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歌で存在感を示す晶子あっぱれ!

『源氏物語 43 雲隠れ』(翻訳)与謝野晶子( Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。この「雲隠れ」の帖は冒頭の与謝野晶子の詞のみで本文はない。

Amazon紹介文

かきくらす涙か雲かしらんどもひかりみせねばかかぬ一章  晶子

この短歌のみの章。紫式部の方は題名だけで本文はない。もともとなかったものと思われる。『まぼろし』ですでに光源氏は光をうしなったいた。『雲隠』とあるのだから隠れた(出家)したのであろう。アマテラスが岩屋戸に隠れるシーンを連想させる。神話では描いたがそれは、再登場するためでもあった。光源氏は再登場もままならぬ。むしろこの題名だけで十分暗示できるのだ。

 晶子の歌は「ひかりみせねば」が秀逸か?「ば」は強調かな。ひかりは光源氏と灯りの意味(掛詞)だろう。暗闇では何も書くことはできない。音韻的には「カ」の響きかな。

きくらす なみだくもか しらんども ひりみせねば かかぬいっしょう」

そういえば『雲隠れ』だけではなくすべての帖に晶子の歌が付いていたのだが、今まで意識してこなかった。

角田光代版は、光源氏の死を暗示すると書いているが、隠れたのは死よりも行方知らずのほうが浪漫がある。出家はなかったのかもしれないが死だったら壮大な葬儀が行われるはずだ。冠婚葬祭が好きな『源氏物語』だから。後のその繊細が出ているという。

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