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文学は情報ではなく世界だ!

『この30年の小説、ぜんぶ ; 読んでしゃべって社会が見えた』(著)高橋源一郎 , 斎藤美奈子 (河出新書)

2011年から令和まで、計6回おこなわれた本をめぐる対話から、日本社会が浮かび上がる。思いもよらない解釈や、意外な作品との繋がりなど、驚きと発見に満ちた、白熱の対談集!
目次
はじめに
第一章 震災で小説が読めなくなった
ブック・オブ・ザ・イヤー2011
生存にかかわるリアリズムは最強だ
『マザーズ』金原ひとみ/『苦役列車』西村賢太/『ニコニコ時給800円』海猫沢めろん
謎の「いい女」小説はちょっと前衛
『きことわ』朝吹真理子/『私のいない高校』青木淳悟/『いい女vs.いい女』木下古栗/『これはペンです』円城塔
緊急時、ヒトはクマやウマになる
『馬たちよ、それでも光は無垢で』古川日出男/『雪の練習生』多和田葉子/『神様2011』川上弘美
君は3・11を見こしていたのか
『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』宮沢章夫/『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』陣野俊史/『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』開沼博/『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』レベッカ・ソルニット 高月園子訳
第二章 父よ、あなたはどこに消えた!
ブック・オブ・ザ・イヤー2012
原発事故は終わっていない
『阿武隈共和国独立宣言』村雲司/『むかし原発 いま炭鉱』熊谷博子/『線量計と機関銃』片山杜秀
母と娘の確執が文学になるとき
『冥土めぐり』鹿島田真希/『東京プリズン』赤坂真理/『母の遺産 新聞小説』水村美苗
ここにいたのか、落ちこぼれ男たち
『K』三木卓/『大黒島』三輪太郎/『その日東京駅五時二十五分発』西川美和
嵐の中の、もうひとつの避難所
『燃焼のための習作』堀江敏幸/『ウエストウイング』津村記久子/『わたしがいなかった街で』柴崎友香
多色刷りの性と個性が未来を拓く
『ジェントルマン』山田詠美/『奇貨』松浦理英子
第三章 近代文学が自信をなくしてる
ブック・オブ・ザ・イヤー2013
母と娘の第二章はけっこう不気味
『爪と目』藤野可織/『abさんご』黒田夏子/『なめらかで熱くて甘苦しくて』川上弘美
巨匠にとって「晩年の様式」とは
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹/『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』大江健三郎
マルクスも驚く「労働疎外」のいま
『工場』小山田浩子/『スタッキング可能』松田青子
作家が考える震災前と震災後
『想像ラジオ』いとうせいこう/『初夏の色』橋本治
わけがわからない「大作」の中で起きていること
『南無ロックンロール二十一部経』古川日出男/『未明の闘争』保坂和志
青春はあんまりだ
『青春と変態』会田誠/『永山則夫 封印された鑑定記録』堀川惠子/『世界泥棒』桜井晴也
第四章 そしてみんな動物になった! ?
ブック・オブ・ザ・イヤー2014
ステキな彼女に洗脳されて
『死にたくなったら電話して』李龍徳/『吾輩ハ猫ニナル』横山悠太
家こそラビリンス
『穴』小山田浩子/『春の庭』柴崎友香
21世紀の私小説は社会批判に向かう
『33年後のなんとなく、クリスタル』田中康夫/『未闘病記 膠原病、「混合性結合組織病」の』笙野頼子/『知的生き方教室』中原昌也
近代の末路を描く「核文学」
『震災後文学論 あたらしい日本文学のために』木村朗子/『東京自叙伝』奥泉光/『アトミック・ボックス』池澤夏樹/『聖地Cs』木村友祐
保存された記憶、または90歳の地図
『徘徊タクシー』坂口恭平/『ラヴ・レター』小島信夫/『夢十夜 双面神ヤヌスの谷崎・三島変化』宇能鴻一郎
第五章 文学のOSが変わった
平成の小説を振り返る(2019)
下り坂の30年
今から思うと平成を予言していた
『タイムスリップ・コンビナート』+『なにもしてない』笙野頼子/『親指Pの修業時代』+『犬身』松浦理恵子/『OUT』桐野夏生
プロレタリア文学とプレカリアート文学
『中原昌也 作業日誌2004→2007』中原昌也/『ポトスライムの舟』津村記久子
異化される「私」
『インストール』綿矢りさ/『コンビニ人間』村田沙耶香/『スタッキング可能』松田青子/『野ブタ。をプロデュース』白岩玄
地方語と翻訳語の復権
『先端で、さすわさされるわそらええわ』川上未映子/『告白』+『パンク侍、斬られて候』町田康/『イサの氾濫』木村友祐/『献灯使』多和田葉子/『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男
相対化される昭和
『ピストルズ』阿部和重/『東京プリズン』赤坂真理/『巡礼』+『草薙の剣』橋本治/『あ・じゃ・ぱん』+『ららら科學の子』矢作俊彦/『残光』+『うるわしき日々』小島信夫
日常のなかの戦争
『バトル・ロワイアル』高見広春/『阿修羅ガール』舞城王太郎/『虐殺器官』伊藤計劃/『となり町戦争』三崎亜記/『わたしたちに許された特別な時間の終わり』岡田利規
当事者として書くこと
『バナールな現象』+『雪の階』奥泉光/『神様2011』川上弘美
第六章 コロナ禍がやってきた
令和の小説を読む(2021)
セクシュアリティをめぐって
『オーバーヒート』千葉雅也/『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰
海外に渡った女性たちの選択
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』+『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』ブレイディみかこ/『道行きや』伊藤比呂美
SNSが身体化した社会で
『かか』宇佐見りん
世界に羽ばたく日本文学
『夏物語』川上未映子/『献灯使』多和田葉子/『密やかな結晶』小川洋子/『JR上野駅公園口』柳美里/『コンビニ人間』村田沙耶香/『おばちゃんたちのいるところ』松田青子
過去の感染症文学を読む
『ペスト』カミュ
コロナ文学は焦って書かなくてもいい
『ぺストの記憶』デフォー/『感染症文学論序説 文豪たちはいかに書いたか』石井正己
コロナ禍を描く日本文学最前線
『旅する練習』乗代雄介/『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ/『貝に続く場所にて』石沢麻依
記録を残すことの意義
『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』/『コロナ黙示録』海堂尊/『臨床の砦』夏川草介
おわりに
特別収録 ブック・オブ・ザ・イヤー2003~2010 全106作品選書一覧

この二人の書評はけっこう読んでいる。特に高橋源一郎が好きだからだろうか。ここに上げられた本はけっこう読んでいた。ただそれらの本は情報として読んでいたが文学としてはどうだろうと、最近疑問になる。

社会が見えるというか、そういう本を選んでいるがただ文学と情報は違うと思う。社会が知りたいのなら新書やドキュメンタリーの方を読むだろう。一時の話題で情報として文学を読んでも再読に耐えれるかというと話題作はどうでもいいように思える。例えば大江健三郎の小説はここで批判されるけど再読に耐えられると思うのはそういう批評本も出ているからだ。この中で何人そういう作家がいるだろうか?

女性作家というならば韓国文学の方が面白いと感じるのは何故だろう?世界文学性のようなもの。内向的すぎるんだよな、と感じてしまう。それは家父長制が問題なのは、どこの国でも出てくる問題である。ならばあえて日本の小説を読む理由はなんだろうか?と考える。無論文体が好きな作家はあまり社会性とか関係なく読んでいると思う。社会性に囚われる必要はないのではないか?いや社会性なんて自ずと作家が向き合えば出てくる問題なんだと思う。だから今でも漱石や太宰は読まれ続ける。

たぶん最近のマーケティングの手法かな、ネットで新作をどんどん宣伝するけど、ほんとうに読みたかった本は何冊あるだろうか?ということなのである。数多くの新作本の陰で次々に絶版や廃版となっていく本があるのだ。世界文学なんて流行ではないだろう。例えば最近話題のプラトーノフは、時間が経つとあっという間に読めなくなってしまうと思う。

今読んでいて面白いと感じるバルザック『幻滅』は、詩人がパリに出てニュース記者となり流行作家(記者)となる話だ。その原作映画を見て読みたくなったのだが、全集でしか読めないのだ。これは今のネット社会へと転換期である話としても読める文学だと思うのである。ただ全集で二冊の長編なのだ。そのような世界文学を読みたいと思うのだが情報としての文学も気になっているのが現状だった。だから芥川賞とかは読むようにしているが、最近そういうのも考えるようになったのは、大江健三郎を読むようになったからかな。

例えば『源氏物語』は時代を超越して読まれ続ける。別に社会性とかはあまり関係ないような(無論当時の社会性は興味があるが)。それよりも普遍的な恋愛や老いや死の問題。それらは普遍でそういう問いを発するような『源氏物語』以上の本が現在出ているだろうか?世界文学性というも。それは異国のことが書かれているということではなく、その本が一つの世界だということ。少なくとも再読に耐えうるような本を読みたいと思う。

図書館にいるのは老人ばかりというのは当たっているというか。暇だから行き場が図書館しかないのかもしれない。例えば『源氏物語』とか『失われた時を求めて』なんては暇じゃなきゃ読めないわけだった。文学ってそういうものだと思うのだ。

普通に社会人やっていて本が読めるかというとそんなに読めないと思う。せいぜい芥川賞程度の中編か、新書ぐらいだろうか?新書ブームもそんなところだと思うのだが、文学をじっくり読めるのは学生時代かリタイアした老人ぐらいだろう。そういう人に文学は必要とされている。つまり社会人ではないのだ

社会からはみ出した人にこそ文学は必要で、小説家という人もそんな人たちだろうと思うのだ。今期の芥川賞は『ハンチバック』だと思うが、そういうことだよな。より文学が必要と感じる人に文学は寄り添う。



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