストのように感じる。確かに殺陣のシーンは迫力があるのだが、不死身過ぎる主役たちがそこまで強いのかは最近のヒーロー映画と同じで、なかなか死なない。死ぬ時は一人ひとりのストーリーが組み込まれており感動を煽る。死ぬことで犠牲神のようになるスタイルがもう食指ぎみだった。
「十一人の賊軍」というタイトルだが縦書きにすると十一が士になるのだ。そういうことだと思う。賊軍の方が侍らしく、侍は策略を練ってずる賢く立ち回る。そういう社会に活を入れるものだと思うが、弱者の視点が隠れてしまった。この中で女と子供(知恵遅れの弟分)がだけが生き残るのだが結局は英雄たちの戦争映画になって、その部分の弱さや連帯が見えてこないのだ。まだ黒澤脚本の映画の方が農地を守るために武士(浪人)を金で買うという逆転の発想の方が見事で、そのストーリーを超えるものではなかった。賊軍のアナーキーな戦いがそれぞれ一つにまとまって官軍と対抗出来るようになると思うのだが爆弾とか安易に手に入りすぎだった。そこは過激派の乗りなのかな。当時だったら受けたかもしれないが、今はもっと勝てる戦略が欲しいと思ってしまう。それは最初から官軍の近代兵器の前に無力感が強いからなのだ。蝦夷侵略のアイヌ映画ではその力量の差が悲劇となっていたのだ。結局ラストのハッピーエンドも武士の世が無事に終わって万歳ということなのだが。
このような安易なハッピーエンドが多すぎる。むろんその影で老中の娘が自害するのだが、そこもあまり悲劇的に感動を呼ばないのは庶民の街が祭りムードだからだろう。大政奉還の争いは庶民には関係ないという社会なのだ。
今日の一句。