私って保守的だ 辻村深月さん「傲慢と善良」を読んで
先日の「あなたの言葉を」から続いて、辻村深月ブームが来ている
マッチングアプリで知り合い、結婚間近となっていた架(かける)と真実(まみ)。
結婚式を半年後に控えた矢先に、真実が失踪してしまう。
付きまとうストーカーがいたという彼女。
架は真実の家族や知人らと会い、真実の居場所を探し出そうとするが…という話。
地方出身者や婚活、家族、友人
30代の自分をとりまく環境について
読みながら胸がざわつく思いだった。
そして、真実に対しては自分に近いものを感じてしまったし
真実が感じていた しがらみに
胸が痛くなった。
都心部に近い地方出身で、家族とは物理的・心理的な距離がわりと近いまま過ごしてきた。
親が言ってることなんだから、それは正しいんだと刷り込まれていた。
自分勝手なことをして親を悲しませるのは悪いことだと思っていた。
真実の行動に「ちょっとそれは…」と思うものもあったけれど
真実が生き方を辿ると、こちらが納得するような周囲の環境があった。
気づかないままに、周囲も自分も井の中の蛙になってしまう。
最後には「あれ?今までの真実は…?」と良い意味で裏切られた。
私ももっともっと生き方を朗らかに考えたいと明るい気持ちになった。
そして、物語の話とは大いに脱線してしまうが
私と夫は学生時代からの付き合いだ。
同じ年で、地元も同じ
そのため、日々の習慣も似通っていて
今や「えー、あなたってこんな人だったの!」と
驚くことはあまり無い。
そして、「私はこんな人だ、こういうことを思っている」と互いに伝え合うことも少ない。
(我が家が少ないだけかもしれないけれど…)
だけど、大人になってからの付き合いというのは
相手の生活してきた背景は、ほとんど知らない。
どんな家族がいて
どんな学生時代を過ごして
どんな物が好きであったか
それを互いに伝え合う必要がある。
マッチングアプリでの出会いは何となく
「ネットで知り合うのなんて怖い」という先入観があった。
だけども、実際に知り合って生涯のパートナーになるためには
自分のことを自ら さらけ出す勇気と
思いを言語化する能力が必要であると思う。
ニュアンスで伝わるだろうじゃ、きっと通じあえない。
そうして、伝えあった先に
「ともに生きる」ことを選ぶというのは
なんて尊いんだろうと思うようになった。
きっと共に歩む中でも
互いの価値観に驚いたり、新たな発見が満ちる日々なんだろうなと思う。
価値観は簡単に固まりやすい。
これなら安心、こうあるべきだと思い続けていると
どんどん視野が狭ばってしまう。
世界にはいろんな価値観がある。
一つのことにこだわらずに、いろんなものを見て感じていきたい。
そんなことを思った小説でした。