サイコパス・ドラマとしてはいい。
『ロストケア』(2023/ 日本)監督前田哲 出演松山ケンイチ/ 長澤まさみ
映画は面白かった。ただその結論には異論があるのは、昨日見た『聖地には蜘蛛が巣を張る』ではイスラムの正義の為の娼婦殺しが大衆が望むものであっても、ジャーナリストとして厳しい態度で望んでいたからである。
その点を考えると長澤まさみの検事は情に流されすぎ。情に訴える問題でもないのだ。またそういうことを普段から思っているのだったら検事なんてやるなと思ってしまう。法の番人なのだから、その時点で検事失格だろう。
父の介護で看病疲れで父も死を望んだ殺人は嘱託殺人というのは心情的に理解できるが、ケアマネが家族のことに立ち入って殺人を犯すのは、どう考えても行き過ぎだろう。まずそこまで神のような判定を下していいのか疑問がある。
ほとんどそれはイスラムで娼婦が悪だから殺してもいいという理屈と変わらないと思う。迷惑をかける存在であるのは親ならばわかりきっていることだし、それは個人の問題というよりは福祉の問題であるのだ。国が税金を収めている国民の老後のケアするのは当たり前のことなのだ。そこまで自己責任論でやられたらたまらない。だから個人で殺人を犯すのはそうしたことを有耶無耶にするだけでテロと言ってもいいだろう。それこそ相模原障害者施設殺傷事件を連想させる。その犯人との違いはないだろう。
そういう同情論で解決すべき問題ではないのだから、まず基本的なこととして他者に対しての殺人は許されない。それは国でもやっていることだが、本質的にそれも許されないと思う。その部分では犯人の言い分は正しいのだが国がやっているからと言って個人がやっていいはずはないのだ。「必殺仕事人」でもあるまいし。その部分で情に訴えてしまうとファンタジーの世界になってしまう。それは親を殺されたシングルマザーに新しい彼氏が出来て子供とも平和に暮らせるというお花畑ラストが映画の問題点を濁しているように感じた
そこでも相手の男がどういう男かわからないので一時の恋で判断することは出来ないだろう。もっと悲惨になるかもしれない。シングルマザーよりも依存体質が強いのだから。
ただ映画としては、松山ケンイチの演技が上手いのだ。サイコパスぽさを持った男として描かれている。長澤まさみは、コメディエンヌの演技の方がいいけどな(華がある)。こういう情に流される役はうざい感じがする(演技過剰)。
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