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若者たちの次なるステップのために

『少年たちの時代革命』(2021年/香港)【監督】レックス・レン,ラム・サム 【キャスト】ユー・ジーウィン,レイ・プイイー,スン・クワントー,マヤ・ツァン,トン・カーファイ,アイビー・パン,ホー・ワイワー,スン・ツェン,マック・ウィンサム

2019年、香港の街はデモに参加する若者があふれていた。少女YYは、親友のジーユーとゲームセンターで遊び、時にデモに参加する普通の17歳だ。父親は中国で働き、母親は再婚相手とイギリスに渡った。デモに参加して逮捕されたYYとジーユー。「香港は変わらない」と、ジーユーはYYに香港を去ることを告げる。孤独と絶望を抱えたYYは、18歳の誕生日にSNSにメッセージを残し、ひとり香港の街に消える─。
少年ナムは、SNSでYYのメッセージを見つけ、YYを助け出そうとする。恋人のベル、デモ仲間のルイス、バーニズム、そしてソーシャルワーカーのバウ、ドライバーのファイ兄妹、“セーラームーンライダー”兄貴たちも加わり、捜索隊が結成される。助け合いながらも、時にぶつかり合い、YYを探して香港の街を駆け巡る捜索隊たち。
「香港も、YYも救えない─」
それぞれの思いを胸に、YYを探し出そうとするが、誰もYYを見つけ出せないまま、時間だけが過ぎてゆく。
夜が深まり、屋上からひとり香港の街を見下ろしているYYの姿があった─。

香港の雨傘運動の最中にセミ・ドキュメンタリー的に撮られた新人監督の映画。商業映画ではないのでラストのセンチメンタルな感じとか甘いところはあるが、雨傘運動のリアルな映像と十代の若者たちの心情が克明に描かれていると思った。

権力側の弾圧が酷くて民主化運動も下火になりかけた頃に若者の自殺が頻発したという。一部の裕福な家庭の若者は国外に出ることも可能だが、貧しい家庭の中にいる若者がそういうわけにもいかず、命ぎりぎりのところで闘っているのがわかる。しかし警察に逮捕されると将来的な可能性もなく未来が暗澹たるものなのだということも理解できる。

ならばどうするのか?それでも運動を続けていくことと脱落していく者の中で若者を孤立化させないこと。その熱気だけはこの映画がから伝わってくる。こういう映画を残していくことは大事だろうと思うのだ。香港の雨傘運動は組織的にも様々な工夫がなされているが、その上をいく権力側の仕打ちだった。まず親世代との対立もあり、それだけでも運動に参加する若者は孤立化しやすいのだと思う。しかし昨日までゲームセンターでクレーンゲームをやっていた女の子が突然運動に参加するような状態なのだ。それも香港の自由が奪われるからだ。そのことを賢明に伝えようとするドキュメンタリーは何本か観てきたが、このようなドラマ化された映画は初めて観たような気がする。その中で十代の彼らが抱える問題がわかるような気がした。

雨傘運動は失敗だった。それでも次なる戦いのための映画だと思う。彼らの活躍がこれからの香港映画界を牽引していくのだろう。


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