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L・フォン・トリアーの「道」

『イディオッツ』(1998年製作/117分/デンマーク)監督:ラース・フォン・トリアー 出演:ボディル・ヨルゲンセン、イェンス・アルビヌス、アンヌ・ルイーセ・ハシング、トレルス・ルビュー、ニコライ・リー・コース、ヘンリク・プリップ、ルイス・メソネオ

デンマークの鬼才L・フォン・トリアー監督が、仲間とともに提唱した独自の映画ルール〈ドグマ95〉に沿って作り上げ、その挑発的な作風・内容で一躍物議を醸した問題作。
ある日カレンは、立ち寄ったレストランで、口からよだれを垂らして泣き叫ぶ異様な人々の群れと遭遇。店から追い出されそうになる彼らをカレンは必死でかばおうとするが、実はそれは、わざと知的障害者のふりをして挑発的に振る舞い、おつにすました人々の偽善を暴こうと、ストファー率いる活動集団〈イディオッツ〉が実践する、過激な街頭パフォーマンスだった。カレンは次第に彼らに心惹かれ、行動をともにするようになる。

ラース・フォン・トリアー監督はそれほど好きでもないと思っていたがこの映画は良かった。「ドグマ95」のセオリーで作られてていたからかな。「ドクマ95」はゴダールの方法論みたいな感じがする。

ただこの作品はBGMが使われていたが、それはフェリーニの『道』の音楽だった。主演のボディル・ヨルゲンセン演じるカレンは『道』のジェルソミーナであり、独善的なストファーを演じたイェンス・アルビヌスはザンバノであったのだろう。

最初はドキュメンタリーかフィクションか分かりづらかったのだが、映画のリアルさを求めた境界上の作品だったのかもしれない。映画の中に出てくる知的障害者のふりをする仲間たちが映画制作の仲間のような感じのメタフィクション性を帯びた作品なんだろうと思った。

役にのめり込みすぎて、役になりきってしまう者もいるだろう。そのぐらい映画と現実が虚実皮膜の関係であるような不思議な感覚に囚われる映画だった。何よりもカレンが抱えている現実が辛すぎて、彼らの中に希望を見出したのは理解出来る。ただストファーの独善者はどこの世界にもいる感じで、まさにそれがラース・フォン・トリアー監督なんじゃないかと思えるところが自己内省的で面白かったのかもしれない。

実際にデンマークのような福祉国家ならそれを逆手に取ったグループとかありそうな感じだし、どこまでもドキュメンタリータッチなのが面白かった。

そして最後にカレンの厳しい現実を見せることで、カレンの現実世界の行き場のなさをしめしていたと思う。

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