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くつを編む
親友が父になった。
「結婚して相手の実家が近い場所に引っ越す」という報告を聞く予定だった僕ともう一人の親友は唐突に告げられたその事実に漫画のようなリアクションをして、いい年こいて大きな声を居酒屋に響かせてしまったのはいい思い出だ。
少し離れた場所に写った彼は、一歩一歩、より人生をゆっくり大切に歩んでいるような気がした。
なんだか羨ましかった。
彼は名前を考え始めた。
名前が決まるという瞬間が僕は好きだ。
まさか大事な親友の子供の名前を聞ける日が来るとは思わなかったが。
今までの人生という引き出しをひっくり返して、たくさんの願いを込めて考えているのだろう。
生まれてくる我が子をどこまでも運んでくれる、どこまでも歩かせてくれる、そんな名前を。
名前とは靴のようだ。
嬉しそうに名前を考える親友と奥さんの姿を想像しながら、そんな考えが頭に浮かんだ。
【くつを編む】という詩を書いた。
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どこまでも走ってくれるように。
誰もが呼び止めたくなるような音で、みんなに自慢したくなるようなものを彼は考えているのだろう。
絵の中には、彼の中から溢れる素敵なものから紡がれていく靴を描いた。
こっそり彼が好きなものも隠していたりする。あいつならちゃんと気づいてくれるだろう。
これからその子はそのピッカピカの靴を履いてどんな景色を見るのか、勝手に親戚のおじさんのような心持ちで楽しみにしていたりする。
かなり悩んだようだが、無事に生まれたその子はこの世界の景色の中でプレゼントを受け取れたようだ。
もしどこかで出会えたらあなたの声でその音を響かせてあげてほしい。
そして様々な歩き方を導いてあげてほしい。
素敵な靴をきっとあなたも履いているはずだから。
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