マルチバース夫人は中国人
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022/アメリカ)監督ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート キャストミシェル・ヨー/キー・ホイ・クァン/ステファニー・スー/ジェイミー・リー・カーティス
タイトルが原題そのもので日本では売る気がないのかなと思った。アカデミー賞を取らなかったら上映させることなく終わった作品だと思う。それがどうしてアカデミー賞なのか?それは多分政治的なものがあるのだろう。
本編はマルチバースが売りだがこれはマーベルとかのヒーローもの映画のパロディとしてだ。現実にはないことなのにそれをパロディとして馬鹿馬鹿しさを笑っている。まあ、「マルチバース夫人」とかでもしとけばわかりやすいのに。
それとカンフーなのは中国系映画の系譜だということだ。アメリカでは中国系は人種差別の対象になるのは、敵味方のわかりやすいヒーロー映画を求める傾向にあって中国は敵にしやすい。そのファミリーを描いて一種の家族映画でもあるのだがミッシェル・ヨー演じる母(エブリン)が父と娘と夫の間に挟まれている状況をもパロディにしていた。そして、もう一つはエブリンが企業家(コインランドリー経営者)でもある点で、アメリカの経済に食い込んでいる状況も見せている。そこでアメリカの税務署に税金を払うという状況から映しているのは、資本主義に則っている市民だということだ。エブリンは移民世代で父親は中国系の老人であるけど自由を求めて夫と共にアメリカにやってきたのだ。
しかしながら第二世代の娘との確執がある。それは娘世代の諸々のこと、例えばファッションとか(タトゥや同性愛)理解出来ないでいる。そこには親世代の反発もあるのだが、もう一つは自由でありたいという若者の傾向、それは親の束縛から逃れたい気持ちで、その葛藤がテーマとなっている。
だいたいアメリカ映画でまとめるのは愛ということなんだが、中国人もアメリカ人も悩みは万国共通で愛で対処すれば平和になれるというような映画だった。中華系というのがテーマとして大きなウェイトを締めているのだ。今まで黒人やラテン系はあったが、そろそろ中国系かなと思ったのか、アカデミー賞ならそういうことだろう。