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「ルビッチ・タッチ」入門映画、『結婚哲学』

『結婚哲学』(アメリカ/1924)監督エルンスト・ルビッチ 出演アドルフ・マンジュー/マリー・プレヴォー/フロレンス・ヴィド/アモンテ・ブルー

あらすじ
気紛れな結婚をしたシュトック教授は、妻に対する愛が薄れ、結婚生活に倦怠感を覚えるようになっていた。妻のミッツィにしても夫への愛は冷めており、シュトック教授は離婚の口実はないものかと密かに探索していた。そんな折、ミッツィは親友シャルロットの夫フランツに心惹かれ、近づいていく。妻の行方を知ったシュトック教授は、これ幸いとばかりにほくそ笑むのだが・・・。

「ルビッチ・タッチ」のホーム・ドラマ・コメディの傑作。小津の喜劇映画は、ルビッチから学んだというのはよくわかる。ストーリーはまったく違うが、主人公の真面目な性格な男の小市民的喜劇。あとこの映画はウィーンが舞台で、夫婦の中に潜む欲望(色欲)をテーマとして、フロイトの精神分析がモチーフとして使われている(ウィーン学派)。

色魔である相手の妻は、神話の「誘惑する女」。そして、医者の妻が体験する浮気は夢として解釈されるのだ。その脚本も見事である。コメディは隠された欲望を露わにするがそれはブルジョワジーの戯れにすぎない。夢の世界へ追いやることで、ファンタジーは喜劇となっていく。

アドルフ・マンジュー演じる医者は、パリを舞台にしたルビッチ作『陽気な巴里っ子』にも出てきた。生真面目タイプの医者だが、誘惑に惑わされる。誘惑に屈しない人物として、妻の愛を勝ち取る。ホーム・コメディとして、欲望と理想の形の結婚生活を描いている。『結婚哲学』という邦題も、ちょっと硬いけど納得、『結婚心理学』という感じ。

一日の出来事で部屋によるドラマで場面を区切っていくのも喜劇のセオリーか(ハリウッドのセットなので、ロケ撮影はなくすべてスタジオなのだろう)。昨日見た『陽気な巴里っ子』も外のシーンはあまりなくセット的な部屋のシーン中心だった。ダンス・シーンは、ブルジョワジーのホーム・パーティ(映画が一つ上の階層のファンタジーだと言うのがよくわかる)。『失われた時を求めて』のサロンの延長として、優雅なワルツなのは、ウィンナ・ワルツの想い出。アメリカに来たルビッチにとっては遠い夢の世界だったのかも。


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