映像は戦争破壊を賛美はしない
「破壊の自然史」【セルゲイ・ロズニツァ《戦争と正義》】(2022/ドイツ=オランダ=リトアニア製作/105)
セルゲイ・ロズニツァはドキュメンタリーを過剰に見せるのではなく、淡々と見せていく。予告編では効果音が入っているがそういうのも一切なし。ただナチスドイツの演奏会のシーンとかでクラシックを演奏する指揮者とオーケストラ、それに平和そうな観客がいるが、その後で空襲のシーンの破壊的凄さと言ったら。ドイツの空襲の酷さはヴォネガットがドレスデンで捕虜として体験したのが描かれているが、日本と違い石作りの教会やらビルが崩れている。その下敷きになった人を救出する作業とか大地震に会ったような酷さだった。そういうのはウクライナとかシリアの空爆の映像で見せられているのだから予想はつくのだが死体が映し出されるのがTVとの違いか?あと家を追い出された人のどこへ行くのかぞろぞろと歩く姿がなんとも言えない。その前に平和を楽しむ市民を見せているから。またヒンデンブルクの空撮とか。
それだけ酷い被害にもかかわらずドイツの将軍っぽい人が視察にくるとみんなアイドルを見るように集まってくるのだ。そんな酷い目にあっているにも関わらず。集団心理というものだろうか。そのあとに報復するぞとヒトラー?か演説していたけど、その後も悲惨な敗戦国の姿となるだけだった。
解説とかなく、ただ映像を流すだけなんだが(「観察映画」というジャンルかもしれない)、戦争の悲惨さはどっちがいいとかではなく伝わってくる。その前に兵器工場で爆弾とか飛行機作りの映像を見せたりして、けっして爆撃機がカッコいい姿では描かれてはいない。編隊を組んで夜の爆撃の凄まじさも暗闇で見えないだけに怖ろしい。