好色というより恋の革命家五人娘(おばさんもいる)
『新版 好色五人女 現代語訳付き 』井原 西鶴 , (翻訳)谷脇 理史 (角川ソフィア文庫)
坂本冬美の「夜桜お七」の原作の「八百屋お七(巻4 恋草からげし八百屋物語)」が入っていると知って読んでみた。
江戸時代の町人文化、季節や生活が描かれていて興味深い。西鶴は俳諧師でもあったらしく、一夜に千句も作った、インスピレーションの人だったという。俳句とか短歌をやる人は季語や季節の暦中心で書かれて(巻3 中段に見る暦屋物語はその暦屋の話だった)、江戸時代の生活を知るにも良いテキストだ。
また業平とか小町とかの例えで美人を表現する。お七だったら業平の時代に生まれていたら見逃さなかったくらいの美人とか。ただお七が放火するのは15,6の中学生ぐらいだから恋に一途で善悪を返り見れない年頃なのだった。そこが魅力的でもあり悲劇のヒロインになっているのだが、逮捕されても罪を償わず凛々しい姿が悲劇のヒロインとして人気だったのかも。火刑されるのだが恋の革命家ジャンヌ・ダルクみたいな扱われ方。
たいてい女の淫乱という風に描かれているが。男も好き物という感じか。江戸の時代の方がいまより性的には自由だったということもあるらいが。男色は当たり前のようにあったようで最後は男色の男に恋した女の話。その話だけハッピーエンドになっている。面白いのは蔵の財宝が神話に出てくるものばかりで面白い。ファンタンジー要素もある。
三番目のおさんは好き物の男を懲らしめてやろとした女房が関係を持ってしまい、それでも男を懲らしめるために心中しようと逃げているうちにいい仲になってしまう滑稽譚。それで市中引き回しの刑になるのだが、後で悲劇のヒロインになるのだは「八百屋お七」と同じパターンか。悲劇的なヒロインが美人だからなのか、そういう行為が美人的なのか、結構魅力的なヒロインには描かれている(男性視線で)。
サブタイトルが短歌になっていたり、古文も『源氏物語』とかよりは分かりやすいと思う。ただ五七調のリズムがいいと返ってイメージは掴み難いかもしれない。繰り返し読んで語り聞かせる物語だったのだろう。翻訳の方は絵入りなのもイメージを掴みやすいかも。
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