
伊藤比呂美動物一家のリーダーになる日記
『野犬の仔犬チトー』伊藤比呂美
親を看取った、夫も見送った、子どもたちは独立した。根っこのない寂しさをひしひしと感じる六十代半ば。女ひとり、自然と寄り添い、犬猫と暮らす日々。生まれたり死んだり、咲いたり遊んだりする生きものたちの傍にいると、自分自身の「生きる」もしっかと受け止められる。そんな人生を楽しむ比呂美さんの家に、野犬の仔犬がやって来た。不自由だけど、「生」があふれている。ワンオペ、シニア、多頭飼い。野山から来た怯えたいのちが家族となった三年間の記録。
目次
1 森のお母さんに教わった知恵
2 おれがママの代わりになるよ
3 いいじゃない、しあわせならば
4 うちはうち、よそはよそ
5 たったひとつ救ったところで
6 ここにいるけどここにいない
7 火を見つめるコヨーテのように
8 あの表情を見たくないのだ
9 すべての計画はファンタジー
10 笑って、跳ねて、走って、誘って
11 三大欲求が寂しさを埋める
12 犬猫のいない便利、いる充実
13 生きてることはむだじゃない
14 動植物園に住み込まない?
15 おかあさんだ、生きてたんだ
16 最果ての老後、犬猫どうする?
17 この家には、犬二匹、猫二匹
18 あとは野となれ山となれ
「高橋源一郎の飛ぶ教室」で紹介され図書館に予約したのだった。殺処分になるような人には慣れない野犬の仔犬を動物保護センターから譲り受けて育てた三年間の記録なのだが、伊藤比呂美が野人みたいな人だとおもっていたら、けっこう繊細な神経をしていて、だから宗教的なものにのめり込むのだが。癒やしのために保護犬とかのHPを巡回しているうちに飼ってみたくなったと。人に慣れない野犬の仔犬の育児(人ではなく犬)日記なのだが、日記文学としても面白い。
それは共存という社会でどう仔犬がしつけられていくかということなんだが、先住犬のクレイマー(この犬もアメリカで保護された犬だった)と猫のメイとテイラー(クイーンのメンバーの名前、こっちは譲り猫の兄弟)の中に野犬の仔犬が加わり生活していくのである。動物犬二匹と猫二匹、人間一匹の群れというファミリー。そこにアメリカに置いてきた老犬との涙の再開と引き取ることに。野犬のチトーは新入りは許せないという態度だが、伊藤比呂美がリーダーとなって老犬を守りチトーに吠えるという荒業。そんな家に大学の生徒やらが出入りする。
チトーも生徒に慣れたり慣れなかったりするのだが、リードだけは付けさせない野犬だった。リードを付けないと散歩には行けないのだが、クレイマーと散歩をするとその帰りを待っている。クレイマーは雄なのだが仔犬のチトーの上位にいる犬で野犬でも群れの中で育った仔犬はそういう群れのルールに従う。老犬のこともあるのだが仔犬のチトーのことも飼い主が死ねば取り残される老後問題も考えたりと日々闘いの毎日という動物家族日記。