中沢新一のおじさんの「日本の歴史」
『日本の歴史をよみなおす(全)』網野善彦(ちくま学芸文庫)
中世日本史。ロングセラーで著者の網野善彦は中沢新一の叔父さん。農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が多様な日本人について語った歴史とは?日本社会のイメージを根本から問い直す。
続篇と合わせて二部構成。NHK大河ドラマ『平清盛』で清盛の青年期に兎丸と呼ばれる。その「~丸」という童名は非人であることが多く、当時の社会ではただ差別される者でもなく、童子が聖俗の境界的な存在とみなされて「~丸」となった。
だから人以外にも船や刀にも付けられたり。そういえば『どろろ』の主人公が百鬼丸だった。親鸞の「悪人」というのはどうもそういう非人だったみたいで、元々は貴族社会の中に従属していた職業であることもあった。あそびめなんかの遊女とか芸能に関わってる者が取り入れらたような。それが差別となる。
そういう差別が表れてくるのが鎌倉後期ぐらいから、『一遍上人絵』と差別的な『天狗草紙』の絵の違い。ちょうどその頃(そのちょっと前か)に国家の体制が完成しつつあった。もともと西日本と東日本では差別の形態が違っていた。
それと日本という呼び名は「日の本」ということで方角「東」を表していた。民族名としては「ヤマト」なんだよな。つまり「日本」は中国から見た位置をいい、そこに「ヤマト王権」が存在した。けれどもまだ支配の及ばない地域もあったわけで、最初から大和民族が日本を支配していたわけではない。
日本という国家が天皇と結びつくのは中国大陸の律令制(骨格は儒教)を取り入れてから。稲作が関係しているのだ(天皇の行事に稲作が多いのはの農耕民族である支配者だから)。農業が職業的に上位にくるからくりというか、獣を扱う者が下に置かれる差別とか。神話の成立の過程で改変してきたことだった。熊襲とか東夷から狩猟から武器を奪い自然を田畑に変える。
(2012/09/29)