見出し画像

シン・現代詩レッスン126

四元康祐(翻訳)ディキンソン「詩人について」

『ダンテ、李白に会う 四元康祐翻訳集古典詩篇』からディキンソン「詩人について」。詩人見習いとしては誰を手本にすればいいのか?こういう詩に弱いのである。四元康祐は模範にしたい現代詩人の一人だけど、ディキンソンはノーマークだった。

なんかアメリカの詩人の本で読んだ記憶があった。かつてここでもやっていたではないか?忘れっぽいと言えばそういう性格なのかもしれない。

詩人について

詩人というのは
平凡な意味の世界から
比類なき感覚を引き出してみせる者
玄関先に打ち捨てられた

ディキンソン「詩人について」

「玄関先に打ち捨てられた」というのは主婦感覚ということだろうか。夫がゴミを出すべきなのに忘れていきやがってとか。怒りは詩になる?

名もなき草花から
めくるめく香りを搾り取り
言われてみればまさにその通りだが
言われるまでは思いもつかないことを指し示して

ディキンソン「詩人について」

この辺は俳人でも歌人でも一緒だと思うのだが、それがヒットするのは難しい。だから炎上商法(すでにマーケティングとして実証済み)か?

騙し絵を、解き明かす者
詩人というのは
世界の豊かさを示すことで
わたし達に自らの貧しさを思い出させる者

ディキンソン「詩人について」

このブルジョア詩人め!なのか?お前らは貧しいと読者に向かって言うのか。それもテクニックということなのだろう。

所有から自由で
奪い取ろうにも天衣無縫
自分自身がひとつのおおきな謎として
時間外の外に佇む者だ

ディケンソン「詩人について」

何かを所有しようと思う者はその物に所有されるという禅問答みたいな話で「天衣無縫」は面白い四文字熟語だった。読めないよ。時間外から眺める者というのは、同じ土俵に立たないということか?客観視するんだな。

本当のことを言おう、けれど斜め横から
急がば回れだ
おれたちのウブな歓びに
本当のことの驚きは眩しすぎるから

ディキンソン「詩人について」

「本当のことを言おう」という炎上商法か?こういうのが多いのだ。そんなの一ミリも信じてないが。とりあえず掻き回しておこうとか。ただここはディケンソンよりも四元氏の私情がはいっているのかもしれない。ディキンソンが「おれたち」などと労働者階級の言葉は使わんだろう。

おれは名無しの権兵さ。お前は?
やっぱりゴンベイ?
だったらおれたち同じ穴の狢だな
しーっ!世間に奴らに知られたらまずいよ

ディキンソン「詩人について」

ここらへんの翻訳は鮮やかだな。ゴンベイなんてディキンソンが言うのか?甚平さと答えたくなる。鮫の話だ。

自己表現なんて恥ずかしくって
沼の蛙じゃあるまいし 日永げろげろ
オレが、オレがと
喚き続けていられるかい!

ディケンソン「詩人について」

蛙の歌が好きなのだ。芭蕉とか一茶とか。あとしんぺいも?名前はど忘れ。

ぼくは世界に宛てて手紙を書く
(もっとも返事がきたことはないが)
やさしくも威厳をもって
自然がぼくに教えてくれた単純な事柄について

ディキンソン「詩人について」

最初のニ行は共感しかないな。

狂も極めれば聖
分かる人には分かるはず
マトモも過ぎれば狂気の沙汰だが
生憎それが世間というもの
世間で一番大事なことは 例によって
右へ倣え それが正気のしるし
たてつく奴はあっという間にブラックリスト
あげくは鎖に繋がれる

ディキンソン「詩人について」

お見事だな。ディキンソンは実生活では引きこもりで戸外の世界を眺めていたとか。

炎上商法

おれは名無しの権兵ではなく
名無しの甚平鮫に成りたいのさ。
炎上上等!子無し未来無しの
アナーキー

でも今は見習い名無しの権兵で
好きな物は好きで嫌いな物は嫌いと
好き嫌いが激しいので、
鯛焼屋の店長と喧嘩して
海に飛び込んだのさ

悲しき鯛焼の運命なんてどうでもよく
悲しき街角は誰の歌?

ここまで来たら
サンキュー・ベリー・マッチ
燐寸一本火事の元

やどかりの歌


いいなと思ったら応援しよう!