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石牟礼道子の「猫道」

『猫 石牟礼道子詩文集 1』

生命の原郷から奔出することばで「猫」「花」「渚」「色」「音」「父」「母」の主題を奏でる石牟礼文学のポリフォニー。
目次
1 一期一会の猫(都会の猫とひかり凪;三毛猫あわれ―出郷と断念)
2 猫のいる風景(あばら家と野良猫たち;祖母の笑み、捨て猫の睡り;父と猫嶽;猫家族とヒト家族;愛猫の死と息子の泪;祖母の食膳に添う飼猫ミイ;世界の声に聴き入る猫;野草を食む猫と私)
3 追慕 黒猫ノンノ(愛猫ノンノとの縁;ノンノ婆さん;『水はみどろの宮』断章;今は亡きノンノと遊ぶ)

昨日は猫の日だったのか。一日遅れたが石牟礼道子さんの猫は野良がいつの間にか家に居着いてしまって、歴代ミイちゃんと呼ばれる猫たち、黒ミイだったり白ミイだったり三毛ミイだったりするのだ。猫好きな妹がモダンな名前を付けたりするが母上は全てミイと呼ぶ。

道子さんの息子が可愛がっていたミイが亡くなった時は道子さんより大きくなった息子が大泣きしたそうで、そういう猫との付き合いだから都会でも猫を見るとほっとけないという。猫の凛々しさ気高さについてのエッセイだったり、寺の黒猫が居着いて、黒猫ノンノとの魂の交換のような小説だったり自然の中の猫の姿を描く。

猫と季節とその他の生き物。その中に人間がいるが猫に取っては怪物なのかもしれない(水俣ではずいぶん猫も死んだ)。猫とは関係ないのだが蟹に挟まれた道子さんの詩が宮沢賢治の童話のようで面白い。蟹女(ガネジョ)はなんでも怪物だと思って挟むのが仕事とか。生き物との魂が行ったり来たりする往環道(おうかんみち)に通じている巫女さんのようなエッセイ(詩・小説・童話などなど)という感じがする。

解説を町田康が書いているのだが猫道の弟子のような感じなのかな。猫が死ぬときにお隠れになる猫獄とか奇妙な猫言葉。高級家猫ではない野良猫との共生する道を探る「猫道」。


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