青年将校たちは政治力がなかった
『叛乱! 二・二六事件』久保田千太郎 (著), 貝塚ひろし (著)
松本清張『昭和史発掘』のサブテキストして読んだ。漫画だと登場人物のイメージが掴みやすいのでスラスラ読めた。ただ漫画は登場人物をキャラ化するのに善悪という部分が出やすく、例えば安藤大尉は善人的な人物として、政権を握っている者たちは悪人というか卑怯な人物として描かれている。特に首相は暗殺されずに弟が殺されたのだが、それを秘匿して逃げ隠れていたとされる。
誰よりも謎の部分が多いのは天皇である。というかどうして青年将校たちはそこまで天皇を自分たちの味方だと思っていたのだろうか?2.26事件の青年将校は天皇機関説だったのか?国民の窮状を天皇が理解すると思っていたようだが、結局天皇の思うのは国民よりも内閣であったから、革命にならなかったのか?革命というよりクーデターだが。
もやもやが残るのは、戦後処理で天皇が責任を取らなかったのは天皇機関説だったからだと思うのだが、実際は天皇独裁だったということなのか。あまりにも青年将校たちが天皇を信じ過ぎていた。現人神だから政治に左右されないと思ったのだろうが政治的だったということだろうか?昭和天皇は意外にキレもんかもしれない。
三笠宮に期待を寄せたがそれも期待外れだったのか?まともに行き過ぎたのかもしれない。政治的策略があまりにも無さすぎた。
映画『動乱!』で安藤大尉らしき人物を高倉健が演じていたがそんな感じなのかもしれない、実直だけど政治力がない。部下や国民には慕われるのだが、純粋すぎたのだろうか?
新聞記者の石橋?は、誰なんだろう?石橋湛山なのか?と思ったが石橋という記者が実在して、その取材メモからこの漫画のストーリーが出来たようだ。松本清張の『昭和史発掘』と似たような感じだったが。