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ローラースケートよりチャールストン

『ゆきてかへらぬ』(2025年製作/128分/G/日本)監督:根岸吉太郎 出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生

解説・あらすじ
大正時代の京都と東京を舞台に、実在した女優・長谷川泰子と詩人・中原中也、文芸評論家・小林秀雄という男女3人の愛と青春を描いたドラマ。

大正時代の京都。20歳の新進女優・長谷川泰子は、17歳の学生・中原中也と出会う。どこか虚勢を張る2人は互いにひかれあい、一緒に暮らしはじめる。やがて東京に引越した2人の家を、小林秀雄が訪れる。小林は詩人としての中也の才能を誰よりも認めており、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。中也と小林の仲むつまじい様子を目の当たりにした泰子は、才気あふれる創作者たる彼らに置いてけぼりにされたような寂しさを感じる。やがて小林も泰子の魅力と女優としての才能に気づき、後戻りできない複雑で歪な三角関係が始まる。

広瀬すずが長谷川泰子、木戸大聖が中原中也、岡田将生が小林秀雄を演じた。「探偵物語」「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」の名匠・根岸吉太郎監督が16年ぶりに長編映画のメガホンをとり、「ツィゴイネルワイゼン」の田中陽造が脚本を担当。

中原中也と小林秀雄と長谷川泰子の三角関係を描いたのだが、広瀬すずの長谷川泰子だということで注目していたのだが、『阿修羅のごとく』以上の演技ではなかったな。なんか定番の泣きのシーンとベッドシーンがあったけど、驚くような内容でもなかった。チャールストンを踊るシーンがあるのだが、そこが見せ場だと思うのだが、大した踊りではなかった。忙し過ぎるというのもあるかもしれない。三女の蒼井優だったらもっとちゃんと踊っていたと思うぞ。そこが話題になるぐらいの映画でなければ評価は得られないのだと思う。

それはすでに有名な三角関係なので、観客の中にイメージがあるので、それをどう覆していくかにある。長谷川泰子の映画にしたのはいいと思うが、魔性の女のイメージが足りなかったのかもしれない。そこは中原中也と小林秀雄以上の存在感が必要だと思うのだが、単なる三角関係の映画かと思うだけだった。ローラースケートのシーンとか意外性はあったが、三角関係と言えば「欲望の三角形」からセジウィック『男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望―』という本があるのだが、男同士は同質性を求めて異質である女を所有するみたいな理論で、それで収まってしまうという映画でもあったような。

長谷川泰子が女優だったので、その分広瀬すずと近いのかと思ったのだが三文役者的な扱いだった。そこに時代を超越したミューズ的な部分を観たかったのかもしれない。

映画が中原中也寄りになったからかもしれない。確かに中原中也の詩はいいと思うが、ランボーの焼き直しかよと思えた。小林秀雄が中原中也の解釈者どまりだったのも減点要素だったかもしれない。そこにもっとホモフォビアな関係を観たかったのかも。

ホモフォビアではなく母恋いしの映画だったと思うのだが、そこの描き方が中途半端だったのかもしれない。

最近流行りのジェンダー的な映画にするのならそういうことだった。過剰さの欠如みたいなものか(広瀬すずは演技過剰なところがあるが)?予想の範囲内みたいな。富永太郎が出てきたのはいいと思ったが出番が少なすぎる。中原中也は好きな人にはたまらない詩人なのだが、その型破りさがローラースケートのシーンしか観られなかったことか。

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