ガザ黙示録
『ガザに地下鉄が走る日』岡真理
岡真理さんはパレスチナの支援活動もしているし、ガザの惨状も経験しているのでパレスチナ関係はもっとも信頼できる人かもしれない。その前に読んだ『アラブ、祈りとしての文学』が良かったので、また手にする。
イスラエルの「漸進的ジェノサイド」は1948年ナクバ(大虐殺)から年々酷くなっており、イスラエルはパレスチナの人間性喪失を狙ったものだという。実際にイスラエル兵に撃たれるために抵抗している者もいるという(イスラム教では自殺を禁じられているが殉死者は手厚くされて家族はハマスの支援をうけるのだ)。そのことが武力に対して武力というイスラム原理主義が広がっていく要因になっているという。
それに対抗する手段として文化的アイデンティティを培っていくこと、タイトルの「ガザに地下鉄が走る日」とは希望の芸術だということだ。地下鉄という平和都市(東京やパリやNY)に当たり前に走る街にしたいという願い。
地下鉄のメタファが脱出したいという願いもあるのかもしれない。それは「銀河鉄道」と同じようなものだろうか?しかし、そうした芸術家も次第に希望が持てなくなっているという(2003年NHKスペシャル「ガザ 封鎖された町で」)。
実際のパレスチナ難民の惨状を文学や映画で紹介して、カナファーニー『太陽の男たち』、ジュネ『シャティーラの四時間』などの批評もわかりやすかった。そうした文学を過去のもの(『アラビアン・ナイト』のように)としないことが必要だと思う。
また日本がイスラエルと軍事協力していることや、在日コリアンの立場がパレスチナに重なるとしてウトロ地区は難民キャンプと同じ感想を持ったというパレスチナ難民を紹介している(彼は役者の道に進んで殺されたのだが)。