ラバーガールがTikTokでも舞台でも見せる、時間への意識の異端さ
先日、とある配信コンテンツに彼らが出演した際、彼らの発言が「コスパ、タイパ重視で働く意欲が薄い」的に受け取られた節があったのにモヤモヤしたので、そうではない彼らのプロ意識について書きたくなった。
2023年7月現在、TikTokでフォロワー約66万人を獲得しているラバーガール。
※上の記事では収入が1.5倍になったとされているが、今年3月25日に放送されたテレ玉「バズったその後追ってみた。」では、1.7倍になったと言っていた。その後も多数のドラマや大企業CMにも出演しているため、今はもしかしたら、2.5倍ほどになっているかもしれない……。
“大バズり”した理由はすでに各メディアで分析され、本人たちの口からも語られている。
私はファンの立場から、彼らが動画でも舞台上でも見せている、シビアなタイムマネジメント意識の話をしたい。
ショート動画の限られた時間内で笑いを取り、多くの支持を集める背景には、そのタイムマネジメント意識があるようにも思うからだ。
押していたお笑いフェスで、予定終了時刻にライブを終わらせたラバーガール
2022年2月に、クラウンヒットパレードというイベントが北沢タウンホールで行われた。このイベントの中で、ラバーガールは1時間のソロライブを行っている。
上記リンク先のタイムテーブルからも分かるように、同じ会場で一日に5つほどのライブを行う、いわばフェス形式のイベントだった。
しかしステージはひとつだけ。私も現場に足を運んだが、ライブが終わるたびに観客全員がホールの外に出る必要があった。リハもライブの合間に行われるからだ。
ライブやリハの時間が押せば、その分後ろのライブのスタートも遅れる。実際にこの日もライブやリハが押し、各ライブ開始時刻が予定より遅れていた。
ラバーガールのソロライブも同様に、予定より10分ほど遅く、18時10分頃に開始されたと記憶している。
しかしラバーガールは、予定していたコントをすべて披露した上で、予定終了時刻の19時にライブを終えた。そのおかげで、次のライブは定刻通りにスタートすることができた。
ライブ中は転換もあるため、現場スタッフの努力もあっただろうが、それだけで10分巻けるとは考えにくい。彼らがタイムテーブルを意識し、舞台上で柔軟にコントを組み替えた可能性が高い。
彼らが披露したコントの中で、あらかじめ発するはずだったセリフがあったはずだ。それらを舞台上で、ストーリーや笑いどころを損ねないように取捨選択したのだ。
他の演者もタイムテーブルが押していることに触れている状況で、きっちりと時間を守る彼らの振る舞いは異彩を放っていた。
またライブ中にコントの尺を変えることについて、彼ら自身もこのように言及している。
普段からセッションでコントの尺を調整していることが、あのイベントでライブを10分巻く行為に繋がったのだろう。
尺が余れば時間が許す限りネタをやる
そして彼らは時間を巻くだけでなく、ライブの余った尺を有効に活用する。
筆者は彼らの営業スタイルのライブを(配信含め)何度も観たが、尺が余ると「もう〇本やります」と、時間が許す限りネタをやっている。
今年の6月18日、私は“YATSUI FESTIVAL! -2023”で彼らのステージを観た。この時も営業スタイルだったが、尺が余ったということで、時間いっぱい遣ってTikTokに載せていたショートコントを行っていた。
それは、昨年10月20日に出演した東北大学の学園祭でも同様だった(配信で確認)。
観る者の時間の価値を高めるプロ意識
このようなことから、彼らが時間の価値というものを人一倍重んじていることが分かる。
ライブの時間が押すことなどにあまり頓着しない演者も珍しくないお笑いの世界では、異端とも言えるシビアさだ。時間が余れば、自分たちに用意された時間をフルに使って、臨機応変に観客を楽しませようとする。
それは観る者の持つ時間を最大限尊重する、紛れもないプロ意識なのではないだろうか。
彼らが、TikTokのような動画の尺に制限があるメディアで活躍するのは必然だったと言える。無駄なく時間を遣い、笑いを誘う。彼らが元来持つその姿勢が、TikTokでのブレイクに繋がったのだろう。
我々がラバーガールのショート動画を観る間、その時間の価値は普通の1.5倍や1.7倍、いや2.5倍にも膨らむのだ。
※ そうだ、今年8月に単独ライブがあるそうです。チケット発売中。