みなとのよーこ横浜、横須賀ストーリー
『Yokosuka1953』(2021 年/日本/ 107 分)監督:木川剛志 撮影:木川剛志 上原三由樹 関戸麻友
米軍と日本人女性の子供の悲劇としては森村誠一『人間の証明』が有名だけど、これはドキュメンタリー映画としての感動があった。
横須賀と言えば基地の街で戦後混乱期の状況とかもっと知られていたのかと思ったら今の人にはあまり知られていなかった。映画好きなら『人間の証明』もそうだけど『豚と軍隊』とか今村昌平監督のドキュメンタリー『にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活』が有名だ。
そういう歴史の暗部は学校では教えないし、TVでもめったにやらない(戦争特集ぐらいか)。朝鮮戦争やベトナム戦争での米兵の自暴自棄ぶりは小説にもなっている。ただその陰で女性と子供がもっと悲惨な状況だったというのが誰も語りたがらない。
このドキュメンタリーが凄いのは洋子さんがアメリカに行ったあとの悲惨な体験を語っていることだった。それはいじめ、性的虐待、人種差別という現在の難民の子どもたちが抱える問題だった。日本人はそういうことを経験してきた国なのだ。敗戦を終戦と言い換え、米軍支配を友好国のように言っているが、はっきり言えば敗戦国であり、それからは属国であり、占領下では日本人の人権なんてなかったのである。とくに女性は。一時期台湾や東南アジアで回春ツアーなどあったが、そういうことが敗戦後の日本でもあったのだ。なにより政府が米兵のためにキャバレーを作り売春斡旋していたことはここでも語られていた。
そんな悲惨な状況の中を生きた母と娘のドキュメンタリーだ。母はすでに亡くなっていたのだが日本に来て洋子さんの母を知る人の思い出話や、彼女が住んでいた場所、さらに母の晩年暮らした八王子での生活。それらは一本の映画を観るようなストーリーを語っていた。洋子という名前が日本とアメリカを繋ぐ太平洋からの命名だと知るのだが、まさに彼女の人生そのものが日本とアメリカの架け橋となっていたのである。
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