日本詩歌の分析としては面白い本
『日本詩歌の伝統: 七と五の詩学』川本皓嗣
日本の短詩(和歌・俳句)などの音韻論の分析が面白く日本人の根底にあるリズムは四拍子というところから詩歌を分析していく。さらにそれを強弱まで分析しようとすると漢字は一字ごとに強弱があり、日本語は最初の文字に強弱を読み取ることは出来るが、それ以降は平音になっていくので漢詩のようなメリハリのある歌は作れないということだった(また地方によってもアクセントが違う)。日本語ラップの難しさはこんなところにもあるのかと思った。解釈学なので、当てはまると納得できるのだが、理解が遠いものもある。
例えば俳句を二章一文と見立て基底部(芭蕉の俳句の面白さが現れるところ)を〈〉でくくり、それを分析していくのだが、納得させられる部分もあるが次々にパターンが出てくるとその分類は意味があるのか?と思ってしまう。拡張と矛盾だけで芭蕉の句を判断するには、わび・さびという概念は難しいような。
秋の夕日の日本人のイメージが詩によって変化しているというのは、日本人の精神の中だけにそういう感情があるわけではなく、作品による(言霊みたいな)ものかと納得したり、学者の分析学というような本。
例えばイスラエルでは秋はまだ暑いものだがイスラエルの秋の流行歌はヨーロッパの秋のイメージで歌われ秋のイメージが落葉の風景と共にある。それはオーストラリアでクリスマスは真逆の夏の時期だが、クリスマスはサンタは赤い服を着てトナカイに乗っているイメージなのだ。そうしたものは日本でも漢詩の影響から悲秋がイメージされて(清少納言『枕草子』はその影響だという)、やがて秋の夕日は「三夕」の歌のように僧侶たちの無常観として印象づけられるのである。