【長崎】カステラ品評会!【7種】
ケータイが勝手におすすめしてきた記事は、じゃらんの「長崎のカステラベスト5」というものだった。
こういうのはこれから長崎に遊びにくる県外の人におすすめしなよと思いつつ、ふと気付いてしまった。長崎に住んでいるのに…
【推しカステラがいない】!!!
近所にあるから、という理由で異人堂のカステラの切れ端はよく食べていたけれど、名高い福砂屋や文明堂の味をはっきりと思い出せない。というか、完品のカステラを食べたのはいつが最後だろうか。長崎県民あるあるだが、お土産には一斤のカステラを買っていくが、自分たちが食べるのはスーパーやカステラ工場で売ってる端切れだ。こっちのほうが安いし、蜜が染みたりザラメが偏ったり、美味しい気がしたりして。
街行く人に街頭インタビューをしてみたいなぁと思う。最近カステラを食べたのはいつですか、一番好きなカステラはどこのですか?
じゃらんの記事の中身は読まず、タイトルだけスクショして「結局どこのカステラが美味しいのか食べ比べしたい。」とインスタのストーリーにポンと投げてみた。
次の日、三人の友人たちからインスタにメッセージが来ていた。
「福砂屋しか勝たん」
「福砂屋でしょー!」
「福砂屋じゃないですか?」
ほう、みんな福砂屋過激派じゃないか。珍しい人までメッセージをくれて、カステラの求心力に感心しながら返事をする。福砂屋派なのは食べ比べた結果なのかと聞くと、今までの記憶からたぶん福砂屋、とみな答える。
ならばこれを機に食べ比べをしようじゃないかと、メッセをくれた全員に集まってもらった。幸い皆職場の知り合い同士だ。人数は多い方が良いと、同期には彼女も連れてきて貰った。これでたくさんのカステラ食べられる。
カステラ「ガチ」食べ比べの開催だ。
カステラ品評会、なんて銘打ってみる。
ルールは簡単。紙皿の裏に店名を書いて、そのうえにカステラを置いてシャッフル。みんなで順番に食べていって感想を述べ、紙皿を裏返す。公平性を喫したやり方だ。
カステラの種類は7つ。
福砂屋、松翁軒、和泉屋、異人堂、匠寛堂、文明堂、スーパーのヤツ。
卵がたっぷり使われた五三焼きではない、店で一番「普通」そうなやつを買ってくるようみんなにお願いした。そのほうが食べ比べに差異がでないだろうと後輩Yと話し合ったのだ。
福砂屋と文明堂は外せない。長崎人にとってもこのふたつは永遠のライバル同士という認識で、それぞれに熱烈なファンがいることを承知している。この二つを食べ比べずしてなんとするといったかんじなのだ。
あと年末年始の格付けのテンションで、やっすいスーパーのヤツ。ギャグ要員として華々しく散って欲しい。
それ以外はわたしがパッと思いついたラインナップ。異人堂は言わずもがなの慣れ親しみで連れてきた。和泉屋はカステララスクのイメージが強い。
それから匠寛堂は皇室御用達のカステラも取り扱っている(今回は違うオーソドックスなヤツ)。
そんで職場の帰り道にいる松翁軒。きっとまだまだカステラ屋さんはたくさんあるけれど、おいしく食べれる限界を考慮した。
場所は近所のレンタルスペース。意外と綺麗で設備も豊富だ。テレビゲームやボードゲームの設備にひとしきりはしゃぐ。
マリオカートをやったりして場は暖まった。テレビゲームあんまりしない勢たる私と後輩でカステラも皿に出し終え、準備も万端だ。
いざ実食、カステラ品評会である。
①
T「あ、おいしい」
私「ほんとだ、おいしい」
Y「ザラメやばくないですか」
M「ほんとだ」
私「てか一個目だからわからんね、これが基準になる」
シャッフルされたカステラのド真ん中から時計回りに進むことに決めて、パクリとひとくち。
ザ・カステラである。ちゃんと、おいしい。しっかり卵、小麦、砂糖ぜんぶのあじがする。生地もふんわり、歯触りもとてもいい。大粒のザラメがびっちり敷き詰められていて、食べ応えばっちりだし、派手さもあって贈り物によさそうだ。
みんなふむふむと食べている。まだ一個目ということもあって比較のしようがなく、コメントも少なめだ。でもおいしいらしく、みな納得の表情だ。
空腹も手伝って、速攻次のカステラに移った。
②
M「あー!俺これどこか分かったかも!」
T「俺も!これ超しっとり!」
Y「マジですか、言ってみて下さいよ。知ったかしても良いんですよ」
M「え~」
A「これおいしい」
私「まじでしっとり」
二個目にして大本命が出たかもしれないという場の緊張感。しっとりとした生地は小麦一粒ひと粒がシロップを含んでいるようで、噛むごとにふんわりとハチミツみたいな独特な香りが鼻に広がった。ひとくちで上質とわかる味だ。
もしかして、あいつか…?いやどっちだ…?とみな口に出さないがチラチラとお互いの顔を見たりしてる。長崎2大カステラで迷っているのだろう。
ちなみにYは私の後輩、Mは私の先輩。つまりY
はMの後輩で、良い具合に舐めている。面白い。私もM先輩のことは良い具合に舐めている。
Tは私の同期で、Aがその彼女だ。ラブラブでかわいくて、私のリアル推しカプだ。
③
私「ん」
M「んー?」
T「素朴だね!」
Y「水分持ってかれる」
私「だね、パウンドケーキみたい」
三個目は素朴で、小麦粉の味が濃く、良い意味で生地にザラつきがあって、私は純粋なおやつとしては一番好きな味がした。
さっきの二個目がしっとり華やかだったから影は薄くなるが、自分で三時のおやつに食べるならこれを選ぶだろうと思った。ミルクたっぷりのコーヒー牛乳を添えたい。飽きのこない毎日食べられる味だと思った。
④
Y「固い」
T「うわ、まじで固い」
M「かったい」
私「かたいね…」
A「ん~」
四つ目はとにかく固かった。石みたいとかではもちろんないけれど、なんか、パンみたい。美味しいんだけど、いわゆるカステラがイメージされる「しっとりふわふわ」な焼き菓子からはちょっと離れている。噛み締めるとむっちりして、噛むごとに味が深くなる。牛乳と一緒に食べるといいかんじだった。
ちなみに今回飲み物はMチョイスのストレートの紅茶、ブラックコーヒー、牛乳だ。素晴らしいと思う。カステラに最適だ。特に牛乳とカステラのマリアージュはすごい。県外の人はぜひ一度牛乳でカステラを食べてみて欲しい。カステラが元々持つ、卵と砂糖が発する「甘やかされ感」に拍車がかかってメロメロになる。あともし食べ比べをする酔狂がいたらコーヒーを準備しろ。おねえさんとの約束だ。それがおまえの命を助ける。
一応用意しておいた塩昆布、韓国のり、せんべいもこの時点ですでに大人気だった。だがまだ道のりは長い。品評会は折り返したところだ。
⑤
私「ふーーーーん」
M「え、カステラ?」
Y「蒸しパンみたいですね」
T「てかザラメ無いじゃん!」
A「ほんとだー」
M「裏どこいった」
たいていカステラの裏は茶色く、店によってはザラメが入っている。でもここのは茶色い面さえなくて、ダイレクトにふわふわの部分だ。これは珍しい。今まで食べてきた4種類が全部ザラメ入りだったもんだから尚更物足りない。
実はこれ、切り分けたのは私だったのでどこのカステラか覚えていた。それで最初のようなリアクションになったのだ。甘さも控えめ。イメージとちょっと違った。
だがカステラの凝り固まったイメージがなければ、ふっかふかで雲を食むようで美味しかった。
⑥
M「うわどっちだー!」
T「うわ、ほんとにどっち!?」
Y「おお、おいしい」
M「②より癖がない」
私「優等生な味がする」
M「②のほうがハチミツだったよな」
大本命パート2の予感である。しっとりと生地は滑らかで、卵の黄色が鮮やかだ。茶色い焼き目とのコントラストが美しすぎる。ほどよく入ったザラメと生地の甘さもバランスが良く、とがったところがない。②も⑥も美人だけど、②のほうがやんちゃな子で、⑥は真面目な優等生タイプだ。もちろんどっちもモテる。
⑦
M「もうさ、見た目でわかるやん」
T「ちょっとにしててもいい?」
私「おん、デカい」
M「横のシロップの染み方がえぐい、おかしい」
Y「わ、ほんとだ。染みてる…」
A(おなかいっぱい…)
最後、どうしてこれが一番最後なのか。見た目でもう分かる大味さ。ひとくち食べて、もっそりした食感にぎょっとした。ここまで違うものなのか。いつもならけっこう美味しいと思うんだろうけど、お腹もいっぱいだし、大本命パート2の後だ。ひとくち食べて、そっとフォークを置いた。
さて、店名の公開である。
そっと皿を返すと「あ~~~」という声が響いた。
①異人堂
②福砂屋
③松翁軒
④和泉屋
⑤匠寛堂
⑥文明堂
⑦スーパー
M「そっちが福砂屋か!」
T「んでそっちが文明堂ね!逆かと思った」
Y「異人堂めっちゃ好印象になった」
私「和泉屋はラスクを見越した造りなのかな…」
A「福砂屋やっぱおいしいね」
店名が公表され、口々に感想を述べる。
意外と福砂屋と文明堂を逆に予想したりしていて面白かった。
それから異人堂がみんなに好印象で嬉しかった。これで育っている身としては、カステラの記憶は異人堂が多くを占める。もっとみんな異人堂を知れ。食べろ。
和泉屋は他にくらべ目が詰まっていて、だからこそカステララスクという目玉商品があるのかもね、という話になった。今度カステララスクもちゃんと食べよう。記憶が薄い。
意外だったのは匠寛堂。カステラのイメージから少し離れていた。でもあとでネットで調べたが、できるだけ昔の製法そのままで、原材料とかも変えていないらしい。むしろ坂本龍馬が「カステラじゃ!」って言ってた味はこのふわふわタイプの蒸しパンみたいなものなのだろう。こんど皇室御用達のも震えながら買おう。高いけど。
結果、一番飛ぶように売れたのは韓国のりだったというのは笑い話。みんな美味しくいただいて、残った物は山分けして持ち帰った。わたしも半斤持ち帰ったが、数ヶ月はカステラを見たくないので両親に献上した。(数日経った今はもう食べられる気になってるから不思議だ。)(こんな企画した地点でお気づきだとは思うが私は相当な甘党だ。)
そのあと若干の胸焼けを抱えつつボードゲームをし、場所を変えて茶をしばいて解散した。とても楽しい、充実した休日だった。
みんなまた遊ぼうね~。
平和主義なのでみんなでランキングをつけることはしなかったけれど、個人的な好みは異人堂と松翁軒だった。自分が日々の三時のおやつに食べるならその二つだ。異人堂はザラメが大粒ぎっしりでテンションあがるから、嫌なことあった日とかキメたい。あと私は食べ慣れてるから、すごく安心する。
素朴なパウンドケーキに近い松翁軒は家に常備してふとした休憩とかに食べたいあっためた牛乳とか、ちっとも茶色くないカフェオレとかと一緒に食べたい。あんまり印象が持ってなかったので嬉しいダークホースだ。ただ、わたしはシフォンケーキよりパウンドケーキ派なのはご留意いただきたい。シフォン派なら匠寛堂もいいだろう。
お土産にするなら福砂屋かなぁ。特に全国展開してないあたり、県外のひとにも珍しいだろう。風味に特徴があるのも、「長崎こだわりのカステラでっせ」というかんじで良い。
ちなみに福砂屋のハチミツのような風味はハチミツではないらしい。おいしいお砂糖の香りだろうか
でもやっぱり、文明堂とも迷う。本当に王道のカステラ、カステラと言われて思い浮かぶ味はこちらの方かもしれない。それに全国展開のネームバリューは強い。貰ってすぐにコマーシャルソングを歌い出す人も多いだろう。
こだわり派か、王道か、贈る人の性格に合わせて選ぼうと思った。
この文章を読んでくださった長崎県民、ぜひ次なる挑戦すべきカステラがあったら教えて欲しい。個人経営の店も含めれば、もっともっと種類があるはずだ。友人たちを巻き込んで、また挑戦をしたいと思う。
とりあえず次回は五三焼き対決をしたいねとみんなで話していた。
そして最後まで読んでくださった長崎県民以外、ぜひ長崎に来て、好みのカステラを探してみて欲しい。ぜんぶ黄色くて四角いけれど、その味はアマゾンの奥地よりも深い。何度も長崎に来てたくさんカステラを食べて、いっしょに黄色くて甘い沼にハマろうじゃないか。
きっと底にはたっぷりのザラメが沈んでる。