古い映画には聖霊がいる
『オマージュ』(2021/韓国)監督シン・スウォン 出演イ・ジョンウン/クォン・ヘヒョ/タン・ジュンサン
丸谷才一『輝く日の宮』を読んでいたら、霊にも怨霊タイプと人を助ける善霊タイプがあり、後者を御霊と呼ぶと書いてありキリスト教では聖霊というようである。古い銀幕の映画なんかには、そういう聖霊が宿るような映画だった。
売れない女性監督が韓国最初の女性監督であるフィルムの欠落部分を探すという映画なのだが、その中で女性監督が映画を取り続けようと決意する映画であり、それはすべての女性監督に捧げる「オマージュ」作品になっていると思った。
まあストーリー的にはご都合主義的なところもあるのだがそういうファンタジー的要素と映画の過去を巡る話でもあり、良かった。それは映像美という、例えば廃墟になろうとしている映画館のスクリーンに映し出される外の様子とか、その辺の処理の仕方が詩的映像になっている。
また同じアパートでの煉炭自殺した女性の事件は、日本でもバス停で殺されたホームレスを連想させるような現実社会での厳しさも描いて、あの頃の女性監督である孤独感も現実社会の問題として共有している。
主演の女性監督を演じたイ・ジョンウンは、『パラサイト』の母親役というより、韓国TVドラマ『未成年裁判』の検事長役の印象が強かったので、この映画に出演したのかなとも思える。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?