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「あのこと」としか言えない女性の映画
『あのこと』(2021年/フランス)監督・脚本:オードレイ・ディヴァン 出演:アナマリア・ヴァルトロメイ、サンドリーヌ・ボネール、ルアナ・バイラミ、ケイシー・モッテ・クライン
解説/あらすじ
アンヌの毎日は輝いていた。貧しい労働者階級に生まれたが、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていた。ところが、大切な試験を前に妊娠が発覚し、狼狽する。中絶は違法の60年代フランスで、アンヌはあらゆる解決策に挑むのだが―。
年寄りには刺激が強すぎる。ホラーと言ってもいいぐらい。麻酔なしで中絶、そのあとの処理を自分自身でしなければならないなんて。身体性というのが大きなテーマになっているのだと思う。そこまで女性はハンデがあるのだということだろう。こういうのは性教育できちんとやっておくべきだよな。フェミニズムの番組でもそういうことだった。女性は身体的にハンデがあるのだと。社会で解決していくしかないのだろう。
ノーベル賞作家のアニー・エルノー原作なのだが、活字で読むのと映像で見るのは違うのだろう。アニー・エルノーはフランスの階級社会のあり方が一番の問題なのであって中絶することはそれに付随することだった。主人公の女学生も階級社会に食い込むまでは産めないということだった(階級が違えばシングルマザーになっていたのかも)。子どもを持つことがハンデになる社会。
ただ現実にはアメリカでは中絶禁止のところがあるし、こういう状況の女性は多いと思う。日本でも中絶は出来るけどアフターピルの問題とか。男が責任を追わないことだよな。
一番重要なシーンだと思うのは、親友が自分も初体験をして、それから快楽的にセックスするようになったと告白するシーンがある。それは私であっても不思議ではないという問題提起でもあったのだ。女子寮の他の学生が彼女を避けるのも、男たちと同じなのだ。そのとき(当事者)にならないと問題が見えてこない。