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読書録📚自動車の社会的費用 再考
木下さんVoicyで触れられていた本。
マイカー保有者として必読な気がして読んでみました。
いかに今の世の中が車に最適化されているかを認識すると同時に、そのことに慣れてしまっている自分に色々反省する読後でした。
マイカー保有者以外にも、住む場所検討中の方、インフラ系(道路交通、暮らし、街づくり)や自動車関連で働く方にも興味深く読める本だと思います。
気になったところ↓
自動車の社会的費用は1台あたり200万
自動車は、
1人の人間を動かすために1トン前後の重量物をともに動かす不合理なシステム
人の安全などを担保するための道路整備や自動車の改良などにかかる社会的費用は、
1台あたり200万円※
※1974年出版の自動車の社会的費用で試算されたもの
この費用は、自動車を利用していない人の税金からも負担している。
車社会の弊害
経済発展に大きく寄与している車社会。
一方、社会が車に依存しすぎているがゆえの弊害も多い。
汚染(重金属汚染、二酸化炭素、フロン、PM、ダイオキシン、粉塵)
交通事故
犯罪率高まる(車社会は人目が少ない)
災害時に渋滞&逃げ遅れ(普段車を利用しない人も車で逃げようとするため)
都市の構造を変化(駐車場・道路だらけ、住居や施設の郊外への移転)
歩行者にとっては不便な街になる
運転する人に快適な街は、歩行者や住人にとっては弊害だらけ。
駅前広場の設計などに際して、車が最短距離の最も便利な動線を占有する一方で、歩行者が延々と遠回りさせられる設計は随所に見られる。
車社会に有利な街の設計
しかし、自動車利用者のうち「車が趣味だから」と利用する人の比率はそれほど多くない。
利用者の大半が、車社会に有利な街の設計ゆえ「不利益・不便」という理由で車を使っている。
マイカー文化は、車社会に有利な街の設計から生み出された。
そしてマイカー文化の浸透は、車社会に有利な街づくりをさらに加速させる。
車に有利な街 ⇆ マイカー文化
行ったり来たりで高め合う構図ができている。
物流問題も無視できない
物流インフラは多くの人に欠かせない。
発注や決済は電子的に処理できても、モノは何らかの手段で物理的に移動しなければならない。
消費者が平均的な生活を営むだけで、膨大なトラックの走行を誘発している。
世帯あたり、大型トラックを平均780km、小型トラックを平均1620km走らせている。
家計消費に起因するトラックの走行量は、全国の67%を占める。
送料無料の配送コストは、プラットフォーマー、出品者、利用者で押し付けあい、配送ドライバーの労働の軽視に帰着している。
物流インフラは、障害者や高齢者などの生活必需品の入手を宅配に依存する人の生活も維持している。
→トラックを無理に走らせることのない物流とは?考えていかなければならない。
インフラを維持する余力が徐々になくなっている
昨今、全てのインフラを更新しきれず、各地のインフラ劣化が大きな問題になってきている。
今後人口密度が低下していくと、公共交通は成り立たなくなり、さらに低下すれば都市施設の維持・更新(除雪、清掃、公園、下水道)すらも危うい。
→コンパクトシティへの移行も必要
多数のローカル線が廃止された経緯には、工業に比べ農業が軽視されてきたことがある。農村を一つの社会共通資本と考えて、農地など生活基盤だけでなく、生活に必要なインフラ、文化的施設、路線、交通機関など公共的サービスを整備する必要がある。
人とモノの移動の自由を確保しながら、かつ、できるだけ自動車を走らなくてもよい社会とは、どのように設計していったら良いのだろう?
感想
歩行者の不便さとか、物流の方々を酷使させてしまっていることとか、色々と身につまされました。。
私は地方住みなんですが、沿線上にスーパーや保育園、職場がないのでもっぱら車移動です。
都内の方は、きっと雨風の日も徒歩or自転車、公共交通機関で移動されてるんですよね…(当たり前やと怒られそう…)
それくらい、車社会が当たり前の感覚になってしまっています。
街が道路や駐車場ばかりなんて光景にも慣れきってしまっていて。。(歩くと不便さ感じるんですけどね)
歩行者(高校生の部活の集団とか)は横断歩道を頭を下げながら横断していきますし、子どもたちは家の前の道路で遊ぶこともないですし、保育園の送り迎えはお母さんたちの「車が来るから危ない!」の声が鳴り響いています。
このような光景も当たり前になってしまっていました。
けど、歩く人が車に頭を下げなきゃいけない社会なんて、あまり素敵ではないよな〜と。。自分の慣れを自覚し、本書をきっかけに歩行者の視点を大いに意識しながら運転するようになりました。
歩いて巡れる街こそ、これから魅力的だと思われる街になっていくんでしょうね。
わたしの住む街はどうなっていくんだろう…
問いが頭の中に沈んでいきました。